生徒会役員

 中央島にある本校舎。そこは職員室や特別教室がある校舎だ。

 中央島を除く三つの島はそれぞれ、初等部、中等部、高等部で分かれており、それぞれの島には別の学年は原則入れないことになっている。しかし、中央島は全学年が入れるため、全学年が共通して使用する特別教室はこの本校舎にある。

 そして、生徒会室もまたこの本校舎にあるのだ。

 その生徒会室へ向かう生徒の陰が一つ。



「…………」



 童顔で背が少しばかり低いその少年の名は橋間光樹。

 先月の生徒会選抜試験にて、過去最高得点をたたき出し、生徒会長となった生徒だ。

 そんな彼の行く手を遮るように一人の女教師が立っていた。



「姉さん……」



 その女教師の名は橋間琴里。逸人たちの担任であり、光樹の姉だった。



「なに? 何か用?」

「まぁ、なんだ、生徒会長になったんだってな……」



 琴里はまるで話下手の父親のような口ぶりだった。



「そうだよ。だから、今からその生徒会なんだ」

「……そうか」



 そこには気まずい空気が流れていた。



「俺は姉さんとは違うから」



 光樹は睨むように琴里を見ていた。



「絶対に魔法師になってやる」



 光樹はそう言うと、琴里の言葉など待たずに彼女の横を通り過ぎていった。



「……光樹」



 そんな彼の背中を見て、琴里は悲し気にその名を呟くのだった。







 光樹が生徒会室に入ると既に他の生徒会役員が揃っていた。



「ああ、今日の僕もなんて素敵なんだ!」



 浪川は鏡で自分の顔を見ながら、自分に酔っていた。



「おい貴様。生徒会長が来ると言うのに何だそれは! また寮内からの参加か!?」



 赤城はPCのモニターに映る夏希に対して怒っていた。



「え~別にいいじゃないっすか~。てか、今の時代はリモートっすよ、リモート。わざわざ生徒会室に行って会議とか移動時間の無駄ですって」



 面倒くさがりな夏希は寮の自分の部屋からネットを介し生徒会室のパソコンとつなぎ、リモートにて生徒会に参加していた。



「お前たち、その辺にしておけ、生徒会長が来たぞ。」



 綺麗な姿勢のまま腕を組んでいる藤堂は光樹が生徒会室に入ってきたことに気がついた。



「どうやら、全員揃っているみたいだね。夏希は相変わらず、リモートでの参加かい?」

「そうっすよ? 何か問題でもありますか?」

「いや、構わない。直接対面でなければならない理由はないからね」



 光樹のその言葉に夏希は得意げな顔をして、赤城の方へ視線を送った。

 それに対し、赤城は悔しそうに歯噛みした。



「それで今日は一体何の用があって俺たちを呼んだんだ?」



 早速ではあるが、藤堂が話を切り出す。

 生徒会とは本来、定期的に集まることはない。何かしらの問題、あるいは行事がある場合にこの生徒会室に集まり会議を行う。

 今日、この場に生徒会全員を呼び出したのは他でもない、生徒会長である光樹だった。



「先日、議題に出したあの案件を実行に移すことにする」

「「「っ!」」」



 その場に居た浪川以外、生徒会長の言葉に言葉を失った。



「あれ、本気でやるのか……」

「理事長直々の命令だ」

「しかし、権限で言えば我々の方が上、理事長とは言え、その言うことをそのまま聞くことは……」

「分かっている」



 光樹は赤城を手で制し、言葉を遮った。



「確かに、理事長の命令をそのまま聞けば、生徒会としての立場が無くなってしまい、我々は理事長の傀儡と思われてしまうかもしれない。だが、前も言ったはずだ。俺はこの件に関して賛成派だと」

「……分かりました」



 赤城は渋々と言った感じで了承した。



「さて、では早速動こうとするか。対象者をリストアップし、学校の掲示板に貼るのだ」

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