第90話 ポーションを作って特効薬にしてしまおう


 俺たちは再びサティアの街に戻ってきた。

 大量の採取に成功したスロモソウの葉と共に。


 今はセラの工房に来ている。


 ここはセラがポーション専門店に卸す薬の研究をしている場所だ。ひとまず我々が力を合わせて収穫したばかりのスロモソウの葉で薬を作る。


 何しろ原料となる葉は山のようにあるのだ。

 幸いなことに多少の失敗は問題ない。


 「これから作るポーションは単純なものだから、すぐに作れるはず。しばらく待っていてくれたまえ」



 ◇


 ~40分後~


 「よし、完成だ! これを見てくれ!!」

 差し出されたセラの手には黄緑色をした小瓶があった。


 「これが特効薬か」


 「そうであって欲しい。さっそく試しにいくか」


 ギルドが所有する建物のいくつかは今、臨時の収容所になっている。これらが病院として患者を受け入れている。


 担当の者と相談のうえ、希望する患者を募ることになった。


 我々が案内されたのは患者が5人だけいる小部屋だ。あまり多くの面前で情報を開示するのはひとまずやめておこう、というギルド側の判断だ。


 「あー、ここに病気の『特効薬』がある。ただしこれは試験的なもので、これで本当に治るという保証はできない。それでもいいという人は手を挙げてくれ」


 恐る恐る1人だけ手を挙げた。

 まぁ、そんなところか。

 得体の知れない薬だからためらう気持ちは分からなくもない。

 俺でさえも最初の1人にだけはなりたくないのだから。


 さっそくポーションの小瓶を渡して、飲み干してもらう。


 ……すると、みるみるうちに紫色のイボイボが消えていく。血色も良くなっている。これはつまり、ちゃんと効いているのか!?


 「お、おぉ。調子が良くなったぞ。治った。動ける、動けるぞ!」


 朗報。

 こうしてまずは1人だけだが、とにかく新型ポーションが有効なことが判明した。


 今の様子を見ていた他の患者もポーションをせがむが、あいにく完成したのは先ほどの1本だけだ。小部屋の患者全員に箝口令が敷かれ、彼らに優先的に治癒ポーションを提供することを約束し、その場を離れた。


 いやー、首尾よく特効薬が作れるかどうかは賭けだったが、上手く完成したようでよかった。本当によかった。まずは胸をなでおろす。



 ◇


 空間収納で大量に持ち帰ったスロモソウの葉でセラがひたすら工房にこもってポーションを生成していく。


 こうして数日後、サティアの街で流行っていた『奇病』は完全に消滅した。もちろん理由は明らかで、セラ特製のポーションが抜群に効いたのだ。


 そして気づけば、セラは街を救った【英雄】になっていた。


 かく言う俺はお祭り騒ぎのように注目され過ぎるのが嫌いという事情がある。そこで、ポーションの開発者はセラだけということにして、表向きには何も関わっていない。実際に特効薬を作ったのは俺じゃない訳だから嘘ではない。


 まぁ、これでよい。


 「今回は本当に助かったよ。ギルドから感謝状とポーションの代金も頂けたし、街中の人が感謝してくれる。真の英雄はサイなのに。本当にこれでよかったの?」


 「あぁ、これで問題ない。俺としてはこの街が好きだからやっただけのことだ。分け前も無くていいぞ」


 「さすがにそれは気が進まないな。これを持っていってくれ」

 そう言ってセラが渡してくれたのは、回復用の高級ポーションだった。


 「ありがたい。恩に着る!」


 これにて奇病については一件落着だ。


 だが、俺には気になることがある。










 ♦♦♦♦♦♦

 


 あとがき


 いつも★評価やフォロー(ブクマ)、♡など、大変感謝しております。


 ★評価は本ページの下部もしくは目次ページ(作品Topページ)から入れられます。


 今後ともよろしくお願いいたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る