第63話 辺境の街の門前にて
レンは騎竜であるドラッヘに乗って辺境の街に急ぐ。並走するのは、ドーベルマンのコボルト・ドライとボルゾイのコボルト・ノイン。
レン達は途中何事も無く、最速で辺境の街に着いた。
そして、門の前の行列に並ぶ。
(はぁ、俺って何してんだろ? 襲撃に来たのに、つい並んじゃうなんて)
「はい、次の人。身分証出して、どんな用事でこの街に来たのかな?」
レンの順番が来て門番に話し掛けられた。
「あ〜、隣りの村の領主です。この街の領主に会いに来ました」
(まあ、間違ってはいないはず)
「な、………魔物!」
「コイツら綺麗ななりだけど、コボルトじゃないか?」
「コボルト……。あっ、隣り村の!」
レンの左右に並ぶドライとノインを見て驚く門番。
「ちょっと待ってくれ。領主に確認を取って来る」
「ちょっと待ってくれ? 隣り村の領主に初めて会ったのに、随分馴れ馴れしいね」
「ま、待って下さい」
騎竜ドラッヘの上から見下ろすレンの表情を見て言い直す門番。
「領主に確認は行かせないよ。この街の領主が俺の領地に宣戦布告したからね。黙って通すなら見逃したが、あ、一人走って行きやがった。ノイン、斬って来い」
「ウォン!」(了解だワン!)
ノインは素早く門番達を擦り抜け、領主の元へ走って行く門番に追い付き、マチェットで首を斬り落とした。
「し、襲撃だああああ!」
門番の一人が大声を出して仲間を呼び、門番達は槍を構えてレン達を取り囲んだ。
ドライがマチェットを抜いて不敵な笑みを浮かべて身構えた。
「あ〜あ、あまり殺したくなかったんだけど仕方ないね。戦争中だからね。御免よ。恨むなら領主を恨みな。召喚!」
レンは門番達にそう言うと300匹のコボルトの騎士を門の中に召喚した。
「ガフガフ」(待ってましたワン)
「バウバウ」(任せてワン)
「アフアフ」(マスターに無礼ワン)
ワイマラナーのコボルト・アハトとシベリアンハスキーのコボルトフンフ、アイリッシュウルフハウンドのコボルトゼクスが、現れるや否やレンを取り囲む門番達を、マチェットで斬り刻み槍で突き飛ばした。
「武器を抜いて向かって来る奴らだけ倒せ! 後は付いてこい」
レンはコボルト達にそう指示すると、騎竜ドラッヘの腹を蹴り、騒然とする門の中から領主の館へ走り出した。
レンに並走するドライとノイン、後を追う300のコボルトの騎士達は街中を領主の館に向かって疾走する。
「吠えろ!」
「ワオーン!」
「ウォーン!」
「ガウー!」
レンの指示でコボルト達は思い思いに吠え捲ると、何事かと道行く人達は両脇に避けて行く。
「なになに?」
「きゃあああ! 可愛い!」
「何かの宣伝?」
ワタワタして避けられなかった人達には、ぶつからないように避けながら突き進むレン達。コボルトの波に飲み込まれてあたふたする街の人達。
「スピード勝負だ。一気に行くぞ!」
「ウォーン!」(スピードなら任せてワン)
ノインがレンに応答し、走る速度をあげると、300匹から足自慢のコボルト達が抜け出て来た。
「わんわん」(俺が一番乗りだワン)
グレーハウンドのコボルトがノインを抜かす。
「わんわん」(俺だって速いワン)
「わんわん」(俺だワン)
「わんわん」(負けないワン)
「わんわんわん」(ここが見せ所だワン)
「わんわん」(やったるワン)
サルーキのコボルトが、スルーギのコボルトが、ダルメシアンのコボルトが、ビズラのコボルトが、ウイペットのコボルトがノインと並んでレンの前に躍り出た。
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