第48話 ゴブリン
「なぁ、この村はゴブリンに襲われて廃村になったよな。その後、冒険者ギルドでゴブリンの調査をしてるって聞いたんだが、調査結果はどうだったの?」
レンは新たにハンターとして雇った冒険者達に尋ねた。
「いやぁ、あんまり真面目にやってなかったみたいですよ」
「はあ? 村が襲われたのに?」
「ええ、ギルドマスご贔屓のパーティが狩りをしながら調査してると言ってましたが、どう考えても狩りしかしてないように見えましたね。狩りだけをして、やってもいない調査費用も割増で貰ってたみたいです」
「ナニソレ? 誰が調査費用貰ってたの? そいつらに調査継続させよう」
「いませんよ」
「なんで?」
「この前の戦闘で矢を受けて死にました」
「ああ、ギルマスについてた奴らか。なるほどね」
レンはふと隣りで寝そべるゴールデンレトリーバーのコボルト・ツヴァイを見る。
「ワン?」(なにワン?)
「ツヴァイ達は毎日狩りに行ってるよね。ゴブリンの大きな群れって見てない?」
「ワンワワン」(見てないワン)
秋田犬のコボルト・アインスはアンナの元へ行ってる。
シベリアンハスキーのコボルト・フンフはイアンとカミラの商会へ。
アイリッシュウルフハウンドのコボルト・ゼクスとグレートデンのコボルト・ズィベンはバークの元で大工の修行中。
ゴールデンレトリーバーのコボルト・ツェンはジュリアの元で錬金術の修行をしている。
そのため、最近レンと一緒に行動しているのは、ゴールデンレトリーバーのコボルト・ツヴァイとドーベルマンのコボルト・ドライ、フラットコーテッドレトリバーのコボルト・フィア、ワイマラナーのコボルト・アハト、ボルゾイのコボルト・ノインの5匹だ。
領主の屋敷にもその5匹が護衛も兼ねてレンと一緒に住んでいる。
「だよなぁ、異常事態があれば報告をくれるよなぁ」
「ワォン!」(そうだワン)
「ガウガウ」(何かあれば教えるワン)
フィアとドライは当然と言う顔で答える。
「ゴブリンは相変わらず沢山出るけど、4〜5匹の小規模な群れが殆どで、この周辺で村を壊滅させるほどの群れなんて見た事もないよなぁ」
「ウォンウォン」(見た事ないワン)
「ガフガフ」(俺も見ないワン)
ノインとアハトも知らないようだ。
そんなレンとコボルト達の会話を見ている冒険者達は微妙な顔でレンを見ていた。
「この人、本当にコボルトと会話してるよぉ」
「領主様って………」
中にはレンの事を痛い人を見る目で見ている冒険者もいる。
「取り敢えず、狩り行ったときに変わった事があったら教えてくれ」
「ガウ!」(了解だワン)
「ワォンワォンワォン」(みんなにも伝えておくワン)
ドライとフィアがレンに答えて、ツヴァイもアハトもノインも頷いている。
そんな話をしていた数日後の事。
「ワンワン」(仲間がなにか見つけたワン)
ツヴァイがレンの執務室に入って来た。
レンの護衛をしていたフィアとノインがツヴァイに尋ねる。
「ワォンワォン?」(何かって何だワン)
「ウォンウォン」(喰えるモノかワン)
「ワンワンワン」(穴ワン)
「ワォン? 」(穴?)
「ワンワンワンワンワン」(中にゴブリンがいたらしいワン)
「あ〜、俺が直接ツヴァイに聞くからフィア達は静かにしてね」
(ワンワン煩いよ)
「ちょっとその穴に行ってみるか?」
レンが執務室を出ようとするとツヴァイがレンを止める。
「ワンワンワンワンワンワンワンワン!」(マスターは危ないから駄目だワン)
「ワォン!」(マスターは弱いワン)
フィアもレンを止める。
「ウォン」(ダメ?みたいなワン)
ノイルはどうしていいかわからないようだ。
「え? ここは主人公が行くパターンだろ」
「ワォンワォン」(ちょっと待ってワン)
そう吠えるとフィアは執務を出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます