第13話 激戦
「せいぜい俺様を楽しませてくれよぉ?」
先に仕掛けたのはオジロワシだった。唸る大鎌を振り上げた姿勢で飛び出し、オオタカの目の前まで一瞬でやってくる。振り下ろされた回転刃を、オオタカは剣で受け止めた。羽が重なり合ってできた剣は、回転する刃に対しても切れることなく、火花を散らす。
“アタシの翼、硬いわね。これも合体したおかげかしら?”
トビが意外そうに呟いた。
その時、オジロワシがオオタカの腹に蹴りを入れる。オオタカが後方に飛ばされ、バランスを崩す。オジロワシがその隙を突き、今度は横薙ぎに大鎌を振り払ってきた。
“オオタカ、大丈夫!? 来るわよ!”
トビの言葉を頭の中で聞きながら、オオタカは体を横に倒した。翼を大きく羽ばたかせて、下から上へ空気を押す。体は下へと落ち、鼻先を回転刃が通り過ぎる。
そのままオオタカは
ガキンッ。
かち合ったのは、剣と大鎌の柄。
オジロワシが顔の前に持ち手を上げて、剣を受け止めた。オオタカが
「ちょっとは使えるようになったみたいだなぁ? どうだ? アビス帝国に忠誠を誓えば、生かしてやってもいいぞ?」
オジロワシが口角を上げながら訊いた。
「断る」
“言ったでしょ! あんたたちみたいなひどいことをする国の言いなりになんか、アタシは絶対にならないって!”
オオタカとトビが同時に即答した。
オジロワシが舌打ちを零し、さらに口角を吊り上げる。オオタカの腹部にめがけてもう一度蹴りをお見舞いしようと右足をあげた。オオタカはそれを察し、剣を引いて距離を取る。
「聞き分けのねぇ鉄クズだ。仕方ねぇ。バラバラにしてやる」
オジロワシが大鎌を構え、次の瞬間、その姿が目の前から消える。オオタカが視線を上へ向けると、まるで雷のような速さで空中を飛び回るオジロワシがいた。
“あの速さ、あの時と同じだわ”
トビはオオタカと初めて出会った時、オジロワシが一瞬見せた高速移動を思い出す。
「俺様の本気を見せてやったこと、ありがたく思いなぁ!」
オジロワシの
“オオタカっ!”
トビが叫び終わる前に、オオタカの上げた剣が回転刃に当たる。反撃をする暇もなく、再びオジロワシは高速で上空へと飛んでいった。目くらましのように飛び回り、今度はオオタカの背後から大鎌をなぎ払う。
“今度は後ろ!?”
トビが焦ったように声を上げた。
オオタカは間一髪、後ろへ振り返って剣で回転刃を受け止める。すぐにオジロワシの姿は消え、別の方向から再び攻撃が迫る。
“この速さ、追いつけないわよ!? どうすればいいの!?”
トビは完全にオジロワシの動きに翻弄されていた。
オオタカはオジロワシの攻撃をギリギリで見切り、剣で受け止めている。けれども速さに追いつけず、反撃ができない。防戦一方になっていた。
「行くぞ」
“行くって、なにする気!?”
突然口を開いたオオタカに対して、トビが疑問の声を上げる。
攻撃を受け流した後、オオタカは翼を羽ばたかせてオジロワシの後を追った。
「はぁっ? 俺様に追いつく気かぁ?」
オジロワシが上空を、まるで稲妻が雲を駆けるかのように縦横無尽に飛び回る。
オオタカがはるか後方に取り残された。
その時、オオタカの口が再び開く。
「
直後、翼の付け根に付けられた筒状のパーツから、緋色のエネルギーが放出される。
「なにっ!?」
オジロワシが面食らったような声を上げた。
“速っ!? 速いわよ!? こんなに速いの、初めてなんですけどっ!?”
頭の中では、トビが泡を食ったような声を上げている。
オオタカはオジロワシの横に並んだまま、剣を振り払った。オジロワシも大鎌を振り払い、剣を受け止める。
「俺様を、舐めるなぁっ!」
オジロワシが声を上げ、高速で飛びながら大鎌を振り回す。オオタカは回転刃を受け止め、受け流し、避けながら、隙を突いて剣で反撃する。
“速い……けど! あんたなんかに、負けたくない!”
空の中、オオタカとオジロワシが目にも留まらない速さで斬り合う。二体の姿は光の線と化す。時に離れ、時にぶつかり合い、火花を散らしながら空を自在に駆け巡る。
「おれはここで負けるわけにはいかない」
トビが戦いに集中している中、ふとオオタカの呟きが聞こえた。
「シズクが、それを望んだ……!」
それを聞いた瞬間、トビの視界に目の前とは違う映像が流れ込んできた。
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