第21話✤報連相は確実に
セーフティエリアで1泊をすることになったので、とりあえず夜番もすることになった。
今までのアクティブモンスターが少ない層ならセーフティエリアでも夜番はなくてもいいんだけど、この層みたいにほぼアクティブモンスターしかいない場合、セーフティエリアの入口あたりに溜まってくる可能性がある。
それらを散らすために定期的に起きるか、人数がいるなら夜番を出す方が楽ではある。
なので夜番は僕1人が通しで、クレイさん達は1番手がクレイさん、次がユーリシスさん、最後がタジェントさんで、3時間、2時間、2時間の7時間。
あとは起きてご飯と準備。
セーフティエリアと言っても層事に特色がある。
大体六角形になるように石柱が六本建ち、その石柱には魔法文字が掘られていて、結界を発生、維持、浄化、強化の効果が刻まれている。
そして、地形はフィールドに固定されるので、草原なら草原、岩場なら岩場のまま、セーフティエリアとなる。
整地作業は深い層だと難しいらしく、そのまま放置が多い。
さて、夜番通しの準備のために、軽食とお茶を用意した。
この層は森のフィールドなので、森の少し開けた場所にある。
そして、時間経過で暗くなる不思議設定だった。
なので、夜番は火を絶やさずにすることも大事だ。
とは言っても、僕らは光の魔道具
【庭の灯火】があるので、周りは明るい。
はい、アレです。
まんま通販で買ったLEDのガーデンライトです。
ここら辺のお役立ち商品は、魔道具って言っておけば大体何でもごまかせます。
そしてセーフティエリアの真ん中には、焚き火用の石組みが設置されていた。
その端に網を掛け、石で固定してからお湯を沸かすためにポットを置いた。
薪を組んでついでにポット用として炭もいれた。
パチパチと火が熾ると、クレイさんは自分用のカップとつまみを持って天幕から出てきた。
「すまねぇな、火の準備まで」
「いいえ。慣れてますし、焚き火見るの楽しいので」
「ああ、見てるとなんか落ち着くよな。こんな環境じゃなきゃボーッと見ていられるんだが」
「ボーッとしてても問題はないですよ。ヤバいのが来たら聖が飛び起きて来るので」
「相変わらずの索敵能力だな」
「便利なのでたまにウトウトしてます。僕もサーチ能力はあるんですが、聖よりはレベル低いので」
さてこのクレイさん、実はこの国の第二王子だったりする。
本当は王族から籍を抜いて放浪する筈だったんだけど、8年前のあの戦争で傭兵として参加してうっかり手柄を立てちゃって、それが難しくなったそうだ。
なので今は、籍は抜かないまでも王族としての責務を免除され、国内活動のみに限定された冒険者となっていた。
だからメルトが8歳だと知っている。
彼らを今回の依頼に当てない理由だ。
「あのこまっしゃくれた坊主もきちんと育ってるじゃねぇの?」
「子を持つと変わりますからね」
「それでお前さんは平気なのか?体とか」
「·····大丈夫ですよ」
まぁ、エンプティ状態が長かったので、確実にステータスダウンはしましたが。
長生きハイエルフにとっては誤差範囲ですよー。
「今回の依頼な、本当は俺が受けたかったんだ」
「何か理由でも?」
「懇意にしている食堂の店主がやつらに大怪我負わされてな、店が休止中なんだ」
「それは·····許せませんね」
ご飯作る人は大事にしないと行けないのに!
「その店主の作る、バターレモンソースが絶品で·····」
「おお」
「塩漬け小魚のグリルと甘めのソースを掛けた揚げ野菜もワインに合ってだな」
「ちょっと詳しく教えてください。この依頼が終わったら治しに行きますんで。あと再開するための食材と物資なら手持ちをだしますよ?」
「·····お前、そんな食いしん坊だったか?」
ハイエルフとしては若年層だけど、長生きしてるとご飯くらいしか楽しみがないんですー!
