第6話 巫女装束、メイド服、チャイナ服、ビジネススーツ

 茉森はハッと息を飲んだ。


(これからフィールドに突入する? この格好で?)


 自分の戦闘着を見下ろし、茉森は「むふふふ」と含み笑いをする。


 純白の白衣(巫女服の上半身の着物)を身にまとい、真っ赤な袴というスタンダードなこの姿。


 あまりにもスタンダード過ぎたので、袴をカスタマイズしてミニスカートにしたら、コスプレキャバクラの店員のような姿になったが、それもまた良しとしよう。


(何故なら男(オス)は、コスプレキャバクラにはまりやすい生物で(偏見)、メイド服以外にも巫女装束が好きだから)


 女教師のフィールド突入に関する注意事項を全て聞き流しながら、ミニスカ巫女の茉森は拳を強く握る。


(巫女装束は本来神事を全うする巫女が身に着けるが、その清楚さから古の時代から男性の目線をも欲しいままにしてきた。一時期はメイド服やチャイナ服と争い、時には女子大生のビジネス姿、OLとも争ったが、今ではその覇権争いも穏やかになり、巫女装束も静かな位置に収まった。静かな位置とはつまり、個性を強く押し出さず、控えめな清楚さを伝えるということ。清楚を絵に描いたような私にぴったりの衣装、それが巫女装束)


 確滅の巫女だから巫女装束を戦闘着として参加しただけなのだが、茉森は一人、声を殺して高笑いしている。


 周囲では順番に生徒が、地下にも関わらず鬱蒼と木が茂るフィールドへ足を踏み込んでいた。


(私の『戦闘着』ならば、零ちゃんは必ず意識する、何故なら硬派な男(オス)は清楚に弱い。清楚とはつまり硬い職業=巫女、勝った、これは勝ったな、うははは)


「行くぞ、マモリ、パーティというのを組むらしい。他のクラスメイトはパーティを各自組んでしまっている」


 茉森は零護の声にやっと我に返る。


 零護の上着は「とうきょうじんです」と筆で書かれたTシャツにジーンズ姿である。何故それが戦闘着なのか、茉森には分からなかったが、きっと名もなき流派には戦闘着はないのだろうと一人納得する。


「え、ひゃ、ひゃ、い、ふ、ふつつかものですが、よろしくおねがいいたします!」


 あまりにも緊張している茉森を見て、零護は少しばかり思案する。


(再開してからあまり会話らしい会話もできていないからな、せめてフィールドの緊張くらいは解いてあげないと)


 そこで考えに考えて言葉が発せられるまで数秒。


 零護は神威として、護衛としてのあたりまえのことをまずは伝えるべきとの考えに至った。


「……マモリは必ず俺が守る、俺から離れるなよ」


 フィールドは未知だ、離れてしまっては護衛も何もない。また武器がなくとも対応できる零護は、手始めに茉森の装備を整えるため、離れずについてこいと伝えた。


 茉森も緊張しているようで、手でウチワを作りながら赤い顔をあおぎ、冷静さを保ちつつも、返事の言葉を必死に絞り出した。


「ふぁ、ふぁい!」


 危なく「すきすきだいすき」と叫ぶところだったと、後に茉森は語る。


────────────────あとがき──────────────────

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


初めてのラブコメなので、参考までに「★」「応援」「コメント」をいただけると、とっても嬉しいです。


いつかレビューがもらえたら嬉しいなと思いつつ、次回のお話も頑張ります。

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