第25話 GWは静かに過ごしたい
いつもよりちょっと長いです。
――――――
今日からGWだ。三頭先輩からは明日の午前十時にデパートの有る駅の改札で待合せしたいと連絡が有った。用事が無いからと安請け合いしたが、何か気が重い。
初日の今日は爺ちゃんの道場で瞳と一緒に午前中二時間ひと汗流した後、家に帰宅した。帰宅途中
「お兄ちゃん、涼香ちゃんと上手くやってる」
どういう意味か分からないが
「ああ、図書室担当覚え早いけどまだ一週間も経っていないから、GW開けからかな。なれてくるのは」
「ふーん。帰りは?」
「ああ、一緒に彼女の駅まで一緒に行っている。と言うか通り道だからな」
「まあ、そうだね」
まだ、涼香ちゃんはお兄ちゃんに話していないみたいだ。まだ図書委員になって数日。時期的にも早いからね。
「瞳はGWどうするんだ?」
「友達と遊びに行ったり、勉強したりだよ。高校入ったからって変わる事はないよ」
「そうか。ところでお昼休み瞳達にちょっかい出す奴はいなくなったか?」
「うん、ほぼいなくなった」
「ほぼ?」
「うん、お兄ちゃんの事を知らない一年生の男の子から声を掛けられたりするけどそれはあまり気にならない」
「そうか、それは良かった」
俺の気持ち的には複雑なんだけどな。まあ、二年生や三年生は俺の事を知っているからそっちは大丈夫だろうけど。
翌日、俺は学校の向こう隣り駅の改札で待っていた。まだ二十分前だ。涼子との経験で男は早めに来た方が良いという事が分かった。
十分前改札から三頭先輩が…似ているけど眼鏡かけていない。気の所為だろうか。その人はそのまま俺の所に歩いてくる。俺がじっと見ていると
「おはよう達也」
「…………」
「分からないの私、加奈子だよ。眼鏡かけていないから分からなかったんだ。前髪もアップしているしね。眼鏡は学校だけよ」
見間違えるのほどの美人だ。周りの人からの視線が凄い。
「あっ、いえ。おはようございます。三頭さん」
「ねえ、今日だけでも加奈子って呼んでくれない」
「…無理です。三頭さんとは学校の先輩後輩ですから」
「良いじゃない。今日くらい」
「駄目です」
「固いなあ、まあいいわ行こうか」
俺の手を握ろうとしたので
「三頭さん、勘弁して下さい。でないと俺帰りますよ」
「分かったわ」
先輩少し不機嫌になった様だ。
だが、涼子の時の事もある
「三頭さん、この交差点渡る時だけ俺の先を歩いて貰えますか。もしくは俺のすぐ後ろを」
「なんで?」
「お願いします」
「良く分からないけど達也の後ろを歩くわ」
四方向の信号が青になった。結構な人がクロスしながら歩いている。俺も正面のデパート目指して歩いて行くと
「ちょっと達也そっちじゃない」
「えっ?」
「私が行きたいのはあっち」
そう言って右手で方向を示した。
「すみません」
向きを変えて歩き始めると
「キャッ!」
「いてえ!」
俺が急に向きを変えたので三頭さんが人をよけきれなかったのか、向こうがよけきれなかったのか、男は転ばなかったが、三頭先輩が転んでしまった。
「お前、急に方向変えるないよ」
「済みません」
どこかで見たイベントになってしまった。仕方なく
「三頭さん」
そう言って彼女に手を伸ばすとしっかりと俺の手を握って
「達也が急に向きを変えるからこの人にぶつかったじゃない」
俺がぶつかった男を見ると
「彼氏持ちか。気を付けろよ」
そう言って急いで歩いて行った。良く見ると信号が変わり始めている。
「三頭さん」
仕方なく、手を引いたまま信号を渡り切った。
「ほら、達也が手を繋がないからよ」
「…………」
流れがまずいな。直ぐに手を離そうとすると
「だめ、責任取って。尻餅着いちゃったんだから」
「えっ、でも」
「でも?」
「分かりました。今日だけですよ」
なんで、俺はこう不運なんだ。もう女の人とデパート絶対来ないからな!
