第90話 遭遇
「アレは何かしら?」
ミノス王国王女リリス御一行は、アレス王国に入り馬車で移動していた。
馬車の中から外を眺めていたリリスは、巡回しているコボルト達を目にした。
巡回していたコボルトは下記の5匹だ。
バセットハウンドのコボルト。
ブリタニースパニエルのコボルト。
ジャックラッセルテリアのコボルト。
アイリッシュセッターのコボルト。
ブルテリアのコボルト。
「何でしょう? 犬の魔物の様ですね」
「なんだか、ちっちゃくて、フワフワモフモフの可愛い魔物ね」
「あ! 前方からゴブリンが!」
御者が叫ぶとコボルトに襲い掛かる 数十匹のゴブリンが見えた。
「きゃあ! 可愛い魔物が危ないわ。早く助けてあげて」
リリスの叫びを聞き、並走していた護衛の騎士が駆け出したが………。
コボルトが腰のマチェットを抜き、倍以上の数のゴブリン達を瞬く間に殲滅すると、マチェットを納刀し、解体用ナイフで手早く解体を始めた。
「瞬殺かよ」
「つ、強い………」
「しかも解体まで……」
「手慣れてる……」
騎士がコボルトの強さに唖然とする。
「まあ、返り血を浴びて、せっかくのモフモフが………、え?」
コボルト達はお互いにクリーンの生活魔法で元のフワフワ&モフモフに戻っていた。
「生活魔法のクリーンですな」
「まあ! 何と言う事でしょう。こんな綺麗好きの魔物がいるなんて! 信じられないですわ」
馬車がコボルト達に近付くと解体していたコボルト達は、解体用のナイフをしまい、素早く整列する。
「ワン!」(敬礼!)
バセットハウンドのコボルトの号令で一斉に敬礼するコボルト達。
コボルト達は微動だにせず、凛々しい目で馬車を見詰める。
リリスの護衛の騎士達も馬上から略式の敬礼で返した。
「騎士だな」
「騎士だね」
「しかもかなり練度が高い騎士だ」
「魔物がこれ程の練度があるのは、信じられない」
王女の護衛の騎士達はコボルト達の練度の高さに驚く。
「ちょっとお礼をするから止めなさい」
リリスが馬車を止めようとするが、
「リリス様、お止めなさい。先を急いでいるのです。止まらないで進みなさい」
お目付役の爺やがリリスを止めて、御者に先を急がせる。
「急いでいるからこそ尚更。お礼はするべきですわ! お礼にモフモフを──」
リリスは馬車を飛び降りようとするが、爺やに阻止される。
「リリス様! モフモフはお礼ではありません」
「では、抱っこして撫で撫でを──」
「リリス様! それもお礼にはなりません」
「じゃあ、じゃあ………、ぎゅっとだけでも──」
「リ・リ・ス・さ・ま!」
「は、はふぅ………。ああ、モフモフがぁ、モフモフが離れて行くぅ」
馬車はコボルト達から離れて行き、リリスは馬車の後ろの窓に釘付けになっていた。
「きっと王都にも同じ種族の騎士達がいるでしょう」
「そ、そうね。ああ、楽しみですわ。どんなモフモフがいるのかしら」
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