第136話 期末テストと明けのデート
週が開け、いよいよ期末テストの時がやってきた。
この二週間、受験勉強と同じかそれ以上の時間をテスト勉強に費やした。
暗記物はほとんど頭の中に入っている。
不安があるとすればやはり数学と英語だ。
逆に言えば、この二教科さえパスすれば、学年十位以内に手が届くと言ってもいい。
綾奈も学年一位を目指して頑張ってきたんだ。俺だってやってやる!
初日は現国と歴史だ。
二つとも暗記なのでいつも以上にスラスラと解ける。
現国の長文問題は苦戦したけど、一哉と健太郎とで自己採点をしたらほとんど合っていたので恐らく大丈夫だろう。
二日目に数学のテストが行われた。
大丈夫。あれだけ勉強して、雛先輩にも教わり、反復問題も死ぬほどやった。その成果もあり、答案も全問埋めることが出来た。手応えも感じている。
四日目に英語のテストだ。
ここも単語は覚えるまで書き続けたし、文法もかなり読み込んだ。いつもラノベを読んでいる時間以上に読み倒して書き倒した。
その結果、苦戦は強いられたが何とか英語も答案用紙を全て埋めることが出来た。
その他の教科もいつも以上の手応えを感じて全教科のテストが終了した。
土曜日には綾奈とデートをした。
ドゥー・ボヌールで翔太さんが作ったケーキを食べ、アーケードに移動して、今回はゲーセンではなくカラオケに行った。
テスト明けの土曜日のお昼過ぎということもあり、カラオケ店の前には多くの自転車が駐輪されていた。
多くの学生たちが、テスト勉強のストレスを発散するべく来店しているのだろう。
「ちょっとお客さん多いね」
「うん。空いている部屋あるかな?」
満室の恐れがあったが、とりあえず店内に入り、空き部屋があるか店員さんに確認したら、奇跡的に一部屋だけ空いていたので、俺たちはその部屋へと入った。
案内された部屋は、五、六人は入れそうな広さの部屋で、二人だと少し広く感じる。
店員さんが出ていったのを確認して、俺は羽織っていたコートを脱いだ。
「あ、コートかけるから貸して」
脱いだコートをソファに置こうとしたら、綾奈がそう言ってきたので、俺は綾奈に自分のコートを手渡した。
俺からコートを受け取ると、綾奈は慣れた手つきでハンガーにコートを通し、綺麗に伸ばした後に壁にかけてくれた。
「ありがとう綾奈」
「どういたしまして。真人君はカラオケに来ると普段から上着をソファに置くの?」
「うん。ハンガーにかけることはほとんどなかったかな」
その言葉通り、俺はカラオケに来ると上着をそのまま椅子に置くのが普通になっていた。
今までカラオケに行くメンバーが、一哉や茜で固定さていて、高校に入ってからだと健太郎とも行くようになったけど、それを気にするような相手ではなかった。
中学時代までの怠惰な生活習慣を改めたといっても、こういう何気ない癖はやはり抜けきれていなかった。
「そうなんだ。じゃあ、これからは私がかけてあげるね」
俺の返答に、綾奈は満面の笑みでそうかえしてきた。
その笑顔を見て、俺の顔が熱くなったのは言うまでもない。
「い、いや……これからはハンガーにかけるようにするよ。そんなことまで綾奈に甘えるわけにはいかないからさ」
おそらく綾奈なら喜んでやってくれるだろうけど、これは俺の気持ちの問題だ。
自分で出来ることは自分でしないと。綾奈に甘えっぱなしではダメ人間街道まっしぐらになってしまう。こういう甘えが習慣づいてしまったら、やっぱりよくない。
綾奈を見ると、どこかしょんぼりした表情をしたかと思ったら、何かを思いついたのか、「あっ」という声を発した。気のせいか、綾奈の頭上に豆電球が見える。
「わかった。じゃあこういう場所に来たらハンガーが近くにある席に私が座るようにするね」
意図はわからないが、綾奈はどうしても俺の上着をハンガーにかけたいらしい。
まぁ、俺としても綾奈のさりげない優しさや気遣いは嬉しいし、上着を手渡すのも、何か仕事帰りの夫を玄関で出迎えてくれて、鞄とコートを嬉しそうに受け取る妻感が出ていて満更ではないのだけど、言わないでおこう。
「ありがとうね。綾奈」
そう言って、俺たちは貴重品を持って、ドリンクバーに飲み物を取りに行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます