第42話✤肉の成果です。

 ※近況に元魔王6000PV/サポーター1200PV記念絵アップしてます。



 ◆◇◆



 その後の10階層、15階層のボス部屋は普通にクリア出来た。

 今は商人街の別宅に戻り、仕分け作業をしている最中だ。

 お肉、沢山ゲットできたよ!

 流石初心者ダンジョン。

 流石過剰戦力。

 これなら他のダンジョンに行けるんじゃない?

 この国のもうひとつのダンジョンとかさー。


国王が許さないだろ、それは」

「そうだなぁ」

「そうですねぇ……。国王様は末子であるおふた方をかなり気に入って居られますので……。あの別荘もおふた方の持ち物としてお建てになったんですよ。土地や使用人も含めて」


 えええ。

 それって、実質街長コースじゃないか。

 クレイ殿下とそこに住んでもいいってやつだ。


「そうですわね。その時になってみませんとわかりませんが、私はあの街が好きなので、まとめ役を担うのは吝かではありませんわ」

「そうですね。僕も幼い頃からあそこで過ごしてましたので、あの別荘は我が家という認識です」


 おお。

 こんな頃からちゃんと決めてるんだなぁ。

 流石王族かっこいい。


「枢さん?貴方もハイエルフと言うからにはエルフ全体でいう所の王族なのでしょう?」

「あー、なんかそうみたいですね。ハイエルフってエルフの上位存在なので、エルフからは損な扱いらしいです。でも僕、前世の記憶が強いから、気にしてないんですよねぇ」


 パッと見、エルフとハイエルフって見分けつかないし、エルフ族同士でしか判別つかないし。

 魔力が測れれば大体の予想はつくんだけどね。


 あとは色、かなぁ。

 エルフは金髪に碧眼か翠目。

 そこから魔力が高まってくると、髪や瞳の色が変貌して行く。

 ハイエルフになると翠髪に金目が主体。

 それ以上に魔力が濃かったりすると、黒に近くなる。

 そんな存在はハイエルフからしたら神に等しいんだよね。

 つまり、黒髪紅目の僕は……。


「良く外界に出して貰えましたね?」


 ミルッヒちゃんが不思議そうに僕に問いかけた。


「いやー、生まれからこんななりだったんで、それなりの扱いだったんだけど、物心着いた時には前世の記憶バッチリ思い出してたからさー。感覚はほんと、生粋の下町庶民なんだよね。違和感しかなくて、それがほんと苦しくて……。30歳あたりで書き置きして出てきちゃった」


 そこから、人の国に来て歴代の師匠達に出会って、聖が来る前には連合軍最高軍師とか言われてたんだよね。

 前世の記憶の有効活用してただけなのにね。

 ありがとう三国志。ありがとう戦国時代。ありがとう銀英伝。ありがとう、数々の歴史書とフィクション作品達!


「そんな理由でしたの?!」

「そんな理由で十分でしょ。庶民から神様扱いとか、神様への不敬でしかない」


 日本人の感覚としては八百万の神様がいて身近だったけど、そこは一線引いて敬う対象だからねぇ。


「おや、皆仕分け終わった見たいだよ」

「あら。お話に夢中で……。お恥ずかしい」


 僕らが話している傍で、皆が種別と部位ごとに整理しててくれた。


「母ー!地球のお肉たくさーん」

「どれどれー。お、オージービーフとかオーストリッチ肉まで。は?雷鳥にリャマ、キョンまであるの?珍しいな」


 オーストリッチ肉はダチョウ肉。

 低脂肪、低カロリー、高たんぱく、高鉄分。牛肉に似て柔らかく、食べやすい。

 キョンはあれだ。小さな鹿みたいなやつで、千葉県で大繁殖した事で有名だ。


「あんまり日本人には馴染みがないのはマルさんに押し付けるか……」

「枢さん?マルさんはともかく、押し付けるって……」

「珍しい肉とか渡す相手がいるんじゃないかなー?って思ったダケデスヨ?」

「くっ……」


 僕でもわからないからね!

 美味しくできる人がいるなら任せたいんです!


