第156話 二次試験の結果
最後にお知らせがあります。
――――――
俺、立石達也。今日は待ちに待った帝都大合格発表の日だ。昔なら帝都大学構内に掲示される受験番号を見て一喜一憂する場面を見かけたが、今はWEBで発表される。それと同時に合格通知も郵送される。
そしてだ。何故か知らないが俺の部屋には、早苗、玲子さん、涼子そして四条院さんまでもがいる。流石に部屋の中は一杯だ。
全員が見ているのは俺のPCに映っている帝都大ホームページ。
……午前十二時になった。
全員が文学部の受験番号を見る。ゆっくりとスクロールすると
涼子有った。玲子さん有った。早苗有った。四条院さん有った。
そして俺は……有ったー!
全員が合格した。
「やったあ。達也やったね。ああやった合格した。おめでとう早苗、玲子さん、涼子、四条院さん」
「「「「うん、達也もおめでとう」」」」
コンコン。
ガチャ。
「達也、合格通知が届いたわよ。おめでとう」
母さんが満面の笑みで言っている。
「うん、ありがとう」
「達也さん、私はこれから実家に帰って入学手続きをします。WEB登録も自宅で行います。両親が首を長くして待っていると思いますので。今度会うのは明後日の卒業式ですね」
「玲子さん、それが良いです」
「達也、私もそうする。私も今度会うのは卒業式ね」
「四条院さんもそれがいい」
「達也、私もお母さんが待っていると思うから」
「ああ、涼子もそうしなさい。外は寒いから気を付けてな」
「うん」
「涼子、家の車で送るか?」
「ううん、それはいい。そんなに遠くないから」
「じゃあ、気を付けてな」
三人を玄関で送り出した後、いきなり早苗が俺の胸を両手で叩いて来た。
「ずるい、ずるい、ずるい。なんで本宮さんにはあんなに優しいのよ」
「皆に同じだよ。玲子さんも四条院さんも車で帰るが、涼子は電車と歩きだ。だから言ったまでだ。早苗いちいちきにするな」
「分かってるよ。でもなんか面白くない」
達也は何故か本宮さんの事になると明らかに優しく接する。何に関してもだ。もちろん彼女が変な事している訳では無い事はよく知っている。達也の優しさだって事も知っている。でも面白くない。
「それより早く合格登録を済まそう。家から合格通知持ってこい」
「うん」
この日の夜は桐谷家と合同で帝都大学合格パーティが開かれた。俺の両親も早苗の両親も大喜びだった。もちろん妹の瞳も同じだ。彼女も帝都大を狙っていると言っている。こいつの頭なら問題ないだろう。
そして翌日朝、俺はゆっくりと目が覚めて来た。時計を見るとまだ午前七時。今日はまだ寝ていても良いだろう。
毛布の中にもう一人いるが、もう少し寝かしてあげるか。俺もまだ眠い。
コンコン。
「達也、お母さん。朝ご飯食べるの?早苗ちゃんは?」
母さんが気を利かしてドアを開けずに聞いて来た。
「ちょっと待って。早苗朝ご飯どうする」
ちょっとだけ毛布を上げて覗き込む様に早苗に聞くと
「うーん、あっ、もうこんな時間。朝ご飯もちろん食べるー」
「ふふっ、分かったわ。二人共もう降りて来て」
「はーい」
早苗は最近これが定常運転になってしまっている。別に困る事ではないが、何となく大学生活が心配だ。
朝ごはんを食べながら
「達也、入学手続きも急いでしないといけないけど、住まいも探さないとね。ねえ一緒に住もうか?」
「早苗、駄目だ。部屋は別にする。大学卒業まではけじめはつける」
「えーっ、達也のケチ。でも同じマンションで良いよね」
「まあ、それはいいけど」
「なんでそこで濁るのよ」
「そんな事無いが」
なんか怪しい。あっもしかしてあの人の事と何か約束しているとか。
「達也、三頭さんと東京での住まいの事でなんか約束とかしていないよね!」
「していない」
「じゃあ、いつマンション探しに行く。早い方が良いよ。もう引越しラッシュのはずだし」
「父さんの会社の関連会社が運営しているマンションが有るはずだ。そこにしようと思っている」
そうか、それならあの人とは関係無いはず。
「うん、じゃあ任せても良いのかな?」
「いや早苗の両親の都合もあるだろう。それを聞いてからだ」
「大丈夫だと思うけど」
少しして
「達也、一度家に帰って来る。ちょっと用事が有って」
「分かった」
こればかりは達也にも言えない。
早苗が玄関から出て行くのを見てから自分の部屋に戻った。すると
