第106話 模試だって大変です
模試は、中間考査が終わった翌週の土曜日に行われた。俺は一応国公立文系を意識した教科選択だ。月曜から金曜まで塾から帰った後も勉強したが、自信は全くない。
朝、午前八時半から午後五時半までギュウギュウのスケジュール。全くなんてスケジュールを組むんだと頭の中で文句を言ったがどうしようもない。それに模試は七月初めにもう一度ある。勘弁してほしい。
終わった後、
「終わった。流石に疲れた。今日は帰ってすぐ寝る」
「駄目よ達也。帰ったら少しお話しよう」
「桐谷さんだけ狡いです。私も入れて下さい」
「何言っているの立花さん。私は彼女、あなたは…」
「早苗、いい加減にしないか。今日俺は寝る」
「でもーっ」
全く立花さんが変な事言わなければ達也と二人きりに慣れたのに。
「ふふっ、仕方ないですね」
桐谷さん、簡単には達也さんと二人きりにはさせません。
この二人何とか仲良くなれないものかな。口を開く度に口論しているんじゃ堪らない。だが、実際本当に眠いのも事実だ。
毎日結構遅くまで勉強した。やり方は早苗、玲子さん、涼子から色々教えて貰っているので何とかなったが、結果が実っているかは怪しい。
それに明日は、加奈子さんとの事もある。中間考査と模試の事で彼女と会う事を二週間スキップしたから、色々言って来るだろうな。
日曜日、加奈子さんと会うと当然ながら模試の事を聞かれた。
「達也どうだった模試の手ごたえ?」
「良くなかったです。一応全問解答はしましたが、自信のある解答が少ないという所です」
「そうなの。でも帝都大には入るんでしょう?」
「入りたいですが、無理と思っています」
「駄目よ。達也は私と一緒の大学に入ってキャンパスライフ楽しむのよ」
「でも現実ですから」
「ふふっ、そんな事言っていると専任講師付けるわよ。どうする?」
「えっ!が、頑張ります」
「それでいいのよ。さっ、達也もう二週間も会っていなかったのよ。ねっ!」
ふふっ、達也には何としても帝都大に入って貰う。その為にはあの子達にも頑張って達也の勉強をサポートして貰わないと。
二週間後、模試の結果が帰って来た。家に届いた結果は想像通りだった。帝都大判定B、鳥津大判定A。他にも色々書いて有るがどうでもいい。
コンコン。
ガチャ。
「達也」
「早苗かいきなりどうした?」
「模試の結果帰って来ているでしょ。見せて」
全く早いな。
「これだ」
「…そうか。達也帝都大どうする。これだと結構頑張らないと安全圏には行けないわ。合否ラインすれすれ位にはなるだろうけど」
私は達也に帝都大に行って欲しくない。三頭さんがいるあの大学に入ったら、今以上に状況が悪くなる。
週一会うのは良いけど、それ以外の日は今のように私と一緒がいい。
「達也、二人で公立大学行こうか?」
「ああ、俺もそうしたい。法律を勉強しないといけない様だが、司法試験受ける訳でもないから、わざわざ受験の難しい大学に行く必要は無いと思っている」
「達也、それどういう意味。法律ってなに?私経済学部辺りかと思っていたけど」
「加奈子さんが、三頭家、立石家の為には法律を良く学んでおく必要があると言っていた。事実うちの父さんも爺ちゃんも法律には詳しい。だから俺もそうした方が良いと思っている」
あの女、学部まで達也に指示して。許せない。私は法律には興味ない、経済学部でも行って達也のお嫁さんになれば良いと思っていた。
でも達也の言っている事も分かる。
「分かったわ。じゃあ二人で公立大学の法学部に入ろう。でも今からそれを皆に言うとうるさいから見かけはあくまでも帝都大第一志望にしておこう」
ふふっ、これで立花さん、三頭さんからも達也を遠ざける事が出来る。
「ああ、そうするか」
しかし、加奈子さんにはどうするかな。黙っておくことは多分無理だろう。
次の日、いつもの様に駅に行くと玲子さんが改札の側で待っていた。朝の挨拶をしながらホームに行くと電車が来る前に
「達也さん、模試の結果はいかがでした?」
「ぎりぎり帝都大です。もう少し頑張ればなんとかなると思います」
ふふっ、達也それでいいのよ。
「そうですか。ではもっと頑張らなければいけませんね。塾の密度を上げますか」
達也さんの言い様は本心で無い事は言葉の節で直ぐに分かりました。大方桐谷さんが何か入れ知恵したのでしょう。
「立花さん、達也はこのままでいいわ。今でも十分なんだから。余分な事しないでよ」
また二人の口論が始まる前にホームに電車が入って来た。良かった。流石に電車の中ではさっきの会話はしない様だ。俺の右に早苗、左に玲子さんが立って無言でいる。
二つ先の駅で涼子が乗って来た。早苗に挨拶をした後、俺の顔を見た。この前程顔が暗くない。涼香ちゃんと少しは話す事が出来たのだろうか?
何か言いたそうな顔をしているが、ここでは聞けないので仕方ない。
更に学校のある駅で四条院さんが合流した。しかし毎日この四人の女の子達と歩いていると悪目立ちしてしょうがない。周りの生徒からのあの目線はいい加減に止めて貰えないだろうか。
教室に入ると健司と小松原さんが仲良く話をしている羨ましい。
「健司、小松原さんおはよう」
「達也おはよ」
「立石君おはようございます」
「達也どうだった?」
「ああ、まあまあだ」
「そうか、俺達もまあまあだ。帝都大はいけないが公立位は行けそうだ佐紀と大学も一緒というのは嬉しいよ」
「あははっ、朝から惚気かよ。羨ましい限りだ」
「達也に言われてもなあ」
「本当だって」
「達也、どういう意味。私とじゃ駄目なの?」
「達也さん、どういう意味ですか?」
涼子は例によってニコニコしている。
「ソンナコトナイケド」
「「なんで棒読みなの!」」
こんな時だけ早苗と玲子さんがハモっている。
健司が声を出して笑い始めた。後で覚えていろよ。
私本宮涼子、朝から桐谷さんと立花さんが達也の事で言い争っている。一番目の席争いで二人共滑らないと良いけど。
私は二番目で良い。いつも達也の側に居れればいい。彼が助けてくれなければ私はいない。だから私の全てを掛けて彼を陰から支える。偶には表に出ても良いけど。
達也は私が高校を卒業するまで支えてくれると言っているけど、大学に入ったら私が達也を支える。
だから、彼の行く大学に私も入る。何処の大学かなんてこの二人の騒ぎを見ていれば簡単に分かる事。
大学を出たらいずれは彼の子を身ごもって彼だと思って子供を育て生きて行くつもり。正妻も内縁の妻も興味ない。達也だからそれまで側に居るね。
――――――
何をしても早苗、玲子さんバトルが発生しますね。さてさてどうなる事やら。
しかし、涼子の覚悟凄いものです。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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