3 優勝賞金

「この国の王から直々に旅の費用をもらったから、私に賞金は必要ない。全額アリスに渡すよ」

「えっ、全額!?」


 アリスは目を丸くした。


「さすがに受け取れないよ」

「君の村を救うためだ。私にはこんな大金は必要ない」

「で、でも、優勝したんだよ。せっかくこんなお金を……」

「必要ないと言ったろう。だが君の村には必要なはずだ」


 アリスは厳しい表情で革袋を見つめていた。


「やっぱり受け取れない……私、何もしてないし……」

「私は君の心意気に打たれた、と言ったはずだ」


 革袋を返そうとするアリスを、私は制した。


「それでも、どうしても……というなら『貸し』にしておこう」

「貸し……?」

「来年のウィナス武術大会で君が優勝するんだ。そしてその賞金を私に渡してくれ。それでチャラだろう」

「……!」


 驚いたような顔でアリスが私を見る。


「だから、それを持って故郷を救うんだ、いいね?」

「……分かった」


 アリスは革袋をぎゅっと握り締めた。

 それから私に向かって深々と頭を下げる。


「このご恩は一生忘れません。あなたに何かあったとき――必ず私が力になります!」

「そんなにかしこまらなくてもいいさ」

「ううん、絶対返すから。本当にありがとう、ガーラ」


 アリスは涙ぐんでいた。


「あんたに借りを返せるくらいに――私、強くなるから。そのときまで、またね!」


 言って、走り去っていく。


 私は笑顔でその後ろ姿を見送っていた。

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