第47話 領主とギルマス2

「ふむ、薬草は喉から手が出るほど欲しいが………。ギルマスよ、ノズチを倒し、大量の薬草を持ち、開拓村に砦を作り、50人の冒険者を殺せる勢力を持つ者がただのFランク冒険者の訳が無かろう。後ろ盾があるとは思わないのか?」


 ギルマスは領主の言葉に一瞬で大量の汗が滝のように流れるのを感じた。


「ま、まさか! コボルトテイマーのFランク冒険者ですよ! そんな? うう、そう言えば、おかしかったか………」


「はぁ、ずる賢いお主がとんだ失敗をしたものだな」


「領主様、レンの後ろに誰がいるのでしょうか? まさか、領主様ではない、…ですよね?」


「ん、儂ではないが、知らなかったのか? 知らないで手を出したか………」


「は、はい………」


(なんだ、なんだ、あの糞ガキに後ろ盾があったのか? そう言えば、ただのFランク冒険者が砦を作るなんて考えられないな)


「レン様は、………王子だ。後ろ盾は国王だな。後ろに国があると言っても良いだろう」


「へっ???? 領主様、騙されていますよ。レンが王子の訳がない!」


(王子? 嘘だろう。王子だったら俺は反逆者になっちまうじゃないか。嘘と言ってください。領主様!)


「おいおい、いくらなんでも、寄親の子息を間違えるはずが無かろう。小さい頃にも会ってるし、ついこの間も辺境の開拓村の領主になる事を知らせに来て、会ったばかりだぞ」


「はぁ?」


「つまり、お主は弱い冒険者が高価な素材と大量の薬草を持っているのを知り、無理矢理力任せに奪おうとした」


「うっ、そ、それは………」


「ところが、実際は王子を盗人呼ばわりした。その上、拘束しようしたら反撃された。それを逆恨みして、徒党を組み王子の所領に盗賊行為を仕掛けようとして成敗された。馬鹿な盗賊の親分だ」


「し、知らなかったのです」


「お主がレン王子を盗賊の指名手配をしないで良かったよ。証拠もないのに一国の王子を盗賊として手配したら、お主は勿論。この街も儂も危なかったぞ。お主は王子を極悪人呼ばわりしてたからなぁ。まあ、独り占めしたいお主はそんな事しないか」


「そんなぁ、レンが王子なんて冗談ですよね」


「儂がお主の口車に乗って辺境の開拓村に領軍を派遣したらどうなっていたと思う? 勝っても負けても地獄だぞ。負けたらそこまでだし、勝ったら王に弓を引いた事になるから、次は国軍を相手にする事になるだろう」


「う、嘘、ですよ、ね………」


「もういいだろう? お主には随分儲けさせて貰ったが、流石に国を相手に喧嘩は売れんな」


「知らなかったのです。どうか見逃して下さい」


「おいおい、王子にこれだけの事をして、ここで俺が見逃せると思うのか? 国王になんて申し開きをするんだ? いい加減に諦めろ。往生際が悪い」


「うわあああ」


 脱兎の如く逃げようとするギルマス。


 しかし、お付きの騎士たちが領主の執務室の扉の前にいるのだ。


 ギルマスは騎士達に直ぐに捕まり、領主の前に引き立てられた。


「ギルマス、沙汰は国王に報告後に決まるだろう。簡単に死ねると思うなよ。此度の件は儂も危ういかも知れん。これからレン王子にお詫びに伺い、お主の全財産では済まない賠償をせねばならぬのだ」


 こうして、この街の冒険者ギルドは全滅。一時休業となったのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る