「ふふっ、そんな事思わないで。これからも一緒に買い物付き合ってよ」
「へっ?」
やっぱり俺の頭の中を三頭さん他一部の人に外部表示する機能がどこかにあるらしい。早く故障してくれ。
彼女に手を引かれて来たのは、涼子に連れて行かれた駅の近くのデパートではなく、五分程歩いたところにあるデパートだった。
どう見ても女性専用って感じなのだが。
「三頭さん、ここって?」
「なに?普通のデパートよ。さっ入ろ」
うっ、一階はいきなり女性化粧品の匂いが強烈に鼻を突いて来た。直ぐにエスカレータに乗る。鼻を押さえていると
「ふふっ、お化粧品の匂いは苦手なのね。その内馴れるわよ」
こんな匂い慣れたくない。
そしてやって来たのは、やっぱり……。
「三頭さん、一緒に入るのは勘弁して下さい」
「なんで?私が着る夏服を選ぶだけよ。達也にも一緒に選んで貰おうと思ってさ」
「い、いや、だから俺そういうの選ぶ頭ないし…。苦手なんですよこういう所」
全く、胴着でも一緒に売っていて欲しい。
「でも入って」
「勘弁して下さい」
「じゃあ、外で待ってくれていいから一つだけお願い聞いてくれる?」
なんか同じシチュエーションだ。仕方ない。
「良いですよ。でも…」
「でもはなし。じゃあ少し待っていて」
行ってしまったよ。しかし決まらなかったらしく、更に三店ほど女性服のテナントをはしごして、結局最初から二番目の所に戻って決めた。
俺には分からない発想だ。俺なんかそれって思って買ってしまうけど。
「昼食まで時間あるわね。もう少しぶらぶらするか、映画でも見てから昼食にするか、どっちがいい?」
映画も見る予定あるの?何も聞かずに買い物をと言われて付き合った俺が浅はかだった。
「いいじゃない。映画も。二人で見よ。でも中途半端ね。今日ね、見たい映画有ってそれね、午後一時からなんだ。だから少しブラっとしてから昼食にしようか?」
「…いいですよ」
何故か俺は右手に彼女の買った洋服の袋、そして左手は握られている。なんかおかしい。
昼食はデパートの近くの洋食屋さんだ。ちょっと早かったせいか並ばずに入れた。
俺はラムチャップセットを三頭先輩はBLTサンドを頼んだ。
「達也、今日はありがとう。こうしていられるの嬉しいわ。でもあくまでも友達として買い物を付き合って貰っているだけだからね」
今の彼に恋愛色を出すのは悪手だ。あくまで友達カラーで接する方がいい。
「そうですね。俺もそう思っています。ところでさっきお願いとか言われていましたけど」
あらっ、忘れていたわ。彼は律儀ね。自分か言い出さなくてもいいのに。
「そうねえ。じゃあ、もう一度GW中に会ってくれる」
「約束ですから良いですけど」
「じゃあ、水族館行こうか」
「えっ!!」
なんか絶対同じじゃないか。どうなっているんだ。
「なんで驚いているの?驚くようなところだっけ水族館って。いやなら遊園地でも良いけど?」
参ったなあ。まさか、GW中に二回も三頭さんと会う事になるとは。
「ふふっ、大丈夫よ。じゃあ明後日にしようか。明日でも良いけど?」
どうするかな。明後日にすると明日が時間の連続性で死んでしまう。明日にして後半を生かすか。
「分かりました。明日にしましょう」
「そう。嬉しいわ。明日も達也と一緒にいれるなんて」
水族館は、俺の家のある駅から学校へ行く方とは反対方向で六つ目の駅で降りる。
そこで待ち合わせも良いが、万一を考えて俺の家のある駅の改札内側とした。午前九時待ち合わせだ。
やはり三頭さんは眼鏡は掛けて無く、前髪もアップしている。綺麗だ。洋服は白のスキニーパンツと薄い水色のTシャツそれに白のスニーカーというラフな格好だ。まあいく先が水族館だからな。
水族館をゆっくりと見て回り、昼食を摂ってイルカやアシカのイベントを見ると、もう午後三時を過ぎていた。
「達也、この近くに大きな観覧車があるの。それに乗らない?」
「別に良いですけど」
歩いて十分程、散歩程度の所にあった。並んでいるのは少しだ。でもみんなカップル。
順番が来て乗ると周りの臨海施設が良く見える。
「わーっ。思ったより綺麗ね。乗るの初めてなの。一度乗ってみたかったんだ」
子供の様にはしゃぐ三頭さんを見ていると微笑ましくなってしまった。
あれ、いつの間にかじっと俺を見ている。丁度俺達の乗っているボックスが頂点にあるみたいだ。ゆっくりと彼女が俺の側のシートに座って来た。
「ねえ、達也。私達友達でしょ」
「ええ」
「じゃあ、これも友達の範囲で」
いきなりギュッと抱き着いて来た。
「三頭さん」
離そうとすると
「お願い、達也少しだけでいい。こうさせて」
こうさせてと言っても俺の鳩尾辺りに彼女の大きな胸がぎゅーっと押し付けられている。まさかTシャツにしたのって。でもまさかなー。
「達也、腕を私の背中に回して」
「でも」
「お願い、今だけだから」
仕方ない。彼女の背中に軽く手を回した。
「嬉しい」
結局、三頭さんは、到着直前まで俺から離れる事が無かった。俺の脳は、彼女の胸圧でほとんど破壊されたけど。
それから最寄りの駅まで手をつないで帰りながら
「達也、本宮さんの事であなたが女性不振になっているのは分かる。でも私は本宮さんじゃない。
だから、いつか私の気持ちを受け入れて。でも私三年生でしょ。時間も無いの。だから…ううん、待ってるから。達也がいいよって言ってくれるのを。それまでキスもあれも我慢するから」
周りに人がいるのに、もう一度俺に抱き着いて来た。顔が赤いけど。
参ったなあ。俺もうああいうのもう嫌なんだけど。
三頭さんとは俺の家のある駅で別れた。
――――――
なんか難しいですね。色々と。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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