第65話 執務宮の妖怪(1)
私が飛空で執務宮へ急ぐ間に、皆に何が起こって居るのか分かっている事を聞きます。
『ヴァン国海軍の通信におかしな内容はありませんです』レタは海軍全体は動いて居ないことを知らせてきます。
(執務宮の中ではまだ偵察バグの配置が完了していないので情報は拾えて無いよ by妹)
(商業同盟や帝国の動きや通信に今回の件に繋がりそうな物は見つかって居ないよ by大姉)
情報不足です。
急いで養母様の所へ行きましょう。
上空から執務宮を観察します、把握では養母様は執務宮の執務室にいます。
他の長官達を探します。
ケマル魔具省長官はオウレに行っているので、筆頭秘書のケリシアを探します。
探った所、執務宮の中に居ないのは、軍務省長官のニルディアと筆頭秘書のカノニーネそれから商工省長官のエカティナと筆頭秘書のニエルダの4人が執務宮から離れているようです。
考えられることは、商工省長官エカティナと筆頭秘書のニエルダは魔印章を使った犯罪が公になり、逃げたか潜んで反撃に出たかだと考えられます。
軍務省長官ニルディアと筆頭秘書のカノニーネはカモメを引き取りに来た海軍の関係からでしょうか?
エカティナ達とニルディア達は組んでいる可能性は高いでしょう。
海兵が私を拘束しに来たのは、反撃の種にでもする積りだったのでしょうか?
執務宮は東向きの建物で、南北に長い幅広の長方形をした建物です。
養母様の執務室は執務宮の2階北側に在ります、桜草の宮への渡り廊下がそのまま続いています。
広い執務宮の北側半分全てが上から下まで執務室とその関連施設の部屋に成っています。
養母様が普段執務している部屋は北側2階の東から西の廊下まである広い一室です。
その東の窓へと飛空で近寄り、窓を軽くたたいて私が居る事を伝えます。
驚いた侍女の一人が「カスミ姫様ではありませんか、2階へ上って来るとはお転婆すぎます」
と驚きと呆れかえった声で私を窘めます。
「カスミちゃんを中へ入れて上げて」と養母様が助けてくれました。
「お養母(かあ)様、ご無事で何よりです」と養母様に抱き着いて無事を喜びました。
養母様もしっかり抱き返してくれます。
「どうしたの?そのように取り乱して?」と養母様は私の普段とは違う様子に不信を抱いたようです。
「はい、エルフ学園を過ぎて執務宮への大通りを歩いている時、ゴーレムに乗った海兵7人に襲われたのです」
「なんですって!」養母様だけでは無く、側の侍女立も驚いたようです。
何人かの侍女はすぐさま走り去り、他の侍女は窓やドアへと移動します。
窓へ行った侍女はカーテンを閉めています。
暗くなった部屋で侍女達が魔道ランプを付けて行きます。
明るくなった部屋で、養母様は応接用の椅子へと私を連れて行き、座らせると、自分も横に座り手を握って、素早く私の体に異常が無いか見つめます。
一通り見終わると安心したのか、此方を向いて聞いてきます。
「それで詳しく話してごらんなさい」
「はい、先ほど通用門から出て、キャラバン隊の集結地を見物して聖樹跡大聖堂を通ってエルフ学園から聖樹環道路を渡りましたの、公園沿いに歩いていると、港方面から来たゴーレムに乗った海兵が追って来て私を取り囲み”カスミ姫か?”と聞いて来たのです」
「どこの誰で、何の権限で質問するのか問い返したら」
「問答無用、捉えろ」と襲い掛かったのです。
「行き成り煙幕弾をぶつけられて、あたりに紫色の煙幕が立ち込めました」
「海兵は顔を覆うマスクをすると、投げ縄を私に投げてきました」
「危険なので、”土砲”でゴーレムの魔石を撃ちぬいてゴーレム全てを破壊したのです」
「海兵7名とも上からゴーレムの崩落で下へと落ちて動けなくなりました」
「そこで、近寄って闇魔術の昏睡を使って無力化しました、後始末は近くに居た自警隊へ任せて執務宮へと飛空で来たのです」
と説明しました。
養母様や侍女の皆様は遮ったりする事無く黙って聞いてくれました。
「分かった、敵は早々と反撃してきたようね」
「今回は後手に回りましたが、エカティナ、ニエルダの2名に捕縛の命令を出しています、罪状は詐欺罪への主犯と共謀です」
「自警隊とも話した結果、白紙に成った書類に元の魔紋と文章を浮かび上がらせるのが誰であっても証拠として十分だと判断したのです」
「他にも、オウレで犯行が行われていた頃に商工省の秘書一人と軍務省の秘書4人が軍務省長官の命令でオウレに視察に出かけているのよ」
「この5人と軍務省長官のニルディアと筆頭秘書のカノニーネの2人も共謀罪の重要参考人として手配したの」
「カモメをお召艦にする話はニルディアから出て来たの、此の件も考慮に入れているわ」
「彼女たちは一早くこの件を察知して、逃げたのね」
「後ね、魔薬を仕込んだ2名は忘却の魔薬を飲まれてしまいました、歯に仕込んでいたのよ」
「今は、赤ん坊並みにミルクを飲んで、糞尿垂れ流しよ!」
養母様は余程悔しかったのか、汚い言葉を吐き出すように言われます。
「自警隊にも全市に警備体制を敷いてもらい、彼女らの逮捕を全力で行うわ」
「貴方に直接手を出したのよ、私が全力でもって対処します」
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