第22話 oh……This is the beginning of zigoku

「お兄ちゃんずるい! 私も勝負したかった! どっちが可愛い子供作れるか対決!」

「そういえばお前が居たな……というか誰から聞いたんだ?」

「零ちゃんだよ! お兄ちゃん! 罰だよ! 勝負に参加させるか、三つ子産まれるまで耐久か!」

「…………つい気になって調べてしまったが。三つ子って歳を取れば取るほど生まれやすくなるって言うが、高くても六パーセントも行かないじゃねえか」

「来世まで楽しめるね! お兄ちゃん!」

「零もそうだが、新まで当たり前のように来世についてくるんじゃねえよ……」

「大丈夫。ちゃんと分かるようお兄ちゃんって飛びついてそのまま子作りするから」

「恐怖でしかねえよ!? 初対面の女にお兄ちゃん呼びされて押し倒されるって」

「……? 来世は女じゃないかもよ?」

「やめて! 妹に掘られるとかどんなシチュエーションだよ! レベル高すぎるわ!」

「もしかしたらお兄ちゃんじゃなくてお姉ちゃんになってるかもね♡ ゴスロリツインテ眼帯厨二病ニーハイ貧乳お姉ちゃん……ごくり」

「多い多い。属性盛りすぎだ。来世の俺に期待し過ぎだよ」

「大丈夫。私おとこの娘もいけるから」

「なんも大丈夫じゃねえ! あと離れろ!」


 普通に会話をしているように思えるが。今現在、俺は新に押し倒されているのだ。


 零達は作戦会議に行ってる。なんとなくたまには一人の時間も欲しいなと思い帰ってきたのだが。


 新が帰ってきたと同時に押し倒してきたのだ。プライベート is 何処?


