第24話✤これにて一件落着!
地上にでてきたら夕方だった。
とりあえずは1度冒険者ギルドに寄って、レッドさんに諸々含めてダンジョン踏破の御報告をした。
レッドさんはほっとしたような表情で、ありがとうと言った。
いつもの死体専用巾着袋と冒険者カードを差し出して、詳しい説明は明日と言うことになった。
まぁ野営環境は快適だったとはいえ、それでもストレスは溜まる。
今日はもう貸してもらった家に戻り、明日は午後から会うことになった。
家に関しては、レッドさんが2回ほど窓を開けて換気と簡単な掃除はしてくれたみたい。
まぁ、あそこに置いてきてるものなんかないから問題は無い。
「では明日」
「はい、よろしくお願いします」
僕らはギルドから出ると、そのまま借りた家に戻ってきた。
先ずはご飯。
中途半端残った作り置きを出し、例のティラックスのステーキを10枚ほど焼いた。
味は予想以上に美味だった。
塩コショウ、そして有名店のステーキソースを掛けただけなのに、肉の味がいい意味で強い。
「母。あのドラゴンさん、美味しい!」
「うっわ、ほんとだ。何これ食べたことない味!」
2人とも大絶賛。
そして申し訳ないが、ステーキソースが弱く感じてしまったのも事実。
聖はそこに醤油とニンニクペーストを追加し、メルトは大根おろしとポン酢を追加していた。
僕は醤油だけ追加。
うーん。この肉用のソースを何種類か買い足して見ようかな?お肉といったら海外のとかかな。
そしてそのまま全員でお風呂に入り、全員で1つの布団で寝た。
メルトは僕にしがみつくようにして寝ているんだけど、なんかおかしい。
普通、こういう幼い子がいる場合、子供が真ん中だよね?
なんで僕が真ん中なのかな?
え?僕をシェア?何言ってんの2人とも。
あ、僕が大きいからかな?抱きつくにはちょうどいい大きさなのかな?
うん、そういう事にしておこう。そうしよう。
まぁ、形状的には僕とメルトが抱き合って寝ていて、僕の背中に聖が引っ付いている感じ。
まぁ、いいけどね。
おやすみなさい。
◆◇◆
翌日、朝ごはんを済ませてから作り置きの残りを確認していると、やはりというか主菜がかなり減っていた。
次は主菜を倍の量作り、肉も何枚も焼いて置けばあとは取り出すだけなのでそうしておこうかな。
手抜きではありません、需要に従ったまでなのです。
それに、ステーキソースは種類が沢山あるので、飽きないからね。
そして戦利品は欲しいものを避けてから、聖とメルトが一覧を作っていた。
20階層の恐竜ボスの肉は丸ごとうちのものにしたんだけど、あまりにも美味しかったので、クレイさん達、杏達、レッドさん達に少しずつ小分けにして、殺菌能力の高い大きな葉っぱに包んだ。
喜んでくれるといいなぁ。
午後になり、ギルドに行くとレッドさんとアーネさんがお茶の準備をして待っていてくれた。
「アーネさん、こちら卸しても構わない素材の一覧表です」
「ご丁寧にありがとう。こちらはギルドマスターや商業ギルドと共に相談してもいいかしら?」
「いいですよ。ただ今回は商業ギルドからはなんの支援も受けてないので、3割上乗せの対応でお願いします」
世の中そんなには甘くない。
今回の件、冒険者ギルドの不始末な部分もあるけれど、主立って支援してくれたのはレッドさん達だし、クレイさん達を送り出してくれたのもそうだろう。
そこに、なんの役にも立たなかった商業ギルドに苦労せず素材買取の得をさせるのは、違いますからね。
そもそも、元とは言っているが今代の勇者である聖には何かしらの支援はするように、と五代王国は取り決めているのだ。
それは魔王を倒した後でも継続している国との契約だ。
まぁ、僕らが商業ギルドにあまり顔を出さないのもあるけれどね。
借家だってもともとレッドさんの管轄を商業ギルドが管理してるだけだし。
「枢、あんまり気にしなくていいぞ。そもそも、勇者辞めて商売してたら商業ギルドの方にお世話になっていたかもしれないし」
「·····うん」
「では2割乗せでいいかな?俺としても大物を狩ったから、収納の肥やしになるよりも活用して欲しいから」
「わかったわ。それで納得させる」
アーネさんはにっこりと笑った。
納得·····させる?
