第75話 大工のコボルト

「そう言えば、巡回のコボルト達の宿舎が必要だな」


「ウォン!」(そうだワン)


 レンの独り言に答えるボルゾイのコボルト・ノイン。


 レンは独り言は喋らない。コボルト達が返事するので独り言にならないのだ。そのかわりコボルトと喋る変な人とは思われる。


 痛し痒し……。


 それはそれとして……。


「200匹ぐらいいるからなぁ。半年後には1,000匹ぐらいになるし……」


「せ、1,000匹!!!」

 ネイサンが驚く。


「そうだよ。コボルトは多産だからねぇ。………良し! ゼクス達を呼ぼう」


「ガフガフ」(それが良いワン)

 ワイマラナーのコボルト・アハトが答える。


「召喚!」


 領主の館のホールに現れた捻じり鉢巻の偉丈夫のコボルト達。手には金槌や鉋、鋸などの大工道具を持っている。


「アフアフ」(お呼びですかいワン)

「ウワンウワン」(任せてワン)


 アイリッシュウルフハウンドのコボルト・ゼクス。グレートデンのコボルト・ズィベンが現れた。


 後ろには、ニューファンドランドのコボルト。ナポリタン・マスティフのコボルト。セントバーナードのコボルト。グレート・ピレニーズのコボルト。レオンベルガーのコボルト。バーニーズマウンテンドッグのコボルト。ジャーマンシェパードドッグのコボルト………。


「あー、俺が次の都市を制圧するまでに、騎士団の宿舎を潰してコボルトの宿舎を建設してくれ。1,000匹程度住めるようにな」


「アフアフ」(任せてワン)

「ウワンウワン」(すぐ出来るワン)


返事をするとホールを出ようとする大工のコボルト達。


「おい、場所が分からんだろ?」


「アフアフアフアフ」(その辺のコボルトに聞くワン)

「ウワンウワンウワン」(大丈夫だワン)

「わんわん」(匂いで分かるワン)


「まあまあ、ブル! 案内してやれ」


「わっふぅ!」(このブルにお任せワン)


「わんわん」(こっちだワン)


「わんわん」(ブルってワン)

「わんわん」(もしやワン)

「わんわん」(名前?)


「わふぅ」(ふふん、分かった?)


「わんわん」(名前を貰ったのか!)


「ああああ、愛称って言ったろう」


「わんわん」(愛称って言う名前ワン)

「わんわん」(羨ましいワン)


ブルと大工コボルトの会話とは別に、ゼクスとズィベンも土佐犬のコボルト・エルとアハト、ノインと会話していた。


「ガフガフ」(コイツも名前を貰ったワン)

「わふぅ、わわんわん」(エルと言う名前だワン)

自慢気のエル。


「アフ!アフアフ」(おお!やったなワン)

「ウワン!」(凄いワン)


「あああああ! わんわん煩い! サッサと行けええええ!」


「わわーん!わんわんわんわん」(マスター! 次の都市には俺も行くワン)

そう言ってセントバーナードのコボルトがレンに抱きついて来た。


「良し良し、35匹の中の一匹だもんなぁ」

レンはセントバーナードのコボルトの頭を撫でる。


「わんわわんわん」(俺も行くワン)

ジャーマンシェパードドッグのコボルトも決意の目で訴える。


「はぁ、仕方ないね。宿舎はきっちり仕上げるんだぞ」


「わーん」(やったーワン)

「わわんわんわん」(やったるぜワン)

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