第133話 気持ちは限りなく決まっているはず
俺、立石達也。九月も後半に入り学校内で行われる模試まで後二週間、それから更に二週間後中間考査、そして更に二週間後二回目の模試が行われる。
高校三年生としては、この結果は来年受験する大学の最終判定になる。学校の勉強だけでは足りない。
俺はいや俺達は春夏に行った可愛い塾の秋講習も参加する事にした。本当は俺以外は行かなくても良いと思っているのだが。
学校が終わるとそのまま駅の側に有る塾に行く。俺、早苗、玲子さん、涼子、四条院さんの五人で行く事にしているが、とにかく目立つ。
俺達が入り口から入る度に塾生の視線が集まる。彼女達にはあこがれの視線、俺には敵意、嫉妬妬み等色々な視線だ、はっきりって有難くない。
並びは春と同じ様に俺の両脇に早苗と玲子さん、後ろに涼子と四条院さんだ。前に座った方が良いだろうと今回も涼子に言ったが、俺が見えるから良いという事で後ろに座るという事だ。
塾が終わると午後八時、相当に暗くなっている。春夏は暗さも苦にならなかったが、この季節になると、やはり帰りが気になる。
といっても四条院さんは迎えの車が有り、玲子さんはマンションの前まで、早苗も玄関まで一緒だが、涼子は駅から五分位歩くからちょっと心配だ。まあ大丈夫だろうけど。
玲子さんとも別れて早苗と二人だけになった時、
「達也、今午後八時半。これから急いで夕食を摂ってから二人で午後十一時まで一緒に勉強しよう。場所は達也の部屋でいい」
「早苗の気持ちは嬉しいけど、自分でやるよ」
「駄目、今の達也はレベルは高いけど、それだからこそ後少し点を伸ばすには、達也だけじゃそれに気付かない。だから私が教えてあげる」
「…………」
早苗の提案はとても嬉しいけど午後十一時に終わったら彼女が風呂に入ってから寝るまでそれなりに時間が掛かる。睡眠不足は勉強にとって彼女にとって最悪の要因だ。
俺は構わないけど、早苗にそれをさせる訳には行かない。
「早苗、やっぱりそれは止めておく」
「じゃあ、達也が分からない所や解くのに時間かかる所有ったらすぐに連絡してスマホでビデオ通話すれば問題ない」
「ああ、それは頼むよ」
「じゃあね」
早苗が玄関に入るのを見届けた後、俺は自宅の門をくぐった。あまり無下に断っても代案出される可能性があるから早苗の提案を受けたが早苗に連絡するしないは俺の判断。全くしないと言う訳には行かないだろうけど。
食事が終わり自室で勉強を開始した所で玲子さんから連絡が入った。
「はい、立石です」
「達也さん、塾の勉強の事ですが、家に戻られてから復習予習をなさるんですよね?」
「はい、今から始める所です」
「達也さん、もし解くのに時間が掛かる様な問題は直ぐに私に連絡してください。今の達也さんのレベルは高いですが、もう少し点を増やすには、時間が掛かる問題に対しては今までとは違った視点で解く事が大事です。連絡頂けますか?」
「分かりました、ありがとうございます」
早苗と同じだ。心配してくれるのは嬉しいが、今の実力で俺は十分と思っている。帝都大は俺の中では捨てている。
それから勉強を初めて午後十時位に涼子から連絡が入った。なんと早苗、玲子さんと全く同じ内容の提案だ。参った。
加奈子さんには模試と中間考査を理由に十一月半ばまで会えないと言ったが、流石にその提案は断られた。仕方ないしに二週間に一度、模試や考査の後の日曜日という事にした。
毎日他の子達と会っている事を考えれば加奈子さんの気持ちも分かる。
学校の勉強分の予習は全て終わっているので今は塾の問題と本屋で購入した問題集、これも何故か五人が同じ物を買っている。早苗曰く、俺が分からない所が分からないからという事だが、そこまでするものか?
三人から言われた事を全くしないと相互でトラブルの元になるので二週間でそれぞれ三回ずつ質問をしたが、やはり教えると言うか俺の頭にすんなり入って来るのは涼子だ。学校の先生とか向いているのではないかな。
そして十月第一週の水曜日に模試が行われた。一応全教科全て解いたが、数学と物理で解き方に自信が無い問題が少しあった。
模試の有った日も塾はある。塾の帰りに
「達也、模試どうだった?」
「ああ、一通り解けたが解答に自信のない問題が何ヶ所か有った」
「「「何処?」」」
失敗した、全部大丈夫と言えば良かった。
「達也、家に帰ったらすぐにそこの問題見直そう」
「達也さん、見直しは早い方が良いです。頭にまだ問題の解き方の記憶が残っている間にやりましょう。私の部屋が一番近いです。私の所で」
「達也、私の家が一番早く着く」
「…………」
やっぱりこうなったか。
「皆には悪いが、模試の結果が帰って来てからにするよ。もう中間考査まで後二週間だ」
「じゃあ、考査の準備一緒にしよう?」
「私と一緒に」
「早苗、玲子さん。一人でやらせてくれ。中間考査と次の模試は俺の実力を正しく見たい。今皆の助けを借りても入った大学で勉強について行けなかったら意味が無い。だから一人で勉強する」
「達也、分かった。じゃあ、分からないとこや問題解くのに時間かかる所有ったら前みたいに直ぐに連絡して」
「「えっ?!」」
「本宮さんそれって」
参ったな。
「そうだ、三人から同じ提案をされた。頼むからもう一人で勉強させてくれ!」
「「達也」」
「達也さん」
私、立花玲子。これは不味い事になりました。達也さんの気持ちを考えずにここまで精神的に追い込んでしまいました。ここは彼を優先させた方が良いでしょう。
「達也さん、押しつけ過ぎました。申し訳ありません。次の模試が終わるまでは会うのは学校と塾だけにしましょう」
「玲子さん、分かってくれて嬉しいよ」
私、桐谷早苗。何よ立花さんいい子ぶって。本当は裏で達也に接触するんじゃないの。でも表面的には彼女の考えに賛同した方が良さそうだ。達也がこんな風に言うのは初めてだし。
「分かったわ。私も登下校と塾だけで我慢する。でも二回目の模試終わったら一杯会ってよ」
「ああ、そうするよ。涼子もそれでいいよな」
「うん、達也がそれを望むなら私はそれに従う」
「じゃあ、三人共そうしてくれ」
模試の結果は翌週、中間考査の前の週に帰って来た。驚いたことに解答に自信が無かった問題も半分は正しかった。判定は限りなくAに近いB判定。多分数学と物理をもう少し底上げすれば何とかなる。後ケアレスがまだ目立つ。
少し時間は戻るが、加奈子さんとは模試の直ぐ後の日曜日いつもの様に会った。あの三人には悪いが、彼女達は毎日会えている。加奈子さんは二週間に一回になっている以上、会わないのは可哀想だ。
「達也、久しぶり」
「二週間前に会っていますよ」
「二週間も会っていないのよ。それより模試はどうだった?」
「正直、ぎりぎりですね。どうしても取りこぼしが出ます」
「じゃあ、専属の先生を付けようか」
「それは止めて下さい。自分の実力で行きたい」
「絶対に帝都大に来てよ。達也と一緒に居たいから」
「分かりました」
みんなが俺を気にしてくれるのは嬉しいが流石にもうはっきりさせた方が良い様だ。その前に目の前に有るものを片付けないと。
――――――
達也いよいよ決断ですか?
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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