「地球のお肉は全て枢さん達の取り分で宜しいですよ?そこまで徹底的に品種改良されたものの取り扱いは、私たちでは難しいでしょうから」

「そうだな。枢はこれらの高級肉を何とかする術を知っているんだろう?」

「どんな料理になるのか楽しみです!ダンジョンで頂いたステーキとシチューは美味しかったです!」


 と、雇用主がいうなら引き取るしかあるまい。

 と言っても、企業努力の成果があってこその料理なんだけどねぇ。


「枢、顔が緩んでるぞ……」

「母の顔が珍しい薬草の群生地を見つけた時と同じになってる……」


 ……すみません。


 それからこの世界の肉と地球の肉の食べ比べをしたり、安全安心新鮮だからこそできるサクラ肉のユッケ、レバ刺しなんかも堪能した。

 大人組だけかと思ったら、全員に大好評だったのは驚いたね。




「所で、この国にあるもうひとつのダンジョンの話なのですが……」


 翌日、別宅での朝ごはんの後、お茶を飲んでいたらミルッヒちゃんがそう切り出した。

 うん、ミルッヒちゃん。その顔は何か企んでいるね?


「あっちはレトラト村から北に2日くらいの所だろ?」

「アイスダンジョンですよね。高純度の氷や錬金術や魔道具の材料になる氷の心臓がドロップする」


「ええ、クレイ様。マルシル。そこの二階層までの探索でしたらお父様から許可をもぎ取りました」

「「「は??」」」

「此度の肉ダンジョンの成果を報告した所、わたくしはこう告げたのです。と」

「ミルッヒちゃん……策士だね」

「うふふふ。護衛は完璧、装備も揃っている。さらに完全制御フルコントロール可能の最高軍師や勇者様がいるのに、子供の遊びに付き合うなんて勿体ないと思いませんか?」

「流石……言いよる……」

「ふふふふ」

「ふふふふ」

「父ー!!母とミルッヒちゃんが悪い顔してるーーー!!!」


 失敬な!


「俺のことはどうすんだよ。この国だとあんま身動き取れないぞ?」

「そこはそれ。私とラクトの婚約者じゃないですか」

「ちょっとそこまでダンジョンに……てことか」


 ほんと、よう考えよるわ。

 剣聖じゃなくて軍師スキル育てる気、ない?


「お父様には許可を頂いたので、皆様次第ですわよ?ああ、マルシル。氷の心臓ってね、それ3個とアイスゴーレムの氷板が揃えば冷凍庫フリーザーが出来るんですって。確か大きめのを欲していた人がいましたよね?」

「是非お供させてください、ユアハイネス。盾でも荷物持ちでもなんでも致します」

「姉上……」

「ミィ、お前……」


 うん、ラクト君、クレイ殿下。

 あなたの姉上/婚約者は色んな意味で人を使う天才ですよ。

 人心掌握が誠に上手い。


 こうやって、皆半ば載せられ、半ば自ら高ランクダンジョンへの参加を決意したのであった。


 やばい、この国の王族面白い。



 ◆◇◆



 ミルッヒと枢の会話。


「そういえば枢さん達は毎年の冬はどう過ごされて居たんですか?この大陸……五大王国は南側でも雪は降りますでしょう?」

「メルトのこともあるから、最初の頃はできるだけ山奥の村で認識阻害使って過ごしたり、山の中腹あたりにログハウスやゲルを設置して出歩かなかったりしてたかな。あとは流れの薬師と傭兵と戦災孤児として、小さな町で過ごす冬の間だけ、薬を卸させて貰ってたよ?」

「ログハウス……とは何ですの?ゲルはわかりますわ。大叔父様が住んでいたのでお邪魔したことがありますの」

「多分そのゲル、連合軍時代に僕が提供したやつかも。ログハウスはね、木を組んで作った家ではあるんだけど、山荘とかちょっと大きめの山小屋みたいな感じかな。大きさは2部屋とリビングと水周りだけだけど、過ごしやすいよ。空間収納にあるからいつでもだせるから、今度見てみる?」

「はい!是非に!」

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