第105話 中間考査はただではすまない
中間考査は来週月曜から木曜まで行われる。約束とは言え流石に考査前日の日曜日に加奈子さんと会う訳にはいかず、会えないと連絡すると仕方ないと理解してくれた。
三年になると考査だけではすまない。考査が終了した翌週の土曜日に模試がある。これは志望校を決める上でも重要な試験だ。
ここまでは何とか一人で勉強しようと思っている。多分早苗と玲子さんは色々言うだろうが仕方ない。実際の実力を確認する為にはこうするしかない。
更に翌金曜日は体育祭だ。中間考査だ、模試だと言っているのにその間にも体育祭の準備も行う事になっている。去年借り物競争で碌な事無かったから今年はあれに出るのは止そうと考えている。
そして迎えた中間考査。三年にもなると全科目全教科が対象だ。中途半端な教科数ではない。
それを四日間で行うから受ける方は大変だ。考査期間中は、図書室は開けないので学校が終わると直ぐに家に帰って勉強した。
手ごたえは、はっきりって良いとは思えない。自信をもって解答したという所があまり多くなかったからだ。
そして中間考査が終わり、金曜日は開校記念日でお休みという事で朝からのんびりしようと思っていると、まだ目覚ましが鳴る前に早苗がやって来た。
コンコン。
ガチャ。
「入るわよ」
意識がまだ戻り始めたばかりの俺にいきなり早苗がベッドの横に座り俺の体に倒れ込んで来た。
「おい、何しているんだ」
「ふふっ、いいじゃない」
いきなり口付けして来た。
唇を離すと
「塾にいくまで時間あるでしょ。二人で中間考査の答え合わせしようか」
「…………」
考査からやっと解放されたと思っていたのに…。
「今日じゃなきゃ駄目なのか?」
「答え合わせは直ぐにやるものよ」
本当かよ?
「でもなあ。やっと考査が終わったんだぞ」
「何言っているの。来週の土曜日は模試よ。その為にも早く間違えたそうな所をクリアにして望まないと。だから私の部屋でやろう」
「いや、模試が有るから今日くらいは勉強から離れてだな…。それになぜ早苗の部屋なんだ。うちのリビングで良いじゃないか」
「駄目。どうせ日曜日は三頭さんでしょ。だから私の部屋でやるの。さっ、早く起きて」
早く行かないとあの子が来るに決まっている。
ブルル。
あれ、こんな朝早くから誰だ? あっ、玲子さんだ。早苗がいるが仕方ない。
『立石です』
『達也さん、玲子です。今日は中間考査の答え合わせをしませんか?』
『え、えーっと』
『今日は何か用事でも?』
『いやそれは無いのですが』
『では宜しいではないですか。もうそちらに向かっています。達也さんに会いに』
『え、え、ええーっ!』
おいどうなっているんだ。
「達也、立花さんね。何だって?」
『玲子さんちょっと待って』
「玲子さんが考査の答え合わせしようって」
「そんなの用事が有るって言って断ってよ」
「もう無いって言ってしまった」
「えっ!」
『達也さん、もう着きました』
あっ切られた。
ピンポーン。
「えっ、まさか。あの音って」
「ああ、そうみたいだな」
コンコン。
ガチャ。
「あーっ、早苗お姉ちゃんがいる。お兄ちゃん、お母さんが玲子お姉ちゃんが
来たから起こして来いって。お兄ちゃん唇拭いておいた方がいいよ」
ガチャ。
妹の瞳がドアを閉めた。
「達也、どういう事?」
「いや俺にそう言われても」
「とにかく断って」
「そうはいかないだろう」
私立花玲子。朝早く伺うなんて達也さんには申し訳ないと思ったけど桐谷さんは遠慮ないはず。だから私も近さを利用させてもらいます。
今は、リビングで待たせてもらっていますが、玄関を上がる時、桐谷さんのものと思われるサンダルが有りました。
彼女はもう来ているはず。そうなれば答え合わせの場所は、ここのリビングルーム。達也さんと二人きりにはなれませんでしたが、桐谷さんと彼が二人きりになるのは阻止できました。ふふっ、近さの特権ですね。この前は久しぶりでしたし、引越しして来て良かったです。
