第17話 私が貰っちゃうから

 


「何のって、静香ちゃんの話だよ。静香ちゃんの気持ちの話」


「あ、そうでしたね……」



 オナラと忍術のインパクトで吹き飛びかけていたが、白鳥さんが俺を慕っている理由について誤魔化している最中であった。

 しかし、白鳥さんが忍者だと知られた以上、もう誤魔化す必要もない……か?



「あのね詩緒ちゃん、主様は、私の正体を悟られないよう誤魔化していただけなの」


「……待って、その主様って、何?」


「それは、私が忍者で、主様は私が仕える主君って意味だよ」



 俺はまだ主になると認めたワケじゃないのだが、今ソレをツッコむとややこしくなりそうなので黙っておく。



「……全然意味がわからない」


「私達忍者はね、主君に仕えることこそが使命であり、至上の喜びなの。だから私が主様を慕っているのは、あくまでも忠義の心であって、詩緒ちゃんが思ってるような意味は……ないの」


「そんなの、嘘だよ。だって、順序が違う。好きになったから、そう思うようになったんでしょ?」


「それは……」



 言われてみれば、確かに柴咲さんの言っていることの方がしっくりくる気がする。

 俺を主君と選定したのには、必ず理由があるハズだ。

 そして、その理由として思い当たるのは、やはり白鳥さんのオナラを庇ったときだろう。

 あのときに少なからず好意を抱いたからこそ、俺を主君にしようと思ったのに違いない。



「聞いてたならわかると思うけど、私はニオイに敏感なの。だからバラしちゃうけど、あのときオナラをしたのが静香ちゃんだっていうのにも気づいていた。そして、それをこの人が庇ったことも。……あれからでしょ? 静香ちゃんがこの人のことを気にしだしたのって」


「うん、それは、そうだけど……、でも違うの! 私の気持ちは、本当に恋愛感情じゃなく、ただ好感を持てる人だったから、主君になってもらいたいなって思っただけなの!」



 この場合、俺は喜べばいいのか、悔しがればいいのか……



「……本当に、それでいいの? そんなこと言ってると、他の誰かに取られちゃうかもしれないよ?」


「いいんです。私は主様と、その奥方様に仕えられれば、本望です……」


「……わかった。じゃあ、私が貰っちゃうから」



 ここまで、俺は一切意見を挟めていないのだが、最終的に柴咲さんに貰われることが確定してしまったらしい。

 まあ、俺は一向にかまわないが。



「こんな俺で良ければ、喜んで貰われよう」



 こうして、色々と複雑な感情が渦巻く中、俺に人生初の彼女ができた。

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