第64話

 「・・・まだ来てないのか」


 待ち合わせのカフェに着いたので中に入ったが、店の中には緩奈の姿は見えなかった。


 「いらっしゃいませ。おひとり様ですか?」


 カフェの店員が駆け寄って来た。


 「この後、もう一人来るんだけど」


 「あっ。もしかして、卓也様でしょうか?お待ちしている方がいます。こちら席へどうぞ」


 俺が気付かなかっただけで、緩奈は先にいたのか。そう思いつつ、店員に案内された席には、全く知らない男の人が座っていた。


 「貴方が、卓也さんでお間違いないですか?」


 「はい。そうですけど」


 「私、緩奈の父、道徳みちのりと言います。今日は娘の事について話がしたくて、お呼びさせて頂きました」

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