「早苗、起きるぞ。退いてくれ」
「ヤダ」
「駄目だ。下で玲子さんが待っている」
「待たせればいい」
「早苗!」
「ぶーっ、達也のけち」
何がケチなんだ。
俺は着替えて顔を洗い、唇を綺麗にすると早苗と一緒に一階に降りた。
「おはよう玲子さん、早いですね」
「おはようございます。達也さん、桐谷さん」
「立花さん、なんでこんなに早く来るのよ」
「それは桐谷さんも同じです。お互い様でしょう。達也さん、起きたばかりのようですね。朝食を取られるまでここで待ちます。その後、一緒に中間考査の答え合わせをしましょう。模試もありますから。
桐谷さん、ご一緒に如何ですか?」
「言われなくたってするわよ。ふん!達也朝ごはん一緒に食べよ」
それだけ言うと早苗は一人でダイニングに行ってしまった。
「玲子さん済みません。朝食早く食べて来ますから」
「朝食はゆっくり食べて下さい。早く食べるのはお体に悪いです」
「ありがとう。じゃあ、ちょっと待っていて」
「はい」
ダイニングに行くと、俺のお茶碗に早苗がご飯を持っている所だった。
「達也ゆっくり食べようね」
「あ、ああ」
母さんと瞳が笑いを堪えているのが分かる。早苗の焼き餅焼きにも参ったな。
結局俺と早苗、玲子さんの三人で中間考査の答え合わせを行った。二人とも答えは同じ。つまり満点だ。
しかし、俺は全教科で二人と不一致な所が有った。つまり間違いだ。やはり俺の実力はこんなものなのだろう。有名国立なんて無理だ。加奈子さんには悪いけどこれでいい。
答え合わせが終わった後は、三人でそのまま塾に行った。涼子と四条院さんはすでに来ている。
「あれ達也、玲子と桐谷さんと一緒なんだ。そっか二人共家近いからね」
勝手に解釈してくれている。
「達也、二人と中間考査の答え合わせしたんでしょ。どうだった?」
流石涼子だ。この二人の行動は見抜いている様だ。
「ああ、全然駄目だったよ」
「そう、じゃあ、二人で普通の公立大学行こうか」
「何言っているの本宮さん。達也は私と一緒に帝都大学に行くのよ」
「そうですよ本宮さん、達也さんは私と一緒に帝都大学に行くのです」
「立花さん!」
「何ですか桐谷さん?」
「二人共止めろ。他の人の迷惑だろう」
「「ごめんなさい」」
そして翌週、中間考査の結果が張り出された。
一位 立花玲子
同一位 桐谷早苗
同一位 四条院明日香
五位 小松原佐紀
六位 高頭健司
二十五位 立石達也
同二十五位 本宮涼子
やっぱりな。
「なにこれ、満点が三人なんて。四条院さんって頭良かったんだ」
「うん、凄いね。あっ、また本宮さんと立石君一緒だよ。なんかこれはこれで凄いね」
「でも立花さんと桐谷さん、一位なのに凄い怖い顔している」
「そうだね。ここは退散しよ」
「うんうん」
なんて事なの。まさか本宮さん、達也の実力まで予想して点数コントロールするなんて。
なんて事でしょう。本宮さん、侮れません。これは家が近いとか言うレベルではありません。何とかしなければ。
「達也、どうしたんだ。二十五位なんて」
「健司か、これが俺の実力だよ」
健司と話をしていると涼子が側にやって来た。
「達也、また一緒だね。私はいつも達也の側に居るよ。またね達也♡」
涼子が爽やかな笑顔をしながら教室に戻って行った。
「なあ達也、本宮さんの事、どう考えればいい」
「俺とは全く異次元で分からない…」
涼子、自分の点数を落としてまで。…そこまで俺の事を。
――――――
恐ろしきは女の子達の戦い…。うーっ!
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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