第46話 領主とギルマス
冒険者ギルドのギルマスは大至急の案件だと衛兵に捩じ込み、辺境の街の領主に面会の許可を取り付けた。
「大至急の案件と聞いたが何があった?」
領主の執務室に通されたギルマスに冷静に問う領主。
「大変なのです。大事件です。この街を拠点にしている冒険者、総勢50人が殺されました。直ぐに領兵を派遣して下さい」
「な、なんと! それは大変なことだな。何処に派遣するのだ」
「辺境の開拓村です。そこに砦が作られていて、数百のコボルトを従える極悪人が立て籠もっているのです。冒険者ギルドの総力を持って討伐しに行きましたが、残念ながら力及ばず返り討ちに合いました」
「辺境の開拓村なぁ………。その極悪人の名はなんと言う?」
「レンです。コボルトテイマーのレン」
「辺境の開拓村、レン………」
何処かで聞いた事がある組合せに、領主は脇に控える執事を見た。
すっと音もなくスマートに近づいた執事は、領主の耳元で囁く。
「レン王子ですな」
「む、そ、そうか」
領主はギルマスに顔を戻した。
「50人で討伐しに行くとは、その者は相当悪い事をやったのだろうな?」
直ぐに領兵を派遣して貰えると思ったギルマスは、領主のトーンが変わった事に疑問を覚えるが、領主に縋り付くしか無いので、会話を続ける。
「は、はい。この街の冒険者ギルド内でCランク冒険者に怪我を負わせ、冒険者は再起不能になっております」
「再起不能になぁ。何もなく急に争う事は無かろう。何か理由があるのではないのか?」
ギルマスは思ってもみない方向に話が移って行くので、領主のメリットを提示する方針に変更する事にした。
「実は、レンはEランク冒険者なのに、ノズチの皮を売りに来ました。大きな皮でした。あの大きさからすると胃袋も食道も大きく、相当価値が高いモノと推測出来ますが、皮しか売ろうとしませんでした」
「胃袋と食道は自分で使うんじゃないのか? それで?」
「ん? レンを拘束し胃袋と食道の在り処を吐かせれば、胃袋と食道を手にし、莫大な金が手に入ります」
「拘束したのか?」
「いえ、ノズチはEランク冒険者には討伐出来ないAランクの魔物です。盗んで売りに来たに決まってます。拘束さえ出来れは白状させられたのですが、抵抗されて逃げられました」
(この男、頭がおかしいのか? 王子に濡れ衣を着せて捕まえようとするとは………)
「貴族の子息が配下の騎士が討伐した魔物を冒険者ギルドに持っていく事があるよな。儂も子供の頃、箔をつけるため良くやったが、それは盗んで売っていると思われるのか?」
(ん? 何だか話がおかしくなってきたぞ)
そう思ったギルマスは領主へ更にメリットを提示する事にした。
「領主様、レンは大量の薬草を隠し持っています。辺境の開拓村を攻略すれば薬草もノズチの素材も手に入れられるのですよ」
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