第31話 妹とお出かけ

夏休み前に行ったバレーボール部へのゲリラ応援はかなりの反響がよくて楽しかった。



それまで苦戦していた青葉高校バレーボール部は、応援団の登場以降は人が変わったように反撃を開始して相手のチームを圧倒して見せた。



「マジで応援した甲斐があるってもんだね」



セイヤも大きな声を出してストレス発散できたのか、気持ち良さそうな顔をしていた。



「もう夏休みだね。今後の予定は?」



「まぁ合間にゲリラライブかな?まだまだ、俺たちの形を作っていくことを大切にしたいと思ってな。

ハヤトもだんだん体力がついてきたけど。夏休みは合宿なんかで体力作りもしたいし」



「わかったよ。合宿の予定とかゲリラライブが出来そうなところを調べとく」



「頼んだ」



セイヤとの打ち合わせを終えて部活も夏休み前、最後を迎えた。

本日は終業式で、明日から夏休みに入る。


夏休みと言っても部活と、その準備。


あとは、ランさんとデートでも出来ればいいけど。



「森さん。今日は帰ります」


「承知しました」



森さんが専属ボディーガードとして一緒に行動することも多くなったので、たくさんの話をして仲も良くなったと思う。


学校を出て二人になれば。



「ヨル君、今日も学校お疲れ様です」


「タエさんもお疲れ様。今日は出かける予定もないから、家に帰ったら解散で大丈夫です」


「んだ。今日はそのつもりで家の整理をしようと思ってるよ」



名前で呼び合い気楽な会話が出来るようになった。



「いつもありがとうございます。明日からは夏休みなので、出かける際には連絡をいれますね」


「お願いします。それじゃあまたね」



タエさんに見送られて家へと入る。


家に帰り着けば、俺をキモイと言って嫌っていたツキが最近優しくなった。



「兄さん。ちょっとお願いがあるんだけど」



最近はキモイと言われることも無くなって、普通に会話が出来るようになった。

可愛い妹と普通に接せられるだけでも嬉しいのに頼み事まで……ちょっとテンション上がるよね。



「おっ!どうしたどうした?お兄ちゃんに言ってみろ」



座るソファーの前にツキが座って、俺の足の間に体を滑り込ませてくる。


ぐっ!妹と言っても美少女にここまで接近されるのはやはり貞操概念逆転世界なのか?姉妹のいない俺にはわからない!!!



「うん。ちょっと夏用の服を買いに行きたいんだけど。一緒に来てくれたない?荷物持ちをしてほしいの」



あざとい!


妹よ。あざと女子のテクニックを駆使するとはグッチョブだ。


上目遣いに成長途中の胸元がシャツのスキマから見える谷間。


角度がヤバメです!



「なんだなんだ?ツキは甘えただな。全然いいぞ。可愛い妹の頼みだからな」



可愛い妹が甘えてくるならOKしか俺には残されていない。



「じゃあ、明日はどうかしら?」



「明日?うんいいよ。夏休みに入って時間は余裕があるからな」



二つ返事で承諾してしまう。



「兄さん。ありがとう。明日はよろしくね」



「おう、任せろ」



お願い事を言うと立ち上がるツキ。

ホットパンツを履いた小さなお尻が遠ざかっていく。



やっぱり貞操概念逆転世界は女子の距離が近い!!!


でも、元の世界で俺が弟で姉がいたらあんなことが出来たかと言われれば無理な気がする。



妹は侮り難し!!!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



俺は某有名チェーン店のカジュアルコーデに身を包んで出かける用意を済ませた。

リビング待っていると、妹が現れる。

それも俺と同じチェーン店のカジュアルコーデなのはちょっと嬉しい。



「うん?それって俺と同じ店」


「そだよ。兄さんが着てていいなって思ったから」


「そっそう?へへへ」



妹に褒められて悪い気はしない。

やっぱり中学の時は思春期で、お兄ちゃんとの距離を測りかねていたんだろうな。

ツキも最近は大人っぽくなってきたし、距離が近づいて嬉しい。



「兄さん、人が多いから手を繋ごうよ」


「おっおう。いいのか?」



こんな歳で手を繋ぐ兄妹がいるのかな?と戸惑っていると、強引にツキが手を掴んで歩き始める。

人の波を避けるようにツキが進んでいくので、すれ違う女性たちを浴びて結構恥ずかしい。



「えっ?」



ふと視線を前に向けると見知った姿が映し出される。

白を基調としたいスポーティーな衣装に身を包んだ。

モデルのように美しいランさん。


会うのは久しぶりなので、前に会った時よりも綺麗になっているように見えた。



「やっ、やぁヨル。久しぶりだね」



ランさんも俺たちに気付いて声をかけてくれた。



「ランさん!どうしてここに?」


「ちょっとね」



ランさんが何か言い難そうにして視線を逸らす。



「ヨルこそ、今日はこんなところでどうしたんだい?」


「俺?俺は今日は妹の荷物持ちで駆り出されたんんです」



ツキと手を繋いでいるのを思い出して話そうとするが、ツキにギュッと手を握られて離せない。

知らない人にあって緊張しているのかな?なら、俺が紹介すればいい。



「そうか、兄妹の仲が良くていいな」



「兄さん。この人は誰?」



「こちらは俺の友人で、相馬蘭さんだよ。ランさん、俺の妹で黒瀬月と言います」



「ツキです。いつも兄さんがお世話になっております」



「相馬蘭です。よろしくね」



ランさんは所作一つ一つが美しくて見惚れてしまう。



「じゃっじゃあ私は」


「ねぇ、兄さん。ランさんってモデルか何かしているの?」



ツキにもランさんの美しさが分かってしまったようだ。



「そうだよ。やっぱり分かる?」


「うん。凄く綺麗だから、ランさんもしよかったら、今日お時間あるなら一緒に服を選んでくれませんか?」



人見知りしていると思ったツキがランさんも一緒に回りたいと言う。



「おっおい。ランさんも予定があってここに来てるんだ。迷惑かけちゃダメだろ」


「いや、今日は休日で一人でどうしようかと思ってたんだ。いいよ。私で良ければ付き合うよ」



ランさんは本当に良い人だ。ツキのワガママに快く引き受けてくれた。



「えっ良いんですか?」



ちょっと嬉しい。

でも、迷惑じゃないかな?



「じゃあお願いします。兄さんに荷物持つを頼んでいたですが、女性の服を選べるセンスがあるのかわからないので」



ツキの物言いにちょっとムッとしてしまう。

ランさんにダサいと思われたくない。



「おいおい、ひどいな。俺だって服ぐらい選べるぞ」


「ほう~服ぐらいね。モデルである私への挑戦かな?」


「そっそういう意味じゃ」



意外にも反論したのはツキじゃなくてランさんで俺はどう答えるか思案する。



「なら、二人で私の服を選んでください。楽しみです」



ツキが助け船を出してくれたので、三人で服を見に行くことになった。



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