ブルル。ブルル。
凄いタイミングで加奈子さんから連絡が入った。まるでこちらの様子を知っている様だ。…まさかな。
『はい』
『達也、合格おめでとう』
流石だ。俺に聞かなくても分かっているのか。
『早速だけどこっちの住まいの話。私のマンションでいいでしょう?』
『加奈子さん、その件ですけど立石産業の関連会社のマンションにしようかと考えています。まだ父さんには話していませんが』
『えっ、ちょっと待って。それは無いよ達也。この前話したばかりじゃない』
『しかし、早苗の事もあります。加奈子さんの気持ちは嬉しいですが、これは譲れません』
『彼女と同棲するというの?』
『流石にそれはしません。大学卒業するまではけじめはつけるつもりです』
コンコン。
『加奈子さん、また後で』
ガチャ。
「達也誰かと電話していた?」
「加奈子さんとしていた」
「どんな話?」
「向こうの住居の事だ」
「それって…」
「大丈夫だ早苗。お前が心配している事は無いから」
「それなら良いんだけど」
達也にいきなり切られた。多分桐谷さんが来たのだろう。彼は彼女を優先しようとしている。でもそんな訳には行かせない。何とかしないと。
翌日、俺と早苗は最後の登校をした。駅には玲子さんはいない。実家から来るようだ。途中涼子が電車に乗って来て、学校の最寄り駅で降りると改札の外に玲子さんと四条院さんがいた。なるほど駅まで車で来たのだろう。
そしていつもの様に教室に入って行くと
「達也、おはよう。大学どうだった?」
「おはよう健司。受かったぜ」
「すげえなあ。あの帝都大にかよ。まあ俺と佐紀も東京の公立大学に受かった」
「健司、小松原さんと順風漫歩だな。羨ましいよ」
「達也、何で羨ましいの?」
「達也さん、どういうことですか?」
「達也?」
健司が目を富士山にして笑いを堪えている。小松原さんも同じだ。
「相変わらずだな達也」
「ああ」
他のクラスメイトとも話していると担任の白鳥麗子先生が入って来た。しっかりとお化粧してパンパンアンドパンパンだ。凄い!
体育館に行くと派手に在校生と親達が出迎えてくれた。それから式典が粛々と進められ各クラスの代表者が卒業証書を受け取り、最後の歌が歌われた時には大泣きしている子もいた。
早苗も胸にじんと来るものが有ったのか、目に涙を浮かべている。
また在校生と親達に見守られて、教室に戻って少ししていると、白鳥先生がクラスの卒業証書を持って戻って来た。一学年の生徒数が多い為、卒業式では一人一人には渡されない。
そして白鳥先生がクラスの一人一人に卒業証書を渡すと、最後に大泣きしながら挨拶をして職員室に戻って行った。
これでこの高校での生活も終わった。健司も小松原さんも挨拶をした後、仲良く二人で帰って行った。羨ましい限りだ。
さて、俺も帰ろうとすると
「達也さん、駅までの歩き道で良いので、東京での住まいの件でお話をしたいのですが」
「達也、私もしたい」
玲子さんと涼子が言って来た。そこへ
「あっ、達也。何処に住むか決まった?私も近くに住みたいんだけど」
えっ、四条院さん何言っているの?
「なによ、達也は私と一緒よ」
「そうは行きませんわ。桐谷さん、これだけは譲れなくてよ」
おい、いい加減にしてくれ。
「皆、それについては考えがあるから、後でいいか」
「「「「分かった」」」」
参ったな。この難関を潜り抜けないと大学生活も高校生活の二の舞になる。さて、どうしたものか。
――――――
達也どうする気ですかね。
ところで高校生活で完結するか。大学生活も同じに書くか。大学生活はサラッと書いて完結するか。ちょっと悩んでいます。
どんなに長くなっても作品は完結して初めて一つの物になると思っています。でもここまで来ると流石に何処で完結するか悩みます。
ちなみに当初は高校卒業までの予定でした。まあ高校生活で完結して追加物語で大学生活を書くという方法もありますが。
もしご意見頂ければ幸いです。
次回をお楽しみに。
カクヨムコン8に応募中です。こちらのサイトからも読んで頂けると嬉しいです。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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