第41話
あれから少しずつウィル様は大きくなって一週間経った今は12歳の少年になっています。
出会った頃のウィル様だわ…御懐かしい…
「メイ…なんだか少しずつ元に戻れているようでひと安心だ。」
ウィル様はベッドの上で胡座をかき腕を組みながらうんうんと頷いてらっしゃいます。
「よかったですね。」
私は甘えん坊のウィル様がいなくなってしまって少し寂しいです。私はまだ自分より少し小さいウィル様の頭を撫でます。
ウィル様はいつも私より大きくて頼もしかったけど、こんなに小さかったのですね…
「…迷惑を掛けたな。」
「いいえ…とてもかわいかったので少し寂しいです。」
私がクスクスと笑うとウィル様は耳を赤くして俯いてしまいました。
そこから3日程経過した頃
いつも通り隣で寝ていたウィル様が突然起き上がり
私にキスをしてきました。
それは舌を差し込んでくるような情熱的なもので私は久しぶりの感覚に胸をドキドキさせてしまいます…ドキドキ…
「メイ…精が戻ってきたか確認したい…」ウィル様は私の耳元でそう囁きました。
私たちはしばらくぶりに夫婦の営みを一度すると、少し物足りなさそうなウィル様をなだめて二人眠りにつきました。
それから4日後にはウィル様はすっかり元の姿に戻りベッドで安堵のため息をついてらっしゃいます。
「…よかった…」
「ウィル様…」
ウィル様は私を優しく抱きしめて
「やはりこうでなければな…」と耳元で囁きました。
私より大きいウィル様は私をすっぽりと包んで私は見えなくなってしまいました。
「なんだ兄様戻ったのか!」ジェフリー殿下が楽しそうにおっしゃいます。
「戻った。」ウィル様は少し機嫌が悪そうです!
「アッハハハハハ!兄様怒っているのか!」
「そりゃそうだ!お前あれは傷ついたぞ!」
私はなんだかお二人のやり取りを見て温かい気持ちになるのです。
ジェフリー殿下は…ウィル様の事を大事に思っていらっしゃるわ…
ウィル様に対して…誰かが何かをしている…
まだ何も確信はない…
でも…
私はあれからジェフリー殿下とユウジ様と共に魔術師様を訪ねました。
ちょうどウィル様が5歳位の姿でお昼寝されている隙に…
「王太子妃殿下…ようこそいらっしゃいました。」
魔術師は深々と頭を下げる。
「こちらこそ忙しい中お時間を作っていただき…感謝いたします。」
魔術師様の職場にはガラスの瓶が棚に沢山並んでいて奥には膨大な量の本があり部屋の奥の奥まで続いています。
こんなに空間があるなんて…魔術師様はすごい…
彼の魔術で作られたであろうその空間は先が見えません。
瓶には色とりどりの薬品や木のみや葉っぱ、動物の身体の一部などがパンパンに詰まっていて所狭しと並んでいます。
「こんな窮屈な場所に…申し訳ございません…」
魔術師様は申し訳なさそうに空間を広げテーブルセットを出す。
わあ…すごい!!
そこにカップを並べると底からお茶が湧き上がり湯気を立てました。
ケーキスタンドを魔術師様が置くと
ポンポン!とお花が咲くように可愛らしいケーキとサンドイッチがそこに並ぶ。
「義姉様はこうした魔術は初めてですか?」
ジェフリー殿下が問いかけてこられます。
「はい。」私は目がキラキラしてしまう…!!
「くくく…兄様は独占欲が強いからな…あまりあなたを一人にはしませんでしたものね。中々兄様が与えるもの以外目にしたことはないのでしょうね。特に魔術はロマンチックだ…心を奪われるのを心配したのか…本当に兄は面白い。」
私はジェフリー殿下がおっしゃっている意味がよくわからなくて曖昧に微笑みます。
「こんな老いぼれに…光栄なことですなぁ…」
魔術師様がそうおどけると「いや、本当にすごいんだぞ。兄様は…」とジェフリー殿下が目を見開きました。
ユウジ様はそれを見て苦笑いされています。
男性陣は皆さん仲良しですのね。
私は微笑ましくてフフフ…と笑います。
「王太子妃殿下どうぞこちらに…」
魔術師様がイスをひいてくださいます。
「ありがとうございます。」私はそこに腰掛けました。
いい香り…不思議…魔法で淹れたお茶ね…
…おいしい…すごい…!
私は感動してしまいホゥ…とため息をつきました。
「王太子妃殿下…私に御用とは一体…?」魔術師様が尋ねます。
私は
「人の皮が表紙の本を見せていただきたいのです。」そう伝えました。
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