第179話 午後6時の風
この季節には似つかわしくないような冷たい風が吹いて
凍える指から失われた赤が描く円を見ていた
時刻はちょうど午後6時
帰宅を促す聴き馴染んだ歌が町に流れる
今日このとき誰かは何かを失ったのだろうか
それとも何かを手に入れたのだろうか
考えることさえ遮るようにまた風が吹く
飛ばされて行く黄色い帽子
それはどことなく絶望に似ていた
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