第64話 ジュヘイモス市内の見学(2)
公園が終わると、公園の続きの様な大きな柵で囲った建物が見えて来ました。
エルフ学園です、千歳以下のエルフの子女がここで学んでいます。
ドワーフの工房大学と違って純粋のエルフだけがここに通っています。
と言ってもエルフの女性から生まれれば、父親に関係なく純粋のエルフに成ります。
詳しくは知りませんが、保育園が在るそうなので生まれたらここに預けたまま育児をしない母親がエルフには多いそうです。
学園の中には保育園から大学の専攻科までそろった総合大学に成っているようです。
学ぶ時間も千年とドワーフの工房大学と比べると20倍長い年月学園生活をする事に成ります。
ここは、病院が併設されていて樹人の乳幼児専門の病棟も在るそうです。
エルフは医師や薬師に成る人が多く、他の国では治せない肺や内臓の病気を治す薬は魔道具と並ぶヴァン国の輸出品として重要な物です。
ただ養母様に寄ると、ここ数万年新しい進展が無く現状さえ維持出来ているのか分からないそうなのです。
養母様もまだ千歳と若い為、聖樹の変以前の事について詳しくは分からないそうですが、医学の調査報告書を見る限り、昔ながらの方法に固執して新しい方法が試されていないそうです。
薬にしても魔薬に特化していて、普通に植物などから作る薬はエルフの薬師は作って居ないそうです。
養母様によるとエルフ学園の医学部は伏魔殿なのだそうです、私が執務宮の長官達を妖怪砂掛け婆呼ばわりするのは養母様の影響だと思います。
学園の中を探る為に偵察バグを30匹忍ばせます。
外から忍び込ませると、虫に食べられてしまう事が多い為今回は事前調査です。
此の学園の周りも6人編成の警邏隊が居て、あたりをゆっくり見て回っています。
此処には誘拐の目標が多く居るので常時警戒しているのでしょう。
学園から大きな通りが学園沿いに在ります。
この大通りを道に沿って歩きます、道は大きな円を描くように作られています。
1ワーク(1.5㎞)も歩くと、賑やかな広場に出ました。
ここは自治庁庁舎も在るキャラバン隊の一大集結地です。
自治庁の建物や馬車隊のゴーレム置き場や馬車置き場などの建物が続き、工房やキャラバン隊用の市場に宿などの施設が軒を連ねています。
ヴァン国内の物流の粗全てを担うキャラバン隊です、その一大集結地なのですから大きさは今までの劇場や公園などと比較に成らないぐらい大きいです。
大きさは執務宮より幅は半分ぐらいだけど長さは倍はあります。
それでも幅は歩いて来た公園の幅の倍はあります。
円を描くように作られた大通りは自治庁の前を南北へとカーブを描いて北へと向かいます。
私は、其の円に沿った大通りを離れ、執務宮へ真っ直ぐ繋がる、円の直径に成る道路を進みます。
此処まで説明したらお分かりのように、この円を描く大通りは、聖樹の立っていた跡地に沿って作られた「聖樹環大通り」と名付けられた道です。
聖樹は聖樹の変で燃えた後、消えてしまいました。
後には何も残らなかったそうです。
聖樹の幹や枝さえ残っていません、でも立っていた跡地は広い円形の土地として残りました。
養母様は聖樹の変でダキエ国が滅び、国内が混乱して内戦状態になりかけていた時に帰ってきました。
妖精族やドワーフ族が隠れ住んでいたシリアルビェッカ村から混乱を立て直し、新しい聖樹を源として、ヴァン国を建国したのです。
ジュヘイモス市に首都機能を再建する為最初に行ったのが、聖樹の後地を整備する事業でした。
その最初の工事が、「聖樹環大通り」です。
そして、これから向かう先にある「聖樹痕大聖堂」もそうです。
此処を立てる一大工事で国内の混乱と騒動で住む場所を失い、食事にも困窮する人々に職と食べのもを与え、誇りを取り戻したのです。
執務宮を造営したのは建国後300年ぐらいしてからだそうです。
