第16話 俺にも隠していた能力がある

 


 しばしの沈黙の後、白鳥さんが姿を現す。

 ……ベッドの下から。



「さっき玄関から出ていったと思ったが」


「……忍術です」



 どうやら白鳥さんは、部屋から出ていくと見せかけて、忍術でベッドの下に潜んでいたらしい。

 一体どんな忍術でそれを可能にしたかは不明だが、恐るべし……忍者!



「忍術って、どういうこと? 静香ちゃん」


「隠していてごめんなさい、詩緒ちゃん。実は私、忍者なんです」


「???」



 柴咲さんは、わけがわからないよという顔で困惑している。

 それも当然だろう。いきなり私忍者なんですなどと言われても、理解が追いつけるハズがない。

 ここは俺がフォローしてやる必要があるだろう。



「柴咲さん、白鳥さんの言っていることは本当だ。彼女は、現代を生きるくノ一なんだ」


「くノ一って……、もしかして、二人して私のことからかってます?」


「本当なの、詩緒ちゃん」



 俺と白鳥さんが真剣な表情で説明すると、柴咲さんも一応は信じてくれる気になってくれた。



「静香ちゃんって運動経験ないって言ってた割に凄い身体能力してるから、絶対何かやってるとは思ってたけど、まさか忍者だったなんてね……」


「俺も初めて聞いたときは驚かされた」



 というか、つい最近まで半信半疑だった。



「それで、忍術まで使って、何故部屋に残っていたんだ?」


「それはその、やっぱり気になったというか……」



 左右の人差し指をツンツンとつつき合わせてモジモジする白鳥さん。

 その姿が可愛らしく、俺は軽く魅了されかかったので、これも忍者の技の一つなのかもしれないと思った。



「気になっても、盗み聞きはよくないよ静香ちゃん」



 しかし、そんな魅了の技も同性の柴咲さんには通用しなかったようだ。



「そう、ですね……。ごめんなさい」



 シュンとする白鳥さんもまた可愛い。

 くノ一、恐るべし。



「でも、ということは、聞いちゃったんだね。私の、共感覚のこと……」


「はい。私、詩緒ちゃんは凄く勘が鋭い人だなって思っていたのですが、まさか、そんな能力を持っていただなんて……」



 互いに隠していた能力が、ついに明かされることとなったワケだ。

 いいな、こういうの。羨ましいぞ。俺も混ざりたい。



「実は俺にも隠していた能力がある」


「……なんだか、凄くどうでも良さそうな気配がするんですが、一応聞きますよ」


「俺は、狙ってゲップを出せる」


「ほらやっぱり……」



 そんな呆れた顔をしないでくれ。悲しくなるだろう。



「……えっと、何の話してたんですっけ?」

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