「よい……しょっと」

「おい。何をしてる?」

「え……? 言わせたいの……? もう、お兄ちゃんのへんたいっ!」

「はは。ド変態に言われちまったよ。というか妹にド変態って言う日が来るとは思わなかったよ」


 ぱちんっと聞こえた気がしたが。いやまさかな。うん。


「という訳であげる。お兄ちゃん」

 顔面が真っ白な世界に覆い尽くされた。あといい匂いする。

「何してんの? お兄ちゃんさすがにびっくりしたよ。まさか顔面にブラジャーを押し付けられるとは思わ……おい。なにやってんだよ」

「ん? 零ちゃんの真似だよ」

「やめろ! 撫でるな! 妹で反応したお兄ちゃんとして後世に語り継がれるから!」

「大丈夫だよ。私、どんな子でも幸せにする自信あるから!」

「意思表明やめろ! 脱がすな!」


 などとやっていたら。


「こら、新! 帰ってきたならすぐ着替える! 制服皺になっちゃうでしょ!」


 唯一の良心こと母が来た。そういえば今日は仕事が早く終わったと帰ってきたんだった。


「う……お母さん! 私とお兄ちゃんって実は血が繋がってないとかそんなオチ無いかな!」

「ある訳ないでしょ。未来も新も立派なお父さんとお母さんの子よ。ちゃっちゃと着替えるかお風呂入るかしなさい」

「うー! はーい。じゃあお風呂入ってくるね。お兄ちゃん」

「おう。そのまままっすぐ自分の部屋に帰るんだぞ」

「善処します。出来たらやります」

「絶対やらない二コンボだな」


 そうして新が風呂場へ向か――


「おい! 待て! 新! 忘れもんだ!」

「えー? お兄ちゃん。使って良いんだよ?」

「使わねえわ! さっさと持ってけ!」


 新のブラジャーを投げる。すると、新がキャッチをした。


「それじゃ、行ってくるねー」


 と。そうして、新が風呂場へと向かった。



「……行ったか」

「…………あの子、本当に未来が大好きね。本当に血が繋がってないって知ったらどうなる事やら」

「本当に恐ろしい事を言わないでくれ。それとなるべくこの事は話さないでくれ、母さん。いつどこから新に知れ渡るか分からん」


 そう。新は俺と血が繋がっていないのだ。





 昔……俺がうっすらと……本当にうっすらとしか覚えていないのだが、小さい頃に新がやって来た。



 なんでも、母さんの友達が…………新を産んだ後、交通事故で亡くなったとか。お父さんは子供が出来たと分かった時点で蒸発し、母側の親族は誰も受け入れようとしない。

 それで、母さんが引き取ったらしいのだが。



「未来には懐くとかそういうレベルじゃ無かったもんねぇ……」

「ここ最近は特にやばいぞ。当たり前のように押し倒してくるわ、風呂に突入してくるわ、寝てる隙に鍵開けてくるわ」


 思えば、俺のマイサンをみられてからより過激になってるな……


 俺の言葉を聞いて、母さんは笑っていた。


「……お母さんとしては二人に幸せになって欲しいけどねぇ。どうだい? 零ちゃんと新と三人で結婚とか」

「母さんまで馬鹿な事を言わないでくれよ……」

「あはは。……割と本気だけど」

「怖い怖い。唯一の良心が居なくなった」

「……? 母さんと父さんはちゃんと未来と新の両親だよ?」

「そこで天然発揮しなくていいから」


 思わずため息を吐いたのだった。


 ◆◆◆


「帰ってきたよ! お兄ちゃん!」

「おう。服を着ろ。部屋に戻れ……てか髪ちゃんと乾かせよ!」

「乾かして! お兄ちゃん!」

「やめろ! ベッドが濡れる! ああもう、分かったからそこ座れ」


 新がまたベッドに上がってこようとしたので適当な所に座らせる。体はバスタオル一枚でしか隠されていない。


 いつものツインテールが解かれ、子供らしい雰囲気は幾分か無くなっている。


「おい。濡れるからもたれかかってくるな」

「濡れる!? カウ「やめろ!」お兄ちゃんも脱いだ方が良いんじゃないかな!」

「なんも良くねえから。濡れるのは服だけだから」

「むぅ……ち「言わんで良い」が濡れたと思ったのに。男の人も出るんでしょ? ガマ「だから言わんで良い」」

 くそ……これ放置してたら絶対に消されるぞ。この世界が。


(そうなるともう誰にも知られないって事だよね……子供作りたい放題じゃん)

 やっぱお寺行こ。今度の休み。



 ……いや待て。確か零って心鎮めるためにお寺行ったけど、無理って二つ返事で帰されたんだったか。


 あれ? もしかして詰み?

(ふふ。ずっと一緒だね♡)

 やべえ。清めの塩貰ってがぶ飲みしよ。塩の致死量とか調べておかなければ


「ほら、乾かすぞ」

 そんな事を考えながらも、髪を痛めないようドライヤーを少し離し、しっとりと濡れた髪に手をやる。


「えへへ……お兄ちゃんに乾かしてもらえる」

「……嬉しいのは別に良いんだが。見えてるぞ」


 新はバスタオルを手で押さえていない。よって、ずれて見えてるのだ。先っちょが。


「見せてるんだよ」

「さっさと隠せ。あと尻を擦りつけようとすな」


 先程からぐりぐりと股間へ押し付けてくる。仕方ないので頭をぐりぐりする。


「あ、痛い! でも痛気持ちいい! 新しいのに目覚めそう!」

「くそ……どうする……どうすれば新に反省という言葉を教えられる? イマジナリー零!」

(無理。不可能)