今はメルトと聖がいるけれど、2人にも美味しいものを食べてもらいたいじゃない?
「まぁ、今回の件、本当に頼む」
「聖の経験値になるので大丈夫かと」
勇者時代も無茶苦茶なレベリングをして3桁レベルをとうに超えていたんだけど、いまはもっと上のレベルになっている。
この世界の住人で最高ランクと言われた冒険者でさえ、180あたりだったので、聖は相当な規格外となる。
まぁ僕はカンストしているのでこれ以上は上がらない。
だって連合軍にいた頃、やることなすこと全部に経験値とスキルボーナス上乗せされていって、気づいたら獲得経験値数倍のスキルやら、マルチタスクやら演算能力向上、並列思考だのがポコポコ生えていった。
さらに、聖が死ぬまでの期間限定で婚姻を承諾したら、結婚ボーナスとかつきやがったんですよ。
ステータス更に倍、ドン!
聖にはそれがなかったから、異世界転生者特有の理が働いたのだろうか。
この辺は比較対象が少なすぎるから、謎は深まるばかりです。
「エクメルディア嬢には?」
「冒険者登録をする時に全部話しましたから大丈夫ですよ。やはり種族的に自分が僕らから産まれるのはありえないと」
「は?それだけ?」
「色々ありましたけど、その辺はおいおい消化するっていってた。はぁ、こんなに早く大人への階段を上がらなくてもいいのに·····」
「いやいや、そうじゃないだろ。事情が事情だったし、結局は前魔王の手のひらの上だったとしても、俺ら人間側は父親殺しだぞ?」
「そうなんですよねぇ」
「その·····なんだ。自分が邪神の1部だったせいで、とかは·····?」
「無かったですねぇ·····。そこが不思議なんですよ」
メルトからしてみたら勇者側は父親殺しだし、その原因が自分、なんだけど·····。
「『何かあれば父と母が平和的にOHANASHI꙳★*゚するでしょ?』て」
「また連合軍結成とか辞めてくれよ?」
「聖次第ですね。メルトの育成の主導権は聖なので」
「勇者様·····たのんますよ·····ほんとに·····」
ほんとに。頼むよ、聖·····。
それから少しばかり破落戸冒険者共の新情報と、厄介な憶測を聞いた。
まず、冒険者ギルドの職員に奴らの仲間が居て、定期的に物資を送っていたという。
しかも転送箱にはログの残らない用に改竄された形跡もあるという。
なので奴らはピンピンした状態でいるらしく、近々そのギルド員の手引きで脱出を図ろうとしていた様だ。
ギルド員はもちろんお縄。
即日処刑された。
そして厄介な方はというと·····。
ボス部屋の中身が変異している可能性がある。
本来であれば定期的に狩られ、次がポップする循環システムなんだけど、何かのバグで重複ポップしているかもしれないとのこと。
単にボスか2倍になるなら複合パーティでなんとかなるんだけど、万が一にも融合していたらボスのランクが上がってしまう。
なので、その辺に変化があったら詳細に報告して欲しいとの事。
別料金が発生するのでやりますとも。
メルトの教材買いますね。
「なんというか、軽いな?」
「変に構えたって仕方ないんだよ。って、隠れ住んでいた所のマンマ達に教わりましたから」
「·····マンマ達はすげぇよな」
事情もなにもかも飲み込んで、赤子の世話を1から10、おくるみまであっという間に準備してくれて、ちょうど赤子を産んだ女性を数人紹介してくれた。
そのかわり、僕と聖は労働力と知識力を提供し、無事に過ごす事ができた。
マンマ達、元気かなー。
「じゃ、そろそろ交代だな。上にはお前らがやる気満々だって伝えておくよ」
「よろしくお願いします。クレイ殿下」
「鬼の最高軍師様に頭下げられるって、恐怖しかねぇなぁ·····」
はぁ、とため息をつきながら、クレイさんは自分たちの天幕へと戻った。
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