第61話 桜草の宮(4)

 翌日は昼5時(午前10時)まで起きれませんでした。

 幸い桜草の宮の侍女たちは、私がオウレからジュヘイモスへ飛空で来たため疲労したのだと勘違いしています。

 お陰様で朝はゆっくり寝る事が出来ました。


 帰って来たのは夜11時(午前4時)頃でさすがにへとへとになって窓から部屋に戻ってきました。

 それから寝たのですが、3刻(6時間)寝れたので睡眠は十分取れました。


 食事の後飛空でオウレまで飛空しても1刻半(3時間)係るので昼7前(午前中)には着けません。

 それどころか無理してオウレまで戻っても、昼7後(午後)の実習が始まった後でしか帰り着かないでしょう。

 今日は、ジュヘイモスの町でも観光して見たいですね。

 アナベルからも養母様が昼食を一緒に食べましょうと連絡が在った事を知らせてくれます。


 朝食は軽くして貰いました、お昼を養母様が一緒に食べましょうとお誘いを受けていますので、何時もの量の朝食を食べると昼食が食べれなくなります。


 出て来た朝食はホットミルクと柔らかい食パンにブルーベリージャムとバターです。

 バターは独特の風味があって美味しいです。

 アナベルに聞くとヤグー(大型のヤギ)のバターだそうです、チーズもあるそうですが、食べる人によって好き嫌いがはっきり分かれる食べ物だそうです。


 食後のお茶の時間に、その後の帝国の通信傍受で何か分かった事が無いか調べて貰った結果を聞きます。


 『お嬢さま、まだ何も通信には入っていませんです』

 (今朝方の事件だからなぁ、未だに対応中と思うね by大姉)

 (小姉が撒いた偵察バグの画像にミオヘルンの港の様子が分かる画像が在るよ by妹)


 妹(いも)ちゃんの話の後、音声と映像が表示された。

 カモメが係留されていた桟橋を幾つかの低い屋根越しに見ている為、結構高所なのが分かる。

 遠方なので細部まで分からないが、桟橋に結構な人数が集まっているのと桟橋を取り囲むようにボートが動き回って網と思える物を使って海の中を探っているのが見えた。


 『残骸を回収しているのではと思いますです』

 (それか、原因を探っているかだね by大姉)

 (残骸を回収した後、原因究明する積りなんでしょうね by小姉)


 (と言う事は、小姉の焼き討ちをまだ知らないのね by妹)

 (そうだね、その内火のない所から火柱が立ったのだから原因ぐらい推測するさ by大姉)

 『誰がそれを行ったのかまでは分からないと思うであります』

 (ヴァン国ぐらいしか原因となりそうな国は無いわね by小姉)


 (養母様にはこの後の昼食の時に報告します by小姉)

 (執務宮にバラ撒いた偵察バグはどうなっていますか? by小姉)


 (まだ部屋を探しながら移動してるよ by妹)

 (各省の長官室に3匹ぐらい配置して欲しいの、三方向から観察すれば見落としも少なくなると思うの by小姉)

 (既に1匹虫にやられたのが居るよ、残りは29匹ね by妹)

 (リング”空間を超えた頑固な繋がり”は壊される前に神力を回収して破壊したからね by妹)

 (ただの土くれに成ってるよ by妹)


 (それって誰が監視しているの? by小姉)

 (アーカイブ室に備え付けた魔石CPUがプログラムされた通りに行ってるだけだけどね by妹)


 (あの、魔石CPUは何個位使ったの? by小姉)

 (1024個×1024個位? by妹)

 (百万個ってそんなに作ったの? by小姉)

 (うんとねぇ、6級の魔石を使うと1個の魔石の中に10級の魔石CPUが1万個分のCPUが作れるの by妹)

 (9級で16個、8級で128個のCPUが出来るよ by妹)

 (はっ、えっ by小姉)

 (まぁそうゆう事だよ by大姉)

 『妹様は天才でありますです』

 (同じ魔術回路はコピーの魔術でバンバンコピーして作ってるよ by妹)


 なんてことでしょう、妹ちゃんはアーカイブ室にとんでもない処理能力を持ったCPUを作ったようですね。

 私がホケーと放心していると、心配したアナベルが声を掛けて来た。

 「姫様いかがされました?」と心配そうに聞いてきます。


 正直に魔石の事を言う訳にはいきませんから。

 「ええ、今魔石の可能性について閃きの様な物が在ったの」あら、言ってしまってますね。

 「今後の研究対象に出来そうなので、研究するだけの価値があるか調べてみるわ」

 部屋に備え付けの机に移動すると、ベルトポーチから錬金と魔術付加の道具を出して、9級の魔石を加工して見ます。

 確かに妹の言う通り、16倍の処理能力を持った魔石CPUを9級の魔石の中に作れます。

 もっと高める余裕はありますけど、CPU間の通信や命令を各CPUへ振り分けるCPUなどを階層的に配置すると16倍の能力があると言えるでしょう。


 そこまで検証出来た所で、アナベルに昼食の時間です、と思索から呼び戻された。


 そうでした、養母様に報告する事が有ったのでした。

 身だしなみを整えると、養母様が食事をする食堂へ向かいます。

 先導するアナベルの後を付いて行きながら、養母様と話す事を整理します。


 聞きたい事は昨日の、魔薬を盛った事務官2名の事、其れからサリアと言う名のドワーフの娘に依頼した件のその後の進展ですね。

 私の報告はカモメの事ですが、どんな風に報告したら良いかしら?

 隠し事は無い方が良いですから、夜に抜け出して夜襲を掛けたと正直に言ってみましょう。

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