「やっぱりか……」

「ふふふ。諦めて子供作ろ? お兄ちゃん♡」

「俺は諦めんぞ!」


 と、なんやかんやしながらも髪を乾かし終える。


「よし、終わりだ。さっさと部屋に戻って服を――」


 流れるように俺は押し倒された。


「ねえ? 飽きない? 俺が押し倒される展開。そろそろさ。読者さんも飽きると思うんだ」

「ならそろそろ次の展開に進まないとね、お兄ちゃん♡」

「やめて! 非力なお兄ちゃんじゃ押し返せな……ってつよっ!? 力強くない!?」

「この時のために頑張って鍛えたから」

「ねえ……嘘だよね? 嘘だと言ってよマイシスター」

「ふふ。確か零ちゃんはこんな感じでやってたよね」


 そう言って新が股を擦り付けて来る。……当然、バスタオルはもう巻かれていない。

 重力に従って柔らかな胸の感触や暖かさが直に伝わってくる。その中央には少し硬い感触が――





 いやこれやばい。何がやばいってナニがやばい。さっき母さんと新が俺と血が繋がってないって話をしたのがまずかった。



「やめて! そこで天才肌発揮しないで! お兄ちゃんそろそろ……あっ……」












 それが……俺の限界であった。








「ふふ。お兄ちゃん。これはもう合意の上って事だよね?」



 そう言って新が微笑む。



「うぅ……もうお婿さんに行けない……」

「大丈夫。お兄ちゃんは私のお嫁さんにしてあげるから」

「おかしくない? 性別逆転してるよ?」

「性別なんて些細な事だよ……」

「俺達が兄妹って事に比べれば確かに些細な問題だな」


 そうはしながらも新は俺へと顔を寄せてくる。


「おい待て。まだ間に合う。一緒にこれからどうするか考えよ? 新」

「ふふ。考えるより感じよ? 気持ちいいよ?」

「ダメだこいつ……もう会話が通じねえ」

「今更だよ」

「自分で分かってんのかよ。てか通じてんじゃねえか」

「もう私達に言葉は要らないよ。お兄ちゃん」

「要るよ。めちゃくちゃ要るよ。家の中空気やばい事になるよ? 夕食の時ずっと喋らないとか。母さん達に心配されるよ」


 くそ……時間を稼げ。

 か、か、母さん来い。こっちの妹はやーばいぞ。


「という事で来たよ! みーちゃん!」

「oh……This is the beginning of zigoku」

「みーちゃん。英語力やばいよ……あーちゃんと一緒に教えてあげるね。体で」

「口頭で教えろよ」

「あと地獄じゃなくて天国にイクんだよ。みーちゃんは」

「お前らはもう存在が下ネタだな。自重して生きろ」

「未来君が世の中のフェミニストに聞かれたら粘着されそうな事言ってる……」

「これ偏向報道された瞬間終わりですよね」

「俺も言ってから思ったわ。悪い、言いすぎた」

「ううん。良いんだよ。その代わり私達を孕ませてね」

「大丈夫。法律なんかより大事な事があるよ。お兄ちゃん」

「こいつらの方が炎上しそうな事言ってないか!? というか星! ヘルプ! 正直もう色々とやばいから!」

「らじゃー」



 一分後。


「……これ余計卑猥な事になってない? なんでこの縛り方した? というかなんでロープ持ってたの?」

「この前調べたからついやってみたくて……」



 ベッドの上には全裸で亀甲縛りにされている新の姿が。やばい。何がやばいって。色々と強調されすぎだよ。

 え? これ大丈夫? 大人向けサイトでやるべき事じゃない?


「……ちなみに零。これ解き方は知ってるか?」

「ん? もちろん知ってるよ?」

「…………ツッコミはしないぞ。じゃあ新を部屋に連れて行って服を着せて欲しいんだが。頼めるか?」

「デート一回ね。ラブホデートしてみたかったんだ」

「やらねえよ。せめて普通のデートにしろ」

「はーい。ほら、あーちゃん。行こ」

「うぅ……零ちゃん。もうちょっと……もうちょっとでイケるからぁ……」

「零! 新を出来るだけ早く連れて行ってくれな!」


 顔を赤らめて息を荒くしている新から目を背けながら、俺は零へとそう言った。



 五分後。零が服を着た新を連れて戻ってきた。



「さて。零達も戻ってきた事だし。作戦会議って何しに行ったんだ?」

「……未来君って大物だよね。今さっきまでガチで襲われかけてたのに」

「……? 別に慣れてるぞ」

「えぇ……?」


 正確に言えば、襲われる事に慣れたのではない。襲われかけた後の事に慣れた。


 今更零や新と気まずくなる事も無い。ほら、新だって――


「普通どころかめちゃくちゃ嬉しそうだなおい」

「だ、だって……やっとお兄ちゃんのミニお兄ちゃん……? ギガお兄ちゃんをおっきくする事が出来たから」

「みーちゃんのはミニって付けれないもんね」

「やめて。やっぱ結構心に来てたから。妹で興奮するって変態だよ。世の中の最低民族だよ。俺」

「大丈夫だよ! お兄ちゃん! エロ同人誌の世界だと普通だから!」

「知ってた? ここって現実って言うんだよ?」


 それはさておき。


「それで、なんかやってたのか? 話せないなら良いが」

「ああ……軽く皆でテストしてたみたいな? カラオケ行って彩夏ちゃんに歌って貰って、零ちゃんの家行って私が料理して。その後零ちゃんに未来君の事で質問したりして」



 なるほど。……というか。


「……お前らって妙に仲良いよな。険悪なムードにもなりそうなもんだが」

「零ちゃんに言われ…………あー。やっぱりね。好きな人が一緒だと話せる事も多いみたいな?」


 ……なるほどな。零がどうにかしてるのか。零は普段空気を読まないだけだもんな。読めないではなく。


「それよりみーちゃん。あーちゃんもどうにか試合に組み込めないかな? じゃないと多分襲われるよ? 寝てる時とかに」

「今すぐ確認してみますはい!」


 という事でひ……東野鈴木だっけ……ああ、飛輝だ。飛輝に確認を取ってみる。



 すると、数時間前に既に連絡が来ていた。


『すまない。妹の早希さきも参加したいとゴネていてな。そちらも一人追加して構わないから、三試合目に組み込んでも良いか?』


「ちょうど良かったな、新。向こうも妹が三試合目に参加するらしい。新も三試合目……俺に関するクイズに出るか?」

「出る! 任せて! お兄ちゃんが出すまでの時間とか、浅い眠りから深い眠りに入るまでの時間とかなら分かるから!」

「うん。新。自首しよ? 多分まだ少年法通用するから。早いとこ反省しに行こ? お兄ちゃんも着いていくから」




 ……という事で。新も参加する事になったのだった。

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