「聖樹痕大聖堂」を立てる為のお金が足りなくて300年もかかって建てたのだそうです。
その時借金していたのが、今の各省の長官や秘書をしている人達です。
こうして、表面では手と手を取り合い共同してヴァン国を運営し、水面下ではお互いに足の引っ張り合いをする関係が出来上がったのです。
300年もの歳月をかけた「聖樹痕大聖堂」の横を歩いて通ります。
この大聖堂は円形の聖樹を模した建物で上はドームに成っています。
作りは聖樹に似せて作られたそうなので、聖樹の変以前の姿をしているのでしょう。
杉のような木肌で凸凹した表面をしています、ミエッダ師匠のお父さんにしてはミエッダ師匠の木肌と違っていますね、師匠の木肌はもっとすべすべしていて触っていて気持ち良いのです。
「聖樹痕大聖堂」の横を執務宮へと歩いて行くと、エルフ学園の柵が見えて来ました。
先ほど歩いた反対側です。
エルフ学園の前の通りまでが「聖樹環大通り」に成ります。
此の通りを渡って、公園に沿った執務宮へと続く大通りへ出ます。
今渡った「聖樹環大通り」の南からゴーレムに乗った数人の海兵が駆けてきます。
南からなので港から来たのでしょう、執務宮へと曲がると執務宮へ向かわずに私の周りを取り囲みました。
大通りに居た自警隊の警邏隊が何事かと警戒しています。
私も、海兵に囲まれて何事だろうと思っています。
「カスミ姫ですね」とゴーレムに乗ったまま海兵の隊長だと思われる士官が問う。
ゴーレムに乗ったまま頭越しに尋問口調で問うて来るとはずいぶん失礼なおばさんですね。
「随分失礼な物言いですが、貴方はどなたですか、そして何の権限を持って尋ねるのですか?」
海兵に陸での権限など、敵地へ乗り込んだ時ぐらいしかないはず。
「問答無用、こいつがカスミ姫だ!捕まえろ!」
ゴーレムの上から何かを投げつけてきました。
今日は街歩き用の服を着ているので、スカートとシャツに帽子を被った姿ですが、下にはボディスーツを着込んでいます。
投げた何かは破裂して煙を出し、視界を遮って敵の姿を見えにくくしています。
煙に何か混ぜてあるのか、彼女達はマスクをかぶって顔を隠しています。
ゴーレムに乗ったまま近寄って来て輪にした縄を私へ投げてきます。
まるでカーボーイみたいですね。
私が煙で身動き出来なければ縄に捕まっていたでしょうけど、あいにく煙は聖域の結界が防いでいます。
「土砲」と短く魔術を行使して、ゴーレムの魔石を破壊するだけの威力の調整をして打ち出します。
一度に7つの「土砲」を打ち出し海兵が乗ったゴーレムのみを破壊します。
ゴーレムが破壊され下へと落とされた海兵達は、したたかに道路へとたたきつけられて起き上がれないようです。
素早く近寄ると、闇魔術の昏睡を魔術行使します、動けなくて反撃できないような敵を拘束するには最適な魔術です。
ゴーレムの残骸の土が散乱する中に倒れて動かない海兵の7人。
直ぐに自警隊が近寄って来て、事情を聴いてきます。
「カスミ姫様であらせられますか?」
「カスミ・マーヤニラエル・ヴァン・シルフィードです、彼女達は問答無用と襲ってきました」
「そなたたちは、彼女達を拘束後自警隊へ見たまま報告してください」
「私は、執務宮へ行きます、私を襲う以上ジュヘイモスで何事か起こっていると考えられます」
そこまで言うと私は、飛空で上空へと飛空して、執務宮へ急いで帰る事にしました。
(スカートで飛空するのは、下から見られちゃいますよ by妹)
(気にしないわ、ボディスーツを着てるから素肌は見えないしね by小姉)
(自警隊の男共は目をしっかり見開いて、其れから赤面して顔をそらしたね by大姉)
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