フタバアオイ
朝が来た。いつもよりも目覚めが良い。駿也はまだ寝ているため、私は先に朝ご飯を作ることにした。
台所に立ち食パンを出したところで思いついた。駿也の分の朝ご飯を作ろう。と。
まず食パンをもう一枚出し、自分と同じようにマーガリンを塗りトースターに入れた。
その間に冷蔵庫の中を見ると昨夜駿也が作ってくれたおでんのあまりであろうウィンナーが数本残っていた。私はそれを取り出し、小さめのフライパンで火を通した。ついでにそのフライパンで目玉焼きも作ってみた。
すると寝室から「なんかいい匂いがする。」と眠そうな駿也が登場した。
「ちょっと炬燵に座ってて。」と私は駿也に告げる。
駿也はキョトンとしながら炬燵に向かった。
目玉焼きが出来上がり、二人分のお皿にウィンナーとトーストを盛り付ける。豪華や贅沢とは程遠い朝ご飯だが、美味しそうである。
「お待たせー」と駿也の真似をして言ってみた。
「おー!なんか美味しそう!」と駿也は喜んでくれた。
「じゃあ、食べよっか。いただきます。」と私は元気よく言うと「いただきます。」とそれに負けないくらい元気な声で駿也が言った。
駿也の分の朝ご飯を作っただけなのにとても美味しい。私は自然と綻んだ。
「これめっちゃ美味しいね。」と駿也も同じように綻んでいる。
「美味しいね。」と私は返す。
その後は私はバイトの準備をし、駿也は大学に行く準備をした。
各々が動き回っているため、家の中で小さな運動会をしているような気分になった。
そして私は玄関にいる。「じゃあ、私行ってくるね。」と駿也に告げる。
「寒いから、ちゃんと上着着なよ。」とドアの向こうから駿也の声が聞こえる。
「わかった。」と私はドアの向こうに届くような声で言った。
クローゼットを開け、私のジャンパーを探す。探している間に私は駿也のジャンパーを見つけた。
それを徐ろに取り出し、リビングに居る駿也の元へ向かった。
そして「ねぇ、これ着てっていい?」と駿也に私が持っているジャンパーを見せた。
「それ、俺のだよ?」と駿也が訊ねる。
「うん、だから着てっていい?」と私は返すと。「いいよ。」と駿也は優しく答えた。
駿也のジャンパーは少し大きかったが、自分のジャンパーより温かい。こういうのも良いかもしれない。と私は思った。当たり前だが駿也の匂いがジャンパーからした。
昨日、抱きしめられた時と同じ匂いがした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます