第146話 北オミラン王国
北オミラン王国の王都に近付いたレン達。
「ストーップ! サンディ、ここいらで、兵を呼んでおくか」
レンはみんなを停止させて、サンディに尋ねた。
「そうですね。始めての訪問です。国王の護衛が8人と8匹だけで他国に訪れるのは軽く見られます」
「何匹くらい呼べは良い?」
「多ければ多い程良いでしょう」
「じゃあ3万ぐらい?」
「さ、3万! 多過ぎます! そ、そんなに呼べるのですか! コボルト兵はいったい何匹いるのですかああああああ」
「ん〜、何匹くらい?」
レンは隣にいるワイマラナーのコボルト・アハトとジャーマンシェパードドッグのコボルト・ドライツェンに尋ねた。
「ガフガフガフガフ」(騎士じゃ無い者も含めるとワン)
「わんわん」(5万くらいかなワン)
「5万くらいらしいよ」
「ご、ご、5万?! 何でテイマーのレン様が知らないんですか?」
「あはは、じゃあ1万ぐらいで良いか?」
「練度が高いコボルト兵を召喚して下さい。軍の行進だけで圧倒しましょう」
「了解だ。召喚!」
レンはコボルトの騎士達1万匹を召喚した。
「お? 召喚したな。俺の部隊集まれ!」
フェルダーがコボルトに声を掛けると。
「弓術騎士団集合!」
「魔法師団集合!」
「槍術騎士団集合!」
エリー、ダリア、ゲイルも距離を取ってそれぞれ呼び掛けた。
端数はあるが、大体フェルダーの剣士騎士団3千匹。弓術騎士団2千匹。魔法師団2千匹。槍術騎士団3千匹ぐらいだ。
一斉に列を作って無言で待機する1万匹のコボルト達。訓練が行き届き練度が高いコボルトの騎士達だ。
「ふむ、最小限の物音で、声1つ立てないとは流石ですね」
大将軍ヴァイシュラも感心する練度だ。
「じゃあこのまま駆け足で王都に向かうか」
「ちょ、ちょっと待ってください。駆け足で進んだら襲撃と間違うかも知れません。私が先触れで行きますので、ゆっくり行進して来てください」
「分かった。サンディ、頼むぞ」
サンディは騎竜を急がせて、王都に走った。
北オミラン王都前でアレス王国軍を待つオミランの兵士達。
「ふぁ〜。本当に今日来るのかよ」
「だなぁ、1万の軍が王都に向かっている何て聞いてないぞ」
「多めに言ってんじゃねえの? 千人を1万人とかさ」
「だよなぁ」
「急に集合させられてもなぁ」
「仕事が残ってるよな」
急遽アレス王国軍を出迎える為に集められた騎士達は、不平不満をブツブツ言いながら、ダラダラと並び始めた。
ザッ! ザッ! ザッ! ザッ!
その時、規則正しい大勢の足音だけが聞こえて来て、アレス王国軍1万匹のコボルト兵が姿を表した。
「きゃあ、可愛い」
「なに〜! あのモフモフの兵は?」
「モフりた〜い」
ざわめく女性の騎士と、
「何だ!」
「あ、あれがアレス王国軍………」
「す、すげぇ。魔物のようだが、あんなに大勢いるのに無駄口1つ囁く奴もいねぇ」
「何だあの迫力は!」
余りにも練度が異なるアレス王国軍の行進を、唖然として眺める事しか出来ない北オミランの男の騎士達。
「全体! ストーップ!」
ザッ! ザッ!
フェルダーの号令でコボルトの騎士達は一糸乱れぬ動きで行軍は停止した。停止したコボルト兵達は微動だにせず、北オミランの騎士達を見詰める。
タッタッタッタッタッタッ……。
王都門前で出迎える、呆然と立ち尽くす騎士達の前に騎竜に乗って駆けつけたフェルダーとヴァイシュラ。
「出迎えご苦労! 私がアレス王国大将軍ヴァイシュラだ」
「同じく将軍フェルダーだ!」
「ヴ、ヴ、ヴァイシュラ! さま?」
「本物か?」
「あの噂は本当だったのか!」
「まさかエチラル王国の王女で軍神のヴァイシュラ様がアレスの大将軍になるなんて! し、信じられない………」
「な、なんて美しいんだ………」
「綺麗だぁ………」
誰もフェルダーの名前は聞いていない。ヴァイシュラの美しさに夢中に見惚れていた。
注目の中でヴァイシュラは騎竜から飛び降りると、「おお!」とか「はあ」とか「美しい」とざわめきが広がった。
「我らアレス王国の国王レン様がお見えだ。責任者は
フェルダーも騎竜から飛び降りた。
「おい! 聞こえて無い訳ないよなああ!」
「は、は、は、はいいいい。私が、私が出迎えの責任者、将軍の………」
ヴァイシュラに見惚れていた北オミラン王国の将軍が慌てて前に駆けて来た。
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