第45話 VS冒険者ギルド3

「じゃあ、抜けた人は向かって右側に退けて下さい」


 ヘレナの指示で移動する冒険者が半数ぐらいいた。


 冒険者の移動を見届けるとヘレナは非情な命令を下した。


「はい。説得は終わりです。残った人は我が領に盗賊行為を行ったので、強制排除します。準備! ………放て!」


 ヘレナの「準備!」の掛け声で100匹のコボルトが防壁の上に弓を構えて現れた。


「え!」「な、なんだ!」「まさか!」

「や、止めてくれ」「撃たないで!」

「俺も抜ける」「抜けるってば」


 そして「放て!」の合図で矢を一斉に放つ。土砂降りの雨のように降り注ぐ矢が次々と冒険者達を貫く。


 コボルト達は「止め」の号令が出るまで、二の矢、三の矢を放つ。


「止め!」


 ヘレナの号令で矢を射つのを止めて、矢を構えたまま、敵を睨むコボルト達。


「あれ? ギルマスがいないわ。あいつ、一人で逃げたのね」


 ギルマスはいつの間にか、一人で逃げていた。


 その後、巨大な門が開いた。


 その門から現れたレンとコボルト達。レンは、矢が突き刺さった冒険者達で生き残った者をコボルト達に介抱させると、戦いを抜けた冒険者達の元へ向かった。


 レンの周りにはアインス、ツヴァイ、ドライ、フィア、フンフがいて、マチェットを構えて護衛していた。


 コボルト達を見て冷や汗をかき、後退る冒険者達にレンは優しく話しかける。


「元冒険者の皆さん、貴方達は真実に気付いて戦いを回避した。勇気があり正しい心の持ち主と判断します。ヘレナの言葉通りこの村のハンターとして歓迎します」


 冒険者達はついさっきまで同僚だった者が横で死んでいるのを見ているので、気持ちの整理が出来ていないが、命が助かった事は分かりホッとしてレンの後についていく。


 矢が刺さった冒険者達の中で生きている者は、矢を抜いて治療を行い。遺体も回収して、コボルト達は戦闘の現場の後始末を行う。


 今回の戦闘の結果は以下の通りとなった。死んだ冒険者は15人。矢は刺さったが致命傷を免れて介抱された冒険者は5人、戦闘を回避して冒険者を辞めた者が30人。逃走した者(ギルドマスター)1人。





「馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な」


 ギルマスは隠していた馬に跨り一人街へと逃げ帰っていた。


 逃げ足だけは早いのだ。


 ヘレナの「準備!」の合図でコボルトが防壁の上に現れた瞬間負けを悟り、「放て!」の号令の時には、唖然として動けない冒険者達を盾にして逃げた。


「コボルトテイマーのクセに砦なんて築きやがって、明らかに軍に相当する兵力を持っていやがる。これは領軍を派遣して貰わないと対抗出来ないな」


 そう考えてギルマスは辺境の街の領主の元へ直行した。

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