しゅげぇえ。



「では、お腹も結構膨れましたし、もう行きますか? それともまだ食べます?」


 黙々と食べ続けて居たネマは、現在はもう「…………けぷ」って感じになってる。幸せそうだ。お腹をすりすりしていらっしゃる。

 

 僕もマグロ系のネタは制覇して、その他にも気になるネタは食い切った。腹八分目以上は確保してる。ふむ、ホタテのほろほろモニュッと感は好きだったな。

 

 今更だけど、今回食べた養殖物を天然物と比べての評価は、まぁ確かに天然物の勝ちだ。どちらが美味しかったかと記憶を漁れば、僕は養殖物より天然物を支持する。

 

 けど、その勝敗は大差を付けた圧勝かのかと言えば、それはノーである。

 

 養殖物だってめっちゃ美味しかったし、ぶっちゃけるとコストパフォーマンスだけを評価した場合は養殖物の圧勝だ。

 

 何方どちらが美味しかったかと聞かれれば天然物だ。しかしどのくらい差があったかを明確に提示出来る程の差だとは思えない。精々が五割増だったら御の字か。

 

 そんな差しか無い食べ物が、片や二万シギルから三○万シギル。片や一皿一シギルから五シギル。

 

 比べるべくも無い圧倒的なコスパだ。

 

 補給効率でフードメタルを選びがちなシリアスと同じ様に、満足度と料金の比率で評価するなら養殖物で充分だ。充分過ぎた。


「アナタ、どうする?」

 

「いや俺もすぐにバイオマシンに乗りた--……」

 

「もうッ! そうじゃないでしょ!」


 お母様に叩かれて「あいてっ」て成るお父様が、中々憎めない。お茶目で良いキャラだと思う。

 

 結局はお会計する事に成り、向こうのお会計は六人で八○シギル程。コッチは一三○シギルくらいだった。

 

 やっすッ……!? え、他の都市なら『天然物』判定を受ける食材を食べてこの値段で良いの!?


「え、ヤバい。真剣にサーベイルに引っ越したく成って来た」

 

「それ、いい! おいでよぉー!」

 

「そしたらいっぱいあそぼっ!」

 

「楽しそうなんだけどね。でも、自分で言い出してアレだけど、砂漠にはお世話に成った人も居るから。皆も、サーベイルのお友達を置いて他の都市においでーって成ったら、困っちゃうよね?」

 

「…………おともだちと、おわかれしちゃうの?」

 

「それはヤダなぁ……」


 聞き分けの良い子達とそのご両親を連れて、お会計後に僕とネマはサッサと駐機場へ戻る。

 

 シャムを紹介すると子供達とお父様がキラッキラした目で「でかい!」とはしゃぎ、格納庫のガレージを見せると「ひろい!」と騒ぐ。

 

 そしてシリアスがオリジンだと紹介すれば、もう大騒ぎだった。

 

 今更なんだけど、一般人ってバイオマシンに触れる機会が思ったよりも無いそうだ。

 

 動いてる機体の傍は危ないので、何かと規制や制限が入って、此処まで近くでハッキリと、ゆっくりと見れる機会は貴重らしい。マシンロードを歩く機体を遠くから見るのが精々だと言う。

 

 なのに、そんなレア体験で見るのがオリジン。大興奮だ。


「おりじん! すごい!」

 

「しゅげぇぇぇぇええ!? ほんとにいるんだっ!?」

 

「国内に三期目のオリジンが居たのかッ!? これは凄いニュースなんじゃないのかッ!?」

 

『挨拶。良き夜に会えて光栄である。シリアスは小型中級局地作戦工作機、サソリ型バイオマシン・デザートシザーリア戦闘改修式オリジン。機体名シリアス。気軽にシリアスちゃんと呼ぶと良い』

 

「しゃべったぁぁぁぁぁあああッッ!?」

 

「しゅげぇぇええええええッ!?」

 

「オリジンって喋るのかぁッ……!?」

 

「あー、いえ。あれはシリアスの為に別途用意した情報端末を使って、シリアスが外部操作でテキスト入力、からのテキスト読み上げアプリケーションで出力した音声をコックピットの内部マイクで拾って、それを外部スピーカーに出力してるんです。元々会話機能を持ってる訳じゃないですよ」

 

「思ったよりローテクで周りくどかったッ!?」


 この御家族の子供達、見た感じ全員年子としごで、僕にアンダーベルトを教えてくれた五歳の子を末っ子として六歳の次女、僕が手を振って赤くなっちゃった子だね。

 

 その次に七歳の長男。ずっと「しゅげぇぇええええ!」しか言ってない子だ。最後に八歳の長女。「パパとおおちがい!」って言った後に僕の話しでしょんぼりした子だ。

 

 なんで態々紹介したかと言えば、僕のせいで長男君の死滅した語彙力が周囲に感染して、皆しゅげぇーって言い始めたのだ。御家族の語彙力が死なないか心配だ。

 

 ホントにあの子、八割方「しゅげぇぇええええ!」しか言わないからね。感染力が凄い。


「にいちゃん! あれ、のれるの!?」

 

「僕の最愛の相棒を『アレ』呼ばわりは止めてね。でも、うん。乗れるよ。サーベイルに来るまでずっと、シリアスに乗って戦って来たんだし」

 

「しゅげぇぇぇぇぇえええええッッ!」


 僕が苦笑しながら肯定すると、また「しゅげぇぇええええ!」が飛び出す。


『報告。今更だが、ラディアが寝てる間に機体のセルフメンテナンスは完全に終了してる。そして、就寝前に注文していた補給品がラディアとネマの休息中に届いたので、作業用ボットを使って積み込んでおいた』

「あ、そうなんだ。ありがとね」

 

『それと、ラディアが寝て居て暇だったシリアスは、ネットワークで面白い物を見付けたので購入した。現在は設定も終わり、ラディアとネマが食事をしている間に作業用ボットを使って居住区画へと搬入済み』

 

「ほぇ? 何買ったの?」

 

『それは居住区画へ行ってからのお楽しみである』


 心做しかワクワクした感じのシリアスを見てから、まだ大はしゃぎしてる御家族をシャムの居住区画へと案内する。


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