第60話 森の外は?
ハンスさんのお話で、庶民の事や近隣諸国の事情、オルデアンちゃんのテータニア皇国の状況が知れました。
何とも不安定な世界のようで、やっぱり全体の科学知識は中世前としているようです。
取り敢えず、その事はもういいですが、それより聞き捨てならないのが【雪ウサギ狩り】です。
「ハンスさん、【雪ウサギ狩り】とは!?」
「え?ええ、年に一回、その年の幸福を祈願する為、皇国の神、スプリング・エフェメラル様に奉納する雪ウサギを狩るのです。皇族の行事なんですが、今では国民全体のお祭りになってまして、ああ、さすがに庶民は雪ウサギを狩れないですから、雪ウサギの人形をお供えし、皆で年の幸福を」
「いや、そんな事を聞いてるのではなくて、なんで雪ウサギを狩るんですか?」
「さ、さあ?数百年前から続く行事ですので?」
ハンスさんは、聞かれてる意味がよく分からないというような顔をして、私の質問に答えます。なんで分かんないかな?!
「…………雪ウサギは私の猫の手、勝手に狩られるのは困るんですが」
「猫の手??!」
「あら?ウサギの手?下僕?奴隷?」
「ど、奴隷、聖獣様を奴隷!?」
あらら、雪ウサギ達が真っ青な顔で引いていきます。その中に何故か、ハンスさんが混じってます。なんで?
『
ヒューリュリ様が首を振って、残念そうに私を見ております。私、何か、間違った事を言ったかしら??
「ハンスさん?」
「ひっ!?あ、あの、勘違いされるといけないのですが、皇族が雪ウサギを狩るのは、殺す訳ではないのです。テータニア皇国では、聖獣を殺す事は、固く禁止されております」
「え、そうなの?なら、狩るなんて言わなきゃいいのに。じゃあ、捕まえてるの?」
「多分、そうです」
「多分?捕まえた雪ウサギは、どうなったの?」
「さ、さあ?奉納後に、森に帰しているのでは?」
その後の雪ウサギの消息は、ハンスさんは知らないのね。
私は、雪ウサギの群れの中にいる28号を呼んで、狩られた雪ウサギ達が神の森に戻っているか、聞いてみる事にしました。
「ワカラナイ。人間二捕マッテ、戻ッタ仲間ノ話シハ聞イタ事ハ無イ」
『
私が28号の話しを聞いていると、ヒューリュリ様がハンスさんを睨みながら、28号との話しに割り込みました。
どういう事?
ハンスさんは、またヒューリュリ様に【睨まれた蛙】状態で大汗をかいておりますが、ここまでのハンスさんとの話しで、私はハンスさんの人となりは理解出来たと思っています。
ハンスさんは根っからの商人です。だから商人であるが故に、信用第一なのです。そして今、私との契約に向け話しを進めており、ここで直ぐにバレるような嘘を、つく理由はあり得ません。
なので、ハンスさんの話しが、とても嘘には思えません。
少なくともオルデアンちゃんの国では、雪ウサギ含め、
そしてウサギ狩りが、年一回の皇族の行事である事を考えれば、いわゆる
ならば庶民であるハンスさんが、真実でない事を見聞きし、信じている、が正解と考えます。
「カ、カーナ様!?」
私が
そりゃ、ヒューリュリ様に睨み付けられたままで、さらに、頼みの綱の私にソッポを向かれたら心細くなりますよね。
「ハンスさん、他国は神の森での雪ウサギ狩りを
「は、はい。禁止しているのは皇国だけで、少なくとも私が商いしている国々は、禁止はしておりません。その、
皇国以外……ようは、皇国が先進国、他国が発展途上国みたいな事でしょうか。どちらにしても、裕福な皇国基準で全てを判断するのは不味いという事ですね。
政府発表も気になるところですし、森に引きこもった状態では世間に疎くなるばかりです。たまには森の外に出て、見識を広げる必要がありますね。
それには、ハンスさんとの関係を上手く利用した方が良いでしょう。
「ハンスさん。その、一度、皇国。そして他国に行ってみたいのですが、上手く手配出来ますか。パスポートは必要?」
「パスポート???」
『
『『『『『『女王様!!??』』』』』』
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