第102話 今日のデートはどこに行く?
「真人君、今日はどこへ行くの?」
電車に乗り、自宅の最寄り駅に戻ってきた時に、綾奈が言った。
確かに、今日は迎えに行くと言っただけで、その後どこに行くとかは全然言ってない。
二人っきりになりたいとも思ったが、俺の家は母さんがいるだろうし、多分美奈も帰っている頃だろう。
綾奈の家も恐らくお母さんの明奈さんがいて、きっと今頃晩御飯の準備をしているのだろう。
なら家以外で二人っきりになれる場所だと、アーケード内にあるカラオケくらいか。
まぁ、公園とか高台とかの自然溢れる静かな場所もあるにはあるのだが、俺の知っている所はここから少し距離があるので今から行くと帰りは真っ暗になってしまうので今日は却下だ。
そもそもこの後の予定自体ノープランなわけだが。
「実はさ、これからどこへ行くのかは決めてないんだ」
「そうなの?」
「うん。今日、放課後は出来るだけ綾奈と一緒にいたかったから、それだけの思いで誘ったんだよ」
そう。本当にただそれだけなんだ。
「やっぱり嫌だった?」
その俺の問いに対して、綾奈はすぐに首をふるふると横に振った。
「嫌なわけないよ。真人君と一緒ならどこでも、ただあてもなく歩くのだってとても楽しいよ」
綾奈の百点満点の答えに胸がじーんと温かくなる。ずっと大切にしたいと自然に思わせてくれる。
「ありがとう綾奈。そう言ってくれてとても嬉しい」
「だって、本当のことだもん」
俺たちは見つめ合い笑い合った。本当、幸せなやり取りだ。
でもどうするかな。綾奈の言うようにただ散歩して帰るのも楽しいだろうけど、どうせならどこかへ寄り道したい。どこか…………あ。
どこに行こうか考えて、ふと昨日の美奈との会話を思い出した。
そういや美奈の奴、昨日俺が帰ったら俺の部屋で漫画を読んでいて、その読んでいた漫画の続きが読みたいって言ってたっけ。
俺も美奈の読んでいた漫画は好きだし、確か新刊が最近出たから買いに行かないといけないんだった。
「綾奈、もし良かったら本屋に行っていい?」
「本屋さん?」
綾奈は首を傾げながら聞いてきた。何度も見たはずなのにやっぱりその仕草にドキドキする。
「うん。実は昨日、綾奈を送ってる間に美奈が俺の部屋でマンガを読んでて、その新刊が発売されていたから買いに行こうと思ってたんだよ。でも、もし他に行きたいところがあったら言ってほしい」
そのマンガは俺も愛読している作品なので、出来れば早めに手に入れて続きを読みたいのだが、もし綾奈が行きたいところがあるのなら、そっちを優先するつもりだ。綾奈につまらない思いはさせたくないから。
「いいよ。私もほしい漫画があったから。それに……」
「それに?」
「真人君と一緒なら、私はどんな所でも楽しいと思えるから」
「っ!」
さっき似たようなセリフを言われたはずなのに、慈愛に満ちた表情でそんなことを言われ、俺の心臓はドクンと高鳴る。
その言葉が嘘偽りが全くないものだと表情が、声がものがたっている。
それから綾奈は、俺と繋いでいた手を離し、今度は俺の腕に抱きついてきた。
「行こっ、真人君!」
「あぁ、行こう綾奈」
俺たちはお互いに笑い合って、腕を絡め合いながら手を繋ぎ、書店に向けて歩き出した。
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