冒険者が即死!? S級となった俺は最強の力で奮闘

 気づいたら『S級ランク』になっていた。

 俺、そんなにランキング上昇していたんだ? 理由はよく分からない。


 ローザに聞いてみると、直ぐに答えが返ってきた。


「冒険者ランクは、レベル、ステータス、装備、モンスターの討伐数に影響されるんですよ~」


「へえ? けど、レベルは分からんし、ステータスもよく分からない。となると、装備か。ほとんどSSS級だからな。モンスターは、昨日そこそこ倒したけど」


「はい、恐らくは装備とステータスではりませんか? ステータスは、鍛錬たんれんで一気に上昇したのかもしれません」


「徹夜しただけで? んなアホな」

「確かに、ちょっと変ですね。もしかしたら『無限初回ログインボーナス』の影響かも?」


 どうやら、そこまではローザにも分からないらしい。

 ともかく俺はS級へと昇進した。


 あんまり実感がない中、ミランダが驚く。



「まあ、アビス様は“S級冒険者”になられたのですね、凄いです!」


「そうなのかなあ。いまいちピンと来ない」


「S級は、千人程度しかいないので誇っていいと思いますよ。更に上に『SS級』と『SSS級』がありますが、S級というだけでも沢山のギルドやパーティからスカウトされるんですよ。傭兵ようへいとしても雇われやすいです」



 ほー、そりゃ凄いな。

 強者の証ってところかね。



 そんな話をしながらも、ついに『地下六階』を目指した。



「ここが階段か。さすがに他のパーティが多いな」

「気を付けてください、アビスさん。この先は、もっと強いゴーレムが出現しますから」


「おう。分かったよ、ローザ」



 他の冒険者に続き、俺たちも階段を降りていく。

 底なし沼に沈んでいく気分だ。

 生きた心地がしない。

 なんだか不吉だな。



 階段の先に出ると――




「うああああああああああ!!」「し、死ぬぅぅ!!」「こんな強いなんて聞いてないぞ!!」「うあああああああ!!」「……がはッ」「や、やめてくれえええ」「うああ、十人いたパーティが全滅したぞ!!」「誰か蘇生魔法が使えるヤツ、いねーの!」「おいおい、どうなってんだよ。ゴーレムがありえねー強さだぞ」




