1時限目 初めてのフィールド散策 / 固有武装入手
第3話 遅刻はするなよ
(やばい、めちゃくちゃイケメンになってるよ)
茉森(まもり)は待ち合わせ場所である〈アメノミハシラ学園〉の校門前に到着したが、空を見上げている零護(れいご)を見て早くも胸がトゥンクと高鳴る。
(なんだあの黒髪短髪イケメン、身長も私の方が大きかったのに、今は一八〇くらいない? え、一六歳だよね、どんな修行したらそんなに成長するの)
零護のあまりの成長ぶりに茉森は息をするのも忘れていた。
しかし周囲に学生の姿がない事に気が付いて、急いで零護の元へ駆け寄る。
(駆け寄る方法も沢山練習したんだ)
乙女走り。
(腕を横に振り、自然な程度にうちまた気味にして走る。私も確滅の巫女として修行したから、その気になれば一瞬で零ちゃんの前に移動できるけど、それじゃ可愛さなんてあったもんじゃない)
しかしそれだけで零護に意識してもらえると茉森は思っていない。
相手はあの零護なのだ。
小学生だったせいもあるが、彼は恋愛の「れ」の字も知らず、女心の何たるかすら知らない。あのまま山奥の神威の修行に連れていかれたのだから、今でも女子慣れしていないどころか、異性という存在すら理解していないレベルなんじゃないだろうか。
(そこで私は考えた。はしたないこと承知の上、上等やってやろうじゃねぇか、こちとら小学校から恋愛ストレスが発散できずに育った恋愛思春期モンスターよ。セーラー服から伸びる健康的な腕と少し短めにしたスカートから覗くふともも、これに目を奪われない男(オス)は存在しない。それは鈍感すぎる零ちゃんでも同じはず!)
それに加えて茉森はこの日の為に『地味な人間でも髪型で陽キャにしてくれる美容室』で程よいセミロングに整えて貰ったのだ。
生活費がかなり圧迫されたが、そんなものどうということはない。
零ちゃんに意識さえしてもらえれば、毎日、雨水と雑草でも十分生活していける。
それが確滅の巫女として修業した成果だと言わんばかりに、茉森は無い胸を自信満々に張りながら颯爽と歩いていく。
(さあ、どうだ零ちゃん、見て、見て!)
ずんずんと力強く、だが焦らず冷静に。
茉森は零護へ近づいていきあと数メートルの距離で、零護はふと茉森に気が付いた。
(ひ、)
(ひああああああ)
零護の振り向く顔がスローモーションに見え、舞い散る花弁がこれからのラブロマンスを演出する。
(だ、だめだ、だめだ、私が直視できん)
赤面する顔隠そうとするも口がふへふへとにやけてしまう。どうにか引き締まった顔を作ろうとするが、零護の顔があまりにも好み過ぎて、なんだか胸焼けすらしてくるほどだ。
朝食べたのなんだっけ、ゴボウのきんぴらか、ならリバースしても何とかなるだろう。現役女子高生のリバースなら多分大丈夫だ(大丈夫なのか?)
(ええい、負けるな、茉森。精神集中修行で培った根性をみせろ)
くっと唇を強く噛み、緩んでいく表情筋を引き締める。
だがそれでも頬が緩んでいくのを感じる。
(く、だ、だめだ、かっこよふぎふ——)
これ以上は唇がもたない、鮮血が飛び散るのも時間の問題だ。
「久しぶりだな、マモリ」
零護の声を聴いた瞬間に茉森の意識は飛びかけ、反射的に己の頬を最大火力でぶっ叩いていた。
一時限目の始まりの鐘が鳴ったのは同時だった。
────────────────あとがき──────────────────
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
初めてのラブコメなので、参考までに「★」「応援」「コメント」をいただけると、とっても嬉しいです。
いつかレビューがもらえたら嬉しいなと思いつつ、次回のお話も頑張ります。
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