第65話✤ドーラの街にて・2

 ペトラさんから討伐対象と採取の説明を受けたので早速行くことにした。


「2,3日で戻ってくると思うから、その間に欲しい物リストアップしておいて」

「ありがとうございます!早速やっときます!」


 たしかに、元日本人の感覚を持っていると、この世界はちょっと物足りなく、そして厳しい所があるよね。

 連合軍の時は豆腐と玉子とパンをこれでもかと頼まれた事があったけれど、今回もかな?


「母―、目的地まで歩き?」

「そうだね。森までは徒歩で4時間くらいかな。いけそう?」

「大丈夫ー」

「途中途中で休憩挟むからね」

「うん!」


 いざとなれば僕が背負っていけばいいかな、と話しているとペトラさんが声をかけてきた。


「行きは馬車だしますよー。帰りはこの札を破ればおなじ場所に迎えをだします。これ、予備含めて二枚渡しておきますね」

「おー。連絡符か」

「そうです」


 連絡符は最近では見ないけれど、こんな風に最初から決めている項目があれば場所も取らない便利な魔法符だ。

 二枚一対で出来ており、片方を破くと片方が反応するっていうだけのなんだけれどね。

 使い方はまちまちで、こんな風に反応したら迎えを出す合図にも使える。


「じゃぁこれ、お願いします」

「うん、ありがとうね」


 と、冒険者ギルドの裏手にいくと4人乗りの馬車が待っていてくれた。

 御者の人がぺこりと挨拶をしてくれた。

 灰色の髪のちょっと年老いた人で、にこにこしているのが好印象だ。


「御者のニルスです。宜しく」

「聖だ。こっちは枢とメルト。今回の依頼で森まで行くから目印がある所でお願いするよ」

「解りました。森の手前に一本だけアプリルの木があるので、そこにしますね」

「それで」


 そして馬車の乗り込んで1時間、森の手前にあるアプリルの木までやってきた。

 手前も手前、あと10メートルで森の入り口だ。


「ではまた連絡があれば迎えにきます」

「ありがとうニルスさん。これ、どうぞ」


 と、クッキー30枚入りの小袋を渡す。


「おお!これが家内が言っていた軍師様のお手製クッキーですか。いつも家内から思い出話を聞くたびに出てくるので、気になっていたんです」

「え?家内??」

「あ、そういえば言ってませんでしたね。ペトラは妻です。以前助けていただいたそうで、そのおかげで家内と会えました。有難うございます。枢様、皆様もお気をつけて」

「あ、はい……」


 ニルスさんはそういうと、馬車を方向転換させ街へと帰っていった。


「家内……」

「結婚してたんだ……」

「父、母。ペトラさんは左手の薬指に指輪してたよ」

「え?あれ魔法指輪マジックリングかと思ってた!」

「俺も!」

「……」


 流石女の子……ちゃんとよく見てる……。



 ◆◇◆◇◆



 森に入って地図を表示する。

 貰った地図の印を同期させて全体表示に。


「今がこの入り口だから……ここから左に行くと採取、突き進むと討伐になるね。聖、サーチで何かわかる?」

「ちょっと待ってろ……。……うん、ここから1キロのこの辺りにウジャウジャいるのが追い出された複合村のやつらかな。まるっと蜂もろとも殲滅していいんだよな?」

「いいみたいよどうせすぐわいてくると思うけれど」

「父、母。メルトもる」

「「言い方が物騒!」」


 ともかく、先ずは採取ということで。

 聖によれば何匹か魔物もいるし、滝つぼにはジャイアントイールが居るとのことで。


「イールって」

「鰻。まごう事なき川の鰻。ただしデカい上に大味。小骨はないな、骨自体デカいからな」

「てことは……」

「 鰻 食 い 放 題 」

「よし、先ずは脅威を取り除く為にジャイアントイールを倒そう。なに、倒したら空間収納さんに入れれば勝手に解体してくれる。そして僕にはアレがある。業務なかたがたご用達のスーパーで仕入れた鰻のタレ!1.8L!!」

「母!すごい!」

「いつも通販の鰻だったからな。たまには大きいのも悪くはないな」


 では皆の意見が一致したところで、いざ、参らん!


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