第128話 おろち

 レン達はアレス王国に戻って来た。


「お帰り〜! って、また女子が増えてるじゃん。どういう事?」


 とヘレナの第一声。


「ヘレナ王妃様ですね。始めてお目にかかります。御尊顔を拝顔する機会をいただき恐悦至極で御座います。この度、陛下の軍師を務める事になりました。サンディと申します。お見を知りいただきたくお願い申しあげます」


 サンディは跪き、ヘレナに丁寧に挨拶を行った。


「あ、そう。軍師ねぇ。まあ、ミノス王国では無血に近い状態で国を取り戻したのは、知ってるわ。その作戦の立案をしたのが貴方なのかしら?」


「立案なんて、とんでもございません。行き当たりばったりの稚拙な作戦で御座います。しかし、ヘレナ王妃の持つ機密情報を元に作戦を立てれば、必ずアレス王国の為になると確信しております。後程、その辺りのご相談をさせていただきたくお願い致します」


「軍師たるもの、情報の価値は知っている事は評価出来るわ。後で話をしましょう」


(ふぅ、何事もなくて良かったよ。一瞬変な汗が出たよ)


 と安堵するレンの後ろで、


「ガフガフ」(腹減ったワン)

「ウォンウォン」(我慢しなさいワン)


 呑気なワイマラナーのコボルト・アハトを嗜めるボルゾイのコボルト・丿インだった。


「そう言えば、エマの辺境に大蛇おろちが出現したわよ」


「おろち!」


 ヘレナの言葉に驚くレン。


「へぇ、おろちねぇ。これは私の出番かしら」


 とロジーナが言うと、


「良し、退治しに行こう」


「ワンワン」(マスターは駄目ワン)

「ワォン」(危ないワン)


 ゴールデンレトリーバーのツヴァイとフラットコーテッドレトリバーのフィアがレンを止めようとする。


「ガウガウ」(マスターが行くならワン)

「ガフガフ」(俺達も行くワン)


 ドーベルマンのドライとワイマラナーのアハトは同行する気だ。


「おろちはAランクの魔物だが、個体によってはSランクの奴もいる。危険だぜ」


「そうねぇ。冒険者の頃より腕が上がっている私達でも危ないかもね」


「私達も行くわ」


 フェルダー、ダリア、エリーが発言し、ゲイルも頷く。


「兎に角、レンは駄目よ。Sランクかも知れない魔物なんて危険過ぎるわ」


 ヘレナもレンを止めるが、


「いや、Sランクの魔物かも知れないと聞いたら、ますます行きたくなったよ。一目見てみたい」


「止めてよ」


「まあ、まあ、レンも男って事だ。行かせてやろうぜ。しっかり守ればいいさ」


「有難う、だけどフェルダー達はここに残すよ。次の戦いに備えて貰わないといけないしね」


「なんでだよ! 元冒険者としては俺も大蛇おろちと戦いたいぜ」


「そうだそうだ。私達まで置いていくなんて言わないわよね」


「久しぶりのでっかい獲物だわ、何が何でも私も行くからね」


 フェルダーとダリアとエリーがそう言い始めて、ゲイルも頷いている。


「じゃあ、もしものため、私も陛下の護衛にご一緒します」


 サンディまでついてくるらしい。


「じゃあ、私も」

 とヘレナ。


(どうぞどうぞw)


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 上島竜兵さんの御冥福をお祈り申し上げます。

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