なんか怖いので詳しくは聞かないでおこう。
その後、20階層のボスの話になった。
あれは僕や聖が前にいた世界の過去の巨大生物ということ、長いことボス部屋が放置されていた為、反転現象に近い融合現象がおき、世界のデータベースがバグを起こして外部データを読み込んでしまった可能性が高い事。
だって、あんなのこの世界には居ないし、何よりも鑑定さんは【データなし】て言ってるからね。
「とりあえず見させてもらえるかな?」
「いいですよ」
レッドさんらと共に、第2倉庫に移動する。先日まで毛皮や皮などの在庫があったけど、そろそろ冬になるとのことで、商業ギルドや個人商店、生産系の人に売りさばいたのだという。
「だって、聖君の達から沢山買い込む予定だったんだもの。倉庫ひとつ空けるのは当たり前よ?」
ふふ、とアーネさんが笑う。
もしかして商業ギルドに行った方が才能を生かせるタイプでしたか??
「じゃあ、これなんだけど·····」
と、聖はティラックスやヴェロトルの素材をひとつずつ出して行った。
レッドさんもアーネさんも鑑定スキルがあるので、一覧表とにらめっこしながら確認していた。
「サンプルとしていくつか置いて行きますので、商業ギルドの方と相談して下さいね」
「ええ、ありがとう」
「助かるよ。未知の素材もあるから買い取ったらまず魔道研究所に検分依頼をだそう。結果がわかり次第、聖君宛にギルドを通じて報告書を送るよ」
「ありがとうございます」
恐竜の血とか内蔵とかの生物はレッドさんが自前の時間停止付き魔法鞄に保管してくれるという。
腐ったらやだもんね。
うっかり内蔵や糞を倉庫に放置してそれが発酵し、爆発したとかたまーに聞くからね
気をつけてないとね。
「では明日の昼までには買取一覧を作成しておくので、また来て貰えるかな?」
「わかりました、ではそれで」
ボス系の魔石とかは買取一覧表には載せてない。
メルトの将来に役立ちそうなので。
そして冒険者、商業ギルドの買取分が確定したので、聖はそれぞれの倉庫に素材や肉を置いていった。
2割増とはいえ、多くの素材を買い込んだ商業ギルドのマスターはにっこにこだ。
「ありがとうございます!ありがとうございます!!」
そしてなんか感謝された。
商業ギルドが喜んだのは道中のついでにむしり取ってきた薬草類と毛皮類。
ダンジョンの下の方の階層でしか採れないものが多く、毛皮は傷が少なく、量もあるので大助かりのようだ。
羊の上位種はそのまま敷物としても使えるし、牛や鹿の皮は加工して装備品や鞄に使うという。
そうこうして、レッドさんから食事のお誘いがきたので、少し早い夕食となった。
その間に代金を計上してお金を用意するという。
恐竜さんたちの素材は、やはりというか桁が違った。
個室かつ、防音の魔道具で会話内容が外に漏れるのを防ぎ、料理は1度に全部運ばせた。
追加はその都度、まとめて注文という形式で。
結果、テーブルに乗り切れない程の品数が、デカ盛りでやってきた。
うん、店員さんがちょっと引きつってる。
「地球のものだから、全くの無駄素材になるかもしれないですよ?あそこ、魔素とか無いので」
食事の後、自分でやるからと置いて行ってもらったお茶のセットで淹れた物を飲みながら、僕はそう告げた。
「逆にそれが不思議なんですよ。我々からしてみたら魔素は言わば体を動かす素のようなものですから。なぜ魔素が無い世界で生きて、なぜ巨大になったか。それに、単純に聖君達の世界に興味があるからね」
「ああ、なんでか知らないけど、召喚勇者は地球産しか居ないんだっけ?」
