第38話✤ウルキオラ商人街の別宅へつきました。
貧乏貴族令嬢が特殊なアルバイトをするお話を上げてます。
同じ世界のちょっと違う時代かもしれないお話です。
◆◇◆
やって来ました、お肉ダンジョン!
肉に目がないメンバーを紹介します!
まず、我がパーティリーダーの聖、そして僕、娘のメルト、隣の国の第二王子のクレイ殿下、この国の第三王女のミルッヒちゃん、第四王子のラクト君は双子で揃ってクレイ殿下の婚約者だ、そして王族専用別荘のスーシェフのマルシルさん。
合計7名でこのウルキオラ商人街の肉ダンジョンに挑みます!
「商人街と言うだけあって、大きな商会や市場が多いですね」
「そうですの。この街は元々お肉ダンジョンが発見された時に、3つの小さな商会が必要物資を販売したことから ダンジョン村になり、今や街になったんですの。街名のウルキオラは大元になった、ウルーラ商会、ルキノ商会、オランジェット商会の統合名ですわ」
へー。
旅をしている時は冒険者ギルドの高ランク依頼とか、国からの依頼ばかりだったし、僕も連合軍にずっと居たから、存在は知っていても赴いたことは無かったんだよね。
「まずはこの街にある王族がお忍びで来た時の為の別宅に行きましょう。あ、私とラクトは王族在籍中のみ個別で男爵位の肩書きを持ってますので、この街ではミルッヒ・ノイン女男爵、ラクト・ファラス男爵となりますので、よろしくお願いします」
「かしこまりました、ユアハイネス」
畏まって礼をすれば、ミルッヒちゃんはくすくすと笑った。
成人したら市井に下る予定の王位継承権低位の双子が、揃って隣の国の第二王子に嫁ぐことが決まったのは僥倖だろう。
本人にとっても、親にとっても、隣の国にとっても。
なので、この国の王様……ミルッヒちゃん、ラクト君のお父さんは成人までの間、2人にそれぞれ肩書きだけでも爵位を与え、領地経営などの勉強もさせているようだ。
クレイ殿下もお兄さんに何も無ければどこかの領地で暮らしていくんだしね。
「こちらが書類上はラクトの持ち物になっている別宅です」
「うわ、流石に豪華ですね」
「何でも、2代前の勇者様の発案で、高級マンションと言うらしいです」
馬車が停まった目の前には五階建ての大きなマンションだった。
どことなく古風なデザインのそれは、地球で言うところのガウディが手掛けたカサミラの様だった。
「これの最上階全体がラクトの持ち物です。最上階までは特殊な鍵でしか行く事が出来ませんし、門番が着いているので安心ですのよ」
「へー……」
「あ、昨年大幅にリフォームしましたので、最新型のアイランドキッチンが2つあります。部屋数はお風呂とトイレ付きのメインが4つ、従業員用が5つありますので、お肉たくさん料理したいです!」
……うん、お金持ち、凄い。
かなり大きめのマンションなので、その1フロア丸々ってあたり、中も凄そう。
定期的にメンテナンスもされているし、他の兄弟がこの街に来る時も使わせて貰っていたらしい。
ここ、国最大の商人街だからね。
王都よりもいい物が出てる場合があるから、年に数回は王子・王女達が直接買い付けに来るんだって。
「それでは、部屋に荷物を置いたら冒険者ギルドに行来ましょう。一応、ギルドマスターには話を通してますが、確認もありますので」
「はい、解りました」
それから、マンションの門番達に挨拶をされ、最上階に直接行くことができる扉の前までやってきた。
ラクト君が首から下げた鍵を差し込むと、その扉自体が消えた。
「特殊な転送陣になってますので、ここをくぐれば玄関にでます。そのまえに皆さんを登録しますので、この鍵に触って下さい。一応持ち主は僕なので、僕の許可がないと弾かれちゃいますので」
「あ、俺はもう登録されてるから、お前ら4人だな」
「はーい」
聖、メルト、僕、マルシルさんの順で登録を行った。
1人ずつ、ラクト君にしか見えない操作画面から、許可を出しているようだ。
「一応、登録期間は今日から10日にしておきますね。これで鍵がなくても扉を開ければ即玄関に転移されるようになりました。街とか自由に見てきても大丈夫ですよ」
「便利だな、このシステム。これも2代前の勇者の発案?」
聖が興味津々でラクト君のもつ鍵を見つめながら聞いた。
「はい。発案はそうですが、実現したのは僕が生まれてからですね。どうにも登録方法のシステムが難解だったようでして」
「ああ、管理者権限の外部許可および拡張になるから、セキュリティがその分落ちるからかな」
「……たぶん……です。僕も詳しくは解らなくて……」
「解ったら弄られちゃうね。ごめんね、聞き流して?それよりも、お部屋に行こうか」
「はい……」
気づけば僕らとマルシルさん以外、居なかった。
うん、マルシルさんは僕らが残ってたら先に行けないよね。ごめんね。
「ではご案内しますね。マルシルもキッチンの状態を見てくれる?」
「はい、ラクト殿下。お任せ下さい」
「楽しみだね、マルシルさん」
「はい!」
ふふふ。料理オタクとしては最新型のアイランドキッチンがとてもそそられるんですよ。
いっそダンジョンはみんなに任せて、この街で買った食材を見て回りたいくらいにね!
◆◇◆
「これはこれは、ミルッヒ様、ラクト様。冒険者ギルドへようこそおいでなされ……げぇ!!!枢ぇぇぇぇ????」
「はーーー?ここんちのギルマスは人の顔みて、げぇ!とかいうガラの悪い人なんですかぁぁぁ????やだーーー、こわぁぁぁい!!」
冒険者ギルドに今回の訪問を告げたら、ギルマスが直接ご挨拶するからって、ちょっと豪華なお部屋に案内された。
ので、出された紅茶を飲みながら待っていたら、ギルドマスターがホクホク顔でやって来て、人の顔みたらこれである。
「うっさいわ!なんでここに居るんだ悪魔め!」
「ハイエルフですーぅ!この耳を見るがいい!」
「あーもー終わった!俺の人生ここで終わった!!」
「やだなぁ。ここで終わるはずないじゃないですかー。ねー、聖ー!」
「よー!久しぶりだなぁ?レゼ」
「は?誰だおま……ええええ?!聖?聖なのかお前!!」
「おう!正真正銘、八塚聖だぜ!」
そう、この冒険者ギルドのギルマスであるレゼ……、レゼマ・ラントンは連合軍で僕直属の隊にいた傭兵の1人だった。
連合軍最高軍師とかやってるとね、毎日が暗殺の目標のひとつだし何かと忙しい部署だし、なにより24時間フル回転なブラック部署だったんだよね。
そんな中、このレゼマさんは小手先も頭の回転も小器用すぎた為に、僕に1番使われちゃってた1人なんだよね。
当然、聖からも信頼は厚かった1人だ。
あの戦争で、聖と僕が唯一素で話せる内の1人だった。
「レゼだけ?ターニャは?」
「あいつは副マスで居るぞ。呼ぶか?」
「ぜひ」
心地よい阿鼻叫喚を浴びたいでは無いか。
「枢さん、枢さん。この方は昔の……?」
ミルッヒちゃんがこそこそと聞いてきたのでこくりと頷いた。
「レゼ?緊急呼び出しってな……はぁぁぁぁ????枢?聖も??うそ!うそぉぉぉ?!」
入ってきたターニャさん……ダルタニアス・ラントンは叫びとともに僕と聖をその雄々しい太腕で包み込んだ。
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