第9話 解放
「来い、『村正』」
俺は、村正を異界から呼び起こす。
俺が立っている地面のすぐ下から、一振りのまがまがしいオーラを帯びた妖刀が、
顕現した。
「いくぜ、相棒」
俺は、数年ぶりに村正を抜刀した。
この戦いが始まるといつものように逃げ出せない。
俺は横に刀を構えて右足を固定したまま周囲に斬撃を放った。
周りに集まってきていた機獣を全て屠り、
少し遠くにいた丈夫そうな金属をまとった人型の機獣に命中して大きな金属音を
響かせる。
人機獣の頭の部分がへこんでいる。ぎこちなくこちらを振り向く機獣は、俺たちひとがもっているのと同じ、
神器を持っていた。
「ちっ、どうゆうことだ。呪え『
しかし、その拘束は数秒もたたずに破壊される。この時点であの機獣は、廣告よりも強いことが分かった。
その時、人機獣の神器が発光する。
俺は、能力が発動される前に機獣を壊そうと思い、地面をけったが一足遅く、機獣の影から真っ黒の動物の形をしたものが100体以上現れる。
俺は突撃した時の勢いをそのまま利用して回転し、周りの影を切り、消しさる。
人機獣から離れ、周りを見ると他の機獣の注目も、SSクラスの生徒から俺に集まっていた。少し暴れすぎたようだ。
「まったく。Eクラスの生徒の動きではないわね。少なくともSクラス位の実力はあるんじゃないかしら」
「そりゃどうも」
おれは、彼女からの世辞を適当に受け流す。
ふと、もう一度周りを見ると機獣が不自然な動きをしていた。
機獣たちが少しずつ、人機獣のもとへ、集まりはじめていた。
「なんなのこいつら。なんでこんな変な動きをしているの?」
周りの生徒も怪訝な顔をしている。それもそのはずで、機獣には意思が無く連携することもないというのが常識だからである。
「先手必勝よ!『煉獄』!」
彼女、緋高朱莉がそう叫ぶと、
機獣の足元に大きな魔法陣が浮かび上がり、瞬時に炎が吹き上がった。大火力の火炎が機獣を灰燼に帰し、炎に抗おうとする時間すら機獣には残されていない。
人機獣はその信じがたい異能の威力に足を着き地面に崩れたかと思ったが、
その瞬間、勢いよく上空に飛び上がった。
五十メートルほどの高さまで一瞬で飛び上がり漆黒の翼を広げ空中に逃れる。
影で翼を作り逃げたようだ。
「倒せなかったか。後は頼むわ、他のところにもこんな変異機獣がいたら困るしね」
と彼女は言い、他のところへ救援に向かった。
翼を羽ばたかせ襲い掛かろうとする人機獣は、再度神器を使おうとする。
しかし、俺も2度も同じことをさせるような甘い人間ではない。
「呪え『
すると、影から出かかっていた傀儡たちがどんどん分解されていく、それだけではなく、機獣のまとっている翼が粉々になり、機獣が重力に従い、落下を開始した。
この能力は、相手の俺が知っている能力を封印する能力なので、今回で言えば影を操る能力を封印したのだ。
初めから使う事が出来ないのが難点ではあるが、基本「甲子」
の上位互換の能力ではある。
急に能力が使えなくなり憤怒、または困惑しているだろう機獣の上に
俺は追い打ちをかけるように、人機獣へ死角から、
無数の斬撃を繰り出した。
この太刀筋は昔、父から教わったもので、刀剣を扱う際の基本になることが多い使い勝手の良い刀術だ。
人のタイプの機獣は勘が鋭いらしく死角からの攻撃に気付いた。そして、今放った剣戟を人機獣は、機獣ならありえない動きで避けた。
まじかよ、こいつ、強いだけじゃなくて勘もいいのかよ。
いろいろ、普通の機獣とは違うやつだな。
普通、機獣は視界外からの攻撃に気付かない。
にもかかわらず、機獣が恐れられているのは、基本数が多すぎるためだ。
怒涛の攻撃が終わったのを見計らって、機獣は動きだす。
人機獣は、凄まじい速さでこちらに向かって走ってくる。
人機獣が七メートルまで近付いた瞬間、俺の能力である
衝撃が生まれ、それが高速で機獣へ振り下ろされる。
機獣に向かって振り下ろされた刃が、
10センチほど食い込んだところで機獣が拘束を振りほどき刀をはじいた。
今なお、立ち上がっている人機獣は、
襲い掛かってきたが先ほどまでの動きとは、
比べ物にならないほど遅く、
攻撃の切れはない。
俺は避けながら、何度も反撃した。何度か反撃すると、人機獣が倒れ起き上がろうとする。
しかし、さっきの俺の一撃がきいたのか起き上がるが、
ほとんど動かなくなってししまった。
こちらへ動こうとしてよろけたのを見た俺は、
飛び込んで村正を横薙ぎに振り抜き胴体部分を切断しようとした。
その瞬間、人機獣に、周りの生徒と戦っていた機獣が再び集まりが赤く発光した。
俺の内部でドクンと音がする。直感でこれはやばいと悟る。
「みんな、今すぐ機獣から距離をとれ!」
とは言ったが、
皆あまりのことに固まってしまっている。
「くそっ、間に合えぇぇ!」
俺は、いちばん近くにいた、生徒を思いっきり突き飛ばし自分も退避しようとした
とき、
機獣が一斉に爆発した。
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