第125話 真人に会いたい綾奈の自爆
「はぁ……真人君に会いたいよぉ」
打ち上げ翌週の金曜日のお昼休み、私はいつものようにちぃちゃんとお弁当を食べていた。
お付き合いを始めてから、真人君のことで頭がいっぱいで授業に集中出来ていなかったから、学年一位を目指すため、今週から朝の登校以外は会っていないし、電話やメッセージもしていないから、今の私は真人君成分が切れかけだった。
「会ったらいいじゃん」
ちぃちゃんが学食で買ったパンを食べながら簡単に言ってくる。
「でも、私のわがままで朝の登校以外は会わないようにしたいって言ってしまったから……それなのに私から会いたいって言ってしまったら、真人君に凄く申し訳ないし……」
「そもそも、燃費の悪すぎる綾奈が朝の登校の時間だけで足りるわけないじゃん。なんでそんなこと言ったのさ?」
「あぅ……真人君に「学年で十位以内に入ったら何でも言うこと聞く」って言って、真人君だけに負担をかける訳にもいかないし、それだったら私も学年一位を目指そうと思って……でも最近授業に集中出来てなかったから、勉強に集中したくて、真人君にそう言いました」
週の初め頃は授業も集中出来て、自宅での勉強の進捗も良かったけど、真人君と会うのは、やっぱり朝の登校時間だけでは全然足りなくて、今日なんて繋いでいた手を離したくなくて、危うく電車を乗り過ごすところだった。
そのせいで勉強効率が日を追うごとに悪くなって、集中力を欠くようになっていった。
授業は普通にこなせているのに、自宅での勉強はあまり手につかない。学年一位という目標に黄色信号が点灯していた。
「それで勉強効率が落ちてるんだから世話ないね」
ちぃちゃんの言う通りだから何も言い返せない。
「ちぃちゃんは清水君と会えないのよく我慢出来るね」
ちぃちゃんと清水君は学校も違うし家も離れてるから中々会いにくい。
あれだけ清水君が好きなのにどうしてそんなに我慢出来るんだろう。
「あー、それなんだけど……」
ちぃちゃんは急に歯切れが悪くなった。どうしたんだろう?
「実は今週から放課後は毎日健太郎と一緒に勉強してるんだよ」
「えっ!? そうなの!?」
知らなかった。
ちぃちゃんは私と一緒に地元の駅まで帰ってるのに、まさかその後にまた電車に乗って清水君の所に行ってるのかな?
「うん。綾奈と一緒に帰った後、健太郎があたし達の地元駅まで電車で来てくれて、図書館に行って勉強してるんだよ」
「でも、清水君の家って確か風見高校から徒歩で十分くらいだよね?」
毎日私たちの地元の駅まで来るとなると、少ないけど乗車賃がかかって清水君の負担になるんじゃ……。
「それが、健太郎はいつの間にかあたしたちの地元の駅までの定期券買ってたんだよ」
「そうなの!?」
私はさっきより大きな声で驚いていた。
それってちぃちゃんと会うために買ったって事だよね?毎日利用するわけではないはずなのに。
清水君のちぃちゃんへの優しさと想いが大きいんだと改めて実感する。
「うん。だから勉強が初めて楽しいって思えるんだよ。綾奈もあまり意地張らないで真人に電話しなって。自分から言いにくいのはわかるけど、これ以上溜め込むとストレスでしょ?」
「……うん」
「それに、会わないようにするってだけで別に電話もしないって言ったわけじゃないんだからさ。真人もきっと綾奈と話したいと思ってるはずだよ」
「そう、かな?」
「絶対そうだって。多分今は「未来のお嫁さんに会いたい」って健太郎と山根と茜センパイに言ってるよきっと」
「未来のお嫁さん」と言うワードに赤面してしまう。
「綾奈だって未来の旦那様に会いたいでしょ?」
そんなの決まってるよ。
「うん。真人君に会いたい。会って声聞きたいし、名前もいっぱい呼んで欲しいし、ぎゅってしてもらって頭も撫でてもらいたくて、ちゅうもいっぱいしたい……」
ダメ。我慢していた真人君への想いがとめどなく溢れてくる。
うん。やっぱり今日の夜に真人君に電話しよう。きっと真人君も許してくれるよね?
「……いや、そこまでは聞いてないから」
「へ?」
ちぃちゃんは苦笑いをしていた。あれ?私、何言って……。
「あ、あっ……!」
さっき自分で言ったことを思い出し、顔がどんどん熱くなる。
周りを見ると、近くにいたクラスメイトが生暖かい目で見てきたり、赤面したり、何やら絶望に満ちた表情をしている男子もいる。
「~~~~~~!」
私は声にならない声を出して机に突っ伏した。
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