「そうです。聖君は7番目ですが、1番多い国がニホンでこれまでに5人、聖君も含まれてます。1人はアメリカ、1人はイギリスという国からですね」
アメリカさんは3番目でいくら撃っても弾切れのない、アサルトライフルと共にやってきた。
魔力で弾丸操作をするから、拡散、追尾、貫通なんかを駆使していた。
イギリスさんは5番目。
イギリスだけあって魔法剣士型の勇者だった。
特筆することはあまりなく、地味ーな子で、複数同時発生の
2人の勇者も、もれなくこの地で生涯を終えている。
「そのせいで地球とのパイプが太くなり、この世界のデータベースでは無い物を読み込んだのが、今回のボス部屋の異変だと思います」
「そう考えるのが普通かな。あとは恐竜の素材から痕跡を読み取れればと思っているよ。五代王国に属しているのもあるけれど、その·····勇者方の帰還への手がかりになれば·····と」
レッドさんは申し訳無さそうに言った。
そうなんだよね、召喚勇者は元いた世界には戻れないのだ。
これは片道切符の召喚ではなく、きちんとした往復切符にも関わらず、だ。
初めから帰る手段までしてからの召喚なのに、いざ帰るときに地球側から弾かれてしまう。
まるで異物をシャットダウンするように。
初代勇者は残りの人生をかけて、その原因を研究し、そして、何の成果も得られないまま、無念の内に亡くなった。
これはもう、地球の管理人に直接聞かないとダメなんだろうなぁ。
「あ、俺はこのままこの世界で骨を埋めるから気にしなくていいぞ。嫁と娘がいるのに帰りたくはないなぁ」
「えええ?」
「今代の召喚勇者様の決意は固いのです·····」
「メルトが大きくなって、何になりたいか決めて、いつか恋人を連れてきたときに『俺を倒してからにしろ!』てやりたいからな!」
「聖、それだとメルトがお嫁に行けないよ·····」
「メルト、お嫁にに行かないから大丈夫」
なにが大丈夫なんだろう·····。
いや君、正当な魔王の後継者の1人でもあるんだからね?
魔王が世襲制ではなく、その時の時代の流れに合わせた能力の持ち主から選出されるとはいえ。
それに、魔王職の特徴である継承スキルの底上げ要員としても、メルトのような万能型は最適だし。
「一応、五大王国でも研究は進められてますので」
「うん。俺の後はちゃんと帰れるといいな」
「·····はい」
ごめんね、レッドさん。
聖の意思は10歳で決まっちゃったから。
この件に関しては気にしないでね。
そして、各ギルドから素材や討伐、依頼料などを含め、かなりの金額を貰い、1週間後にこの街を出ると告げた。
道中の作り置きをやっときたいのと、そろそろ冬なので、その準備もしなければ。
去年までは比較的暖かな場所にいたから、今年は本格的な冬支度るをしないとな。
「次はどこにする?」
「今までは南側に居たしなぁ。いっそ北か東側の寒いとこでもいいかな」
「メルト寒いとこ平気ー」
「俺も北国育ちだから、寒いのは平気だな。日本一の豪雪地帯の出身だし、リンゴの種類当ては得意だぞ」
ちなみに僕は南国生まれの南国育ちである。はいさい!
苗字が地元特有じゃないのは、外部からの移住一族だからなんだけどね。
ちなみに、聖はこの世界でもアプリルの産地あてをして、王都の果物屋を驚かせていた。
「なら今年は北東あたりで冬を越そうか」
「賛成!」
「メルトたのしみー!」
僕らはどんなルートで行こうか、と冬までの期間と場所の相談した。
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