 な……なんだ。

 何が起きている。


 目の前は、死屍しし累々るいるい。死体の山だ。こんなむごい光景が広がっているなんて――どんな強さだよ。



「アビス様、あのゴーレムは火属性の『ラヴァゴーレム』です!」



 ミランダの指さす方向には、溶岩におおわれたゴーレムがいた。マグマを噴火させながら、冒険者のほとんどを即死させていた。


 なんだ、あのドロドロオレンジ。バケモノじゃないか。




【ラヴァゴーレム】

【Lv.86】

【火属性】

【詳細】

 HP:18810。

 溶岩のゴーレム。

 火属性スキル『ボルケーノ』は非常に危険。一定確率で即死する場合がある。火属性の付与された鎧装備の装着を推奨する。

 防御力が極端に高い。

 A級以上の武器を推奨。




 これが『ラヴァゴーレム』のスペックか。モンスターのレベルが一気に跳ね上がったな。アイアンゴーレムが可愛く思えるぞ。てか、このダンジョン思ったよりも鬼畜だな。


 そりゃそうか。

 ここは“高難易度ダンジョン”だ。

 簡単にクリアできるほど甘くはない。


 俺は、二人へ指示を出す。



「ローザは後方で支援を頼む」

「分かりました。ヒールで回復とかイントロイトゥスでステータス上昇させますね」


 よし、ローザの役割は決まった。


「ミランダは魔法が使えるんだよな」

「ええ、わたくしは『ジプシー』と『ソーサラー』の“ダブルジョブ”なので両方のスキルを覚えているんです」


「そりゃいいな。確か昨晩、水属性魔法を使っていたよな」

「ええ、スプラッシュですね。威力を上げられるので有効かと」



 いいね、魔法攻撃は頼りになる。

 それは他のパーティを見ても明らかだった。強いパーティは、魔術師とか賢者の力でどんどんラヴァゴーレムを討伐。先へ行ってしまっていた。



 だが、対処できない冒険者は次々に倒れて死亡。ここから、死ぬか生きるかの分かれ目ってところか。



「魔法を頼むよ、ミランダ」

「はい、お任せください」



 俺は先陣を切る。

 まずは、インブジブルアックス。昨日の鍛錬たんれんでどれほど力がついたのか、試し切りだ。


 敵の爆発的なマグマ攻撃を回避しながら、俺は距離を確実につめていく。ラヴァゴーレムは、禍々まがまがしい眼で俺を凝視。


 なるほど、攻撃こそ厄介だけど動きはたいしたことないな。にぶすぎて隙だらけだ。


 がら空きの背後を狙い、俺は斧で接近物理攻撃。スパンと気持ちいほどのクリティカルダメージを与えられた。


 おぉ、上手くいったぞ。



『――グォォォッ』



 敵の体力を上回るダメージを与えられたようで、ラヴァゴーレムは崩壊。バラバラになって経験値とアイテムをドロップ。



【EXP:9990】

【ITEM:溶岩の塊×1】

【ITEM:フレイムダガー×1】



 獲得経験値が多いし、レアアイテムも落とす。倒せればウマウマだな。


 結果リザルトに満足していると、近くで見ていたパーティが驚いていた。



「す、すげぇ!」「おい、あの少年って昨晩の……」「A級冒険者のセインを倒した人じゃん」「やっぱり強いなぁ」「ラヴァゴーレムを一撃で倒してなかったか……」「あの子、噂じゃS級冒険者らしいよ」「マジかよ! そりゃ強いわけだよ」



 ガヤガヤと沸き立っていたけど、ラヴァゴーレムは容赦なかった。冒険者を次々に駆逐し、死体の山を築き上げていた。やっべぇ、油断していると巻き込まれそうだ。


 俺は、付近に出現したラヴァゴーレムを倒していく。



「さすがアビスさん、きたえた甲斐かいがありましたね」

「ああ、己の肉体をきたえ、努力するのも悪くないんだな。知らなかったよ。なんだか、身も心も成長した気分だ」


「ええ、確実に強くなっています。最強への道は直ぐそこかもしれませんね」



 なんだか大袈裟おおげさな気もするけど、気分は最高だった。


 それにしても、幽霊ゴーストが多すぎる。かなりのデスペナルティも受けているはずだし、蘇生してやるかも悩むな。


 俺は、一応倒れている人々にいてみた。



「蘇生して欲しい人~?」



「頼む!!」「俺はまだ攻略を続けたい」「こっちも!」「デスペナなんて怖くねぇ!」「まだまだ頑張りたい!」「わたしもお願い! 上でレベリングする」「助けてくれ!」


 意外と蘇生希望者が多いな。



「ローザ、あとはお前に判断を委ねるが」

「アビスさんがそう言うなら仕方ありませんね。わたしは従うだけです」

「いいのか? 魔力の負担とか」


「わたしの魔力はそれほど万能ではありませんが、魔力の回復する『ブルーポーション』を分けて戴ければ、この人数は余裕ですよ」



【ブルーポーション】

【重量:10】

【詳細】

 魔力MPを回復(30~60)する。



 ブルーポーションの在庫は50個はある。なぁに、ログボでも入手できるし、少しくくらい使っても支障はない。


 ローザにブルーポーションを渡した。



「これでいいか」

「はい、では蘇生してきますね」

「ああ、少しでも同志のいる方が攻略も楽になるし、恩を売っておいて損はないさ」

「その通りです。この先は未知数ですし、他人とはいえ戦力があった方がいいです。特にボス戦はひとりでは、まず攻略不可能ですし」



 ローザの言う通りだ。

 俺ひとりでボスを撃破できるか分からない。ひとり、ふたりでも頼れる人がいるなら、そっちの方がいいだろう。


 ギガントメテオゴーレムに挑んだ最強ギルドは『全滅・・』してしまったのだから。



 ラヴァゴーレムにやられてしまった冒険者は、ローザの『リザレクション』で次々に蘇生していく。だが、デスペナは相当らしく落ち込んでいる者もいた。


 だけど、喜んでいる者が大半だった。


「ありがとう、ローザさん!」「アビスだっけ、君、ボロボロだけど良い人だな!」「S級冒険者って嫌な奴かと思ったけど、見直した!」「聖女様のおかげだぁ」「俺は、アビスさんに惚れたよ。困った時は言ってくれ!」「私にも、いつでも頼ってくださいっ」「アビスくん、ローザ様、ありがとー!」


 次々にお礼が飛んでくる。

 蘇生して良かったな。

 みんなまだ諦めていないようだし、本番はこれからだ。



「お疲れ様です、ローザ様」

「ありがとう、ミランダさん。これで見える範囲の幽霊さんは蘇生しました」



 よし、もうここに用はない。

 どんどん奥へ進み、六階を無事攻略。

 その後も七階、八階、九階と突き進んで行ったのだが……『地下十階』で異変が起きた。なぜ、こんなことに!

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