息子が良かった。
書いた注文書をおじさんに渡す。
「大負けして、仲介手数料は勉強しといてやるよ。その代わりガッツリ稼いでガッツリ俺にも稼がせろよな」
「あいあいさー!」
『パーツが届いて作業を始めるのは何時になる?』
「都市内に無いパーツがあったら取り寄せだから、何とも言えんな。その場合は最悪輸送費もかかるが、まぁそこは上手くやってやるよ。メーカーの仕入れに口効いて次いでに乗っけて貰うくらいの伝手はある」
ホントにおじさん最高だよ。スッカラカンでおじさんの
「て言うか、鹵獲機をいっぺんに三機も持ってきた
「つまり、輸送費は気にしなくて良い?」
「そう言うこった。つーか、情報なんざ出るとこには出て行くもんだからな。国に三人目のオリジンが出たって話しも、場所によっちゃもう知れ渡ってるかも知れんぞ? その内、どっかのメーカーがウチの製品を使ってくれーって言いに来るかもな」
お仕事の依頼を正式にしつつ、そんな未来のタラレバを語る。
僕としては、自分で管理仕切れない事が怖いので、スポンサード契約とか遠慮したい。僕の身柄だけで済むなら良いけど、場合によってはシリアスにも迷惑がかかるもんね。
流石にオリジンの権利が有るから無茶な事はされないだろうけど、法的に有効なヤバい契約とか、間違ってしちゃったらマズイもの。
「さて、じゃぁ今日はもう終いにすっか! 遅いしな! 腹減ったー!」
「おじさん、お疲れ様です!」
もう外もすっかり暗くて、ヤバい程寒い。砂漠は昼と夜で過酷さのベクトルが真反対になる。
こんな時間までずっと一人で働いてるおじさんは、スラムの中で間違い無く一番勤勉な人だと思う。
「良いよなぁラディアは、スシ食ってきたんだろ? はぁ、俺は侘しく一人飯でも食うかねぇ」
「いや、おじさんの食べる食材って基本は天然物でしょ? 侘しいとか言ったらスラムの住人が殴り込んでくるよ?」
「そしたら守ってくれよ、ラディア名誉子爵様よう」
「…………まぁ、守りますけどね。…………おっかしいなぁ、おじさんの自業自得なのになぁ」
ケラケラ笑うおじさんと、ハンガーから丸見えの事務エリアに移動する。壁が無くてフルオープンしてるおじさんの拘りエリアだ。
おじさんの財力なら中心部の方で使われてる様なオートクックだって用意出来る筈なのに、おじさんは発熱機能くらいしか付いてない程度の原始的なキッチンで、自分で食材を調理する。レトルトすら使わない。
僕は食事の後だし、おじさんはコレから食事なので、別に僕は此処に残る必要も無いんだけど、何となく話し相手が欲しくておじさんの料理を眺めてた。
何やら卵を絡めながらライスを炒めてるみたいで、確かチャーハンって言う料理だったかな。
「おじさんは、料理が好きなの?」
「んー? いや、料理に限らんな。何かを作って、完成させるのが好きなんだ。整備士もその延長だな」
毎日生きるのが厳しくて、余裕なんて無かった僕は、とても良くしてもらったおじさんの事も、あまり知らない。
だから、余裕が出来て、こうやって対等に仕事のやり取りが出来る立場になって、初めて僕はおじさんの事を聞き始めた。
とっても濃い一日で、僕の人生の集大成みたいな時間だった今日の色々は、おじさんによって締め括られる。
お料理をしてるおじさんを見て、ポツポツと質問しては、ポツポツと気の無い答えが帰って来る。
元はガーランドの出身じゃ無い事。
見た目は三十代弱に見えるけど、安めのアンチエイド措置を受けてて実は五十代半ばな事。
実はバツイチで遠くの都市に元妻と娘が居る事。
結構ショッキングなプライベートを聞いてしまった。なんでこんなに優しくて凄い人と、奥さんは別れちゃったんだろうか。謎だ。
「…………おじさんは、どうして僕に、こんなに良くしてくれるの? 良くしてくれたの?」
最後に、ずっと、ずっと気になってた事も聞いてみた。
今もそうだし、前からそうだった。初めて会った時から気にかけてくれてた。その理由が、僕には分からない。
分からない事は怖いけど、おじさんは怖くないから、今日までは聞かなかった事。
何となく、今日なら聞いて良い気がした。
「気になるか?」
料理を全部作り終わったおじさんは、今日にお皿を全部もって、応接用のローテーブルに持って来る。此処で食事をするのがおじさんの拘りだ。
「気になります」
多分、今までで一番優しい笑顔だったと思う。
一瞬だけ、まるで別人みたいな微笑みで僕を見たおじさんは、すぐに元に戻ってから料理を食べ始めた。
「理由は二つ。一つはな、お前が娘に似てんだ」
なんて事だ。
そこは息子であって欲しかった。なんで娘に似てるんだよ。僕は男だよ。
なんとも言えない理由が出て来て、僕はモニョるしかない。コレが息子さんだったら胸がジーンってしたかも知れないのに。僕もちょっと、おじさんがお父さんだったらなって思った事あったし、なのに娘さん……、なんで娘さん……………。
「ふはッ、まぁそんな顔すんなよ。今のお前はマジで娘そっくりなんだわ。まったく、なんつう格好してんだよお前は」
「シリアスに言ってよぉ〜……。僕の趣味じゃないやい……」
これから、僕が遠くの都市にも行く機会が増えて、もしおじさんの娘さんに出会うなんて事があったら、僕はいったいどんな顔をすれば良いのか。
「理由はそれが一つだ。もう一つは、お前、俺ん所に初めて来た日の事を覚えてるか?」
「…………えっと? 覚えては居ますけど、なんか特別な事って有りましたっけ?」
僕とおじさんの出会いは普通だったと思う。
確か、タクトに鉄クズ集めで稼ぐシノギを教わって、だけど段々と買い取ってくれる店舗が減って来て、そしたらタクトが僕に、おじさんの整備屋を紹介してくれて、その時に普通に挨拶した。それだけだったと思う。
おじさんが名乗ってくれて、僕なんかに名乗ってくれる人が初めてだったし、名前も覚えやすかったので一発で記憶に焼き付いたんだ。それから僕も名乗って、ただそれだけだった。
それだけだったと、思う。なのに、おじさんは真剣な顔で僕を見る。
「なぁラディア、俺の名前を言ってみろ?」
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