第17話 Dランクへの昇格

 村に戻って討伐の報告をすると村は大騒ぎになってみんなからお礼を言われた。


「ありがとう! 本当にありがとう! これで安心して過ごせるよ」

「犠牲になった奴らもこれで少しは報われる。ありがとう」


 その日はまた歓待を受けて翌朝に村を出た。そして夕方にラヴェンナについてギルドに報告して報酬をもらった。なんと金貨二枚だ。すごい金額だけど、それだけ命懸けだということだ。


 お金は命には替えられない。だけどお金がなければ生きていけない。冒険者は生きるか死ぬかの紙一重の仕事だ。たしかに冒険者はガルムさんの言う通り、一攫千金狙いのろくでなしなのかもしれない。

 でも、この世界ではこうやって生きていくしかないんだ。俺たちもそうだ。


 でも、Dランクの依頼は確かに危ない。危なすぎる。これを続けてCランクになるなんて、Bランクのタイラーさんたちはすごいんだな。それにあんなにいつも明るくふるまってるなんて、きっと心が強いんだな。本当にすごい。


 その日の夜、俺とハルノさんは今後のことで話し合った。今後どうやってオークを倒すかだ。

 まずハルノさんの魔法攻撃がオークにはまるで歯が立たなかったこと。これは今までの遠距離から数を減らすという戦術が通用しないということだ。

 次にオークの力は思っていたよりもかなり強いということ。魔族は魔力を身体強化に使うと聞いてたけど、あんなでかいこん棒を軽々振り回すほどとは。実際に目の当たりにしてそのすごさがわかった。

 そして、今の俺たちの実力だと一体ずつしか倒せないということだ。

 なので危なげなく依頼を達成するには、二人がかりで一体ずつやるしかない。

 だから今後の依頼は当分オーク単体の依頼を受けることにした。



 Dランク依頼を受け始めて三週間が過ぎた。

あれから三度のDランク依頼を受けた。オーク単体の依頼というのはなかなか無くて、五日に一度あるかどうかだ。まあ、魔族がまだそんなにここにきていないというのはいいことだ。


 魔族は北から来るらしい。北には魔族領とよばれる魔族の巣窟があるらしい。魔族領は魔力が強い場所で、魔族や魔物はそこで生まれる。人間を求めて南下してくるということだ。魔族は魔物を捕食する。魔物は逃げるように南へ降りてくる。そして魔族もやってくる。

 魔族は魔物よりも魔力を持った人間をより好んで捕食する。また、なんと人間の女性との交配により魔族の子供を生ませるらしい。なので捕まった女性は子供を生んで殺され、食料にされてしまう。なんてことだ。


 北に行くほど魔族はたくさんいる。ここロマリア王国ではラヴェンナよりも北に行くとアスティという大きな街がある。アスティは貿易都市だ。魔族を倒すには強い武器がいるけど、素材に使われる鉱石は魔族領の近くで魔力を多く含んだオリハルコンやミスリルなどの金属がいいらしく、そのために危険な北にも街がある。アスティの西、アルビオン王国の街レスターではオリハルコンが取れる、またアスティの東、ゲルマニア共和国という国の街クリムトではミスリルとヒヒイロカネが採れる。三つの街は街道で結ばれており、三国間で鉱石が流通しているんだ。


 防衛は冒険者ギルドもあるが主力は騎士団だ。各国の騎士団が駐屯していて、定期的に街や街道を防衛して回っている。

 そのおかげでアスティの南にあるこのラヴェンナにいる魔族はまだまだ少なく、力も弱いらしい。これで弱いんだから北のアスティで出る魔族はもっと強いということだ。


 でも俺たちにとってはここのオーク単体の討伐がやっとだ。それでも何とか五体を倒してDランクになることができた。


「おめでとうございます。ハルノさん、コウさん、これでお二人はDランクになりました!」


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