第96話 出撃準備
「ちょっとぉ! あのエロ王女はいつ帰るのよ」
「知らないよ。まさか、帰れとも言えないし。謁見は終わったし、国交樹立と通商条約は、配下の者に任せて帰っても良いと思うんだけどね」
レンはヘレナの言葉に返答する。
「あの女、綺麗な顔してるけど出戻りよ」
「出戻り?」
「今のミノス国王が侯爵の時、国王に嫁入りしたのよ。その後、国王が死んで侯爵が国を乗っ取ったわ。一説によるとあの女が国王を毒殺したと疑いがあるそうよ」
「うへぇ、そうかぁ」
「この国に侵入して身体を武器にレンを篭絡して、国を奪うつもりかもよ。気を付けてよ」
「ポンコツでそんなふうには見えないけど、女は怖いね。傾国の美女ってやつか」
「ポンコツ……。聞いてた話とギャップがあり過ぎるけどね。もっと妖艶で深謀遠慮な女だと思ってたけど。確かにポンコツね」
「まあ、ポンコツの事はどうでも良いけど、ヒダ王国に攻めようとしている時に、王女が来たお陰で攻めるタイミングは逸した事は確かだ」
「ヒダ王国の北にあるエマ王国から密書が届いているわよ。もう時期王城にも届くと思うわ」
テイマーのヘレナはいつもネズミの眷属を使って国の動向を監視している。
「ほう、共同でヒダ王国を攻めようと言う内容かな」
「恐らくそうでしょう。ヒダ王国は、今まではコジマ公爵のお陰で背後の憂いなく戦争出来たのに、背後に敵国が突然現れたのよ。エマ王国からすれば千載一遇のチャンス。憎き仇敵ヒダ王国を倒すのは今だと考えているはずよ」
「俺達だけでもヒダ王国を倒せるが、次の相手の戦力も消費して欲しいからね。エマの誘いに乗るのも手だな」
「エマの戦力を見る。またとない機会でもあるわね」
「良し、エマの密書を見てから行動は決めるとしても、戦争の準備はしておこう」
ヘレナもいつの間にか、レンの野望に毒されて戦争肯定派になっていた。
恋は盲目って言うからね
その後、レンはロバートを呼んでヒダ王国への出撃の準備をさせた。
アレス王国の兵は常備兵。地方の農村や街から徴兵したり、傭兵を雇わなくても良く。訓練が行き届いた精強な兵だ。
そして、元テイマーズギルドのサブマスターのヘレナ、元Bランク冒険者パーティ『朝焼けの光』の4人(フェルダー、エリー、ダリア、ゲイル)と大工のバーク、薬師アンナの夫妻、錬金術士のジュリア、商人のイアンとカミラ、元Aランク冒険者で解体士のロバートが王都について来た事で分かるように基本的に土地に根付いていない事も強みだ。
この世界の人々は半農半武、土地の有力者が力を持って村から街、街から都市、都市から国へ領地を広げて行くが、本拠地は変わらない。
自分の生まれ育った土地に愛着を持ち、一生生まれ育った土地で生きていく者が殆どだ。
だが、レンの重臣達はレンとコボルト達について来てくれる。
それから元傭兵のカルマンとラバンも同様だろう。側仕えのロジーナ、プリシラ、オリビアもコボルトの後をついてくるはずだ。
これから、各地を征服していく為、一つののところに留まらない予定のレンにとっては心強い仲間達だ。
元騎士団団長のマディソンと元衛兵隊隊長のネイサンはついて来るのか怪しいところだが、王都まではついてきた。この先どうなるかは分からない。
「ガフガフ」(ねぇお腹空いたワン)
「ウォン」(我慢しなワン)
レンを見詰めて甘える護衛のワイマラナーのコボルト・アハトと嗜めるボルゾイのコボルト・ノイン。
アハトがそう言うので、レンはアハトの頭を撫でてヘレナに言う。
「良し良し、夕飯にするか。話はまた明日ね」
「はいよ。じゃ、夕飯食べて残務を片付けて来るわ」
ヘレナが執務室を出ていった。
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