第98話 マリアの里帰り




「随分と景気の良い商売をしていますね」


「まっマリア久しぶりだね、随分と大きくなったね…」


私とメルは、セレス達が村長、じゃない町長と話している間、時間を貰って父親に会いに行く事にしました。


ママも誘ったのだけど…しっかり断られました。


まぁ、新しい旦那と一緒に居た方が楽しいですよね。


「貴方は一体どなたですか? 随分とうちの主人と仲が良いようですが?」


「うちの主人?」


「はははっ、マリア、パパは再婚したんだ、こちらがシャルロット、新しい妻だ」


「そうですか? 初めましてマリアと申します」


「娘さんでしたか、宜しくお願い致しますわね」


しかし、うちのパパはロリコンなんでしょうか?


見た感じ、どう見ても私と同い年位。


下手したら私より年下です。


どうりでママを簡単に手放した筈だわ。


「こちらこそ宜しくお願いします」


「それじゃ、パパが紅茶を入れてくるから、ゆっくりしていきなさい」


「パパ、紅茶なんて入れられるの?」


「まぁね、シャルロットが飲みたいというから必死に覚えたんだ、美味しいの入れるから待っててくれ」


「そうですか」


「結構おいしくなりましたのよ」


パパが紅茶を入れる…あのパパが?


めんどくさがりで店番すら、やりたがらないあのパパが。


「さぁ出来たぞ、ほらクッキーも焼いたんだ良かったら食って」


パパがクッキーを焼く? 信じられないな…


「美味しい…」


「失敗ばっかりだったけど、最近ようやく上手く焼けるようになったんだ」


「そう…だけどパパ、仕事の方は大丈夫なの?」


「それなら、大丈夫だよ…セレスから教わったコンビニを作って、最初はヒィーヒィーしながら仕事をしていたんだけど、シャルロットから『経営』について教わって人を雇ってやらしているんだ、今の僕は偶に視察に行くだけだよ…店舗も増やしてまぁ頑張っているよ」


「そうなの? 随分パパとシャルロットさん頑張ったんだね」


「まぁね…まぁ苦労したけど此処迄きたよ」


しかし、見れば見る程、シャルロットさんは若いな。


だけど、ママとセレスが付き合うのも抵抗があったけど…


パパとシャルロットさんが付き合っているのを見ると寒気がするのはなんで…


見てて何か解らない違和感がある。


あの怠け者のパパがしっかり働いているし、結婚して幸せそうなのに…


まぁロリコンではあるけど…


セレスとママとは違った感情が沸き上がってくる。


何故か…此処に居たくない。


歓迎をされているのに…何故かそんな思いがこみ上げてくる。


「さっきから親子だと言うのに話しませんのね」


「久しぶりの故郷だから感慨深くてね…」


「やはりそうなのね、故郷を失った者としては羨ましいわ…今の私にはこの街が故郷みたいな物なのよ」


何だろう…この違和感。


「良い街でしょう」


「本当にそう思いますわ」


そうか…わかった、シャルロットさんが…私にソックリなんだ。


だから、気持ち悪い…そう思ったんだ。


「それじゃ、私はそろそろセレスの所に戻りますね」


「久々に来たんだ、もう少しゆっくりしていっても良いのに」


「そうですよ、此処はマリアさんにとって実家、私も一応は義理の母親になるのですから、なんならお泊りになって下さい」


「そうね、だけど今の私はセレスの家臣だから、余り長居も出来ないのよ」


「そう言う事なら仕方が無いな」


「また来てくださいね」


家も新しくなって私の部屋も無い…此処にはもう私の居場所はない。


「また来ますね」


そう言って私は実家だった場所をあとにした。







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