第173話 不完全で不可解



その手の中にあるガラス玉を心の奥底に沈めたことで

罪悪感にも似た何かに苛まれたとしても

別にその事に関して恥じることはないのだと

何一つ割り切れてはいない顔をしながらあなたは言う

感情の振れ幅を表現することに長けた女優なら

あまりの演技の下手さ加減に頭を抱えてしまうだろう

でもその不器用な姿が何よりもいとおしくて

私はこの手であなたのことを壊してしまいたくなる


少し不格好になったロウソクの灯りが揺れる

それだけでなぜか温度を体で感じるかのような

やわらかな夜に広がる深い深い藍色が

閉じた瞼の表面をささやかに撫でていくときに

感じるのは無限に広がる無味乾燥な世界

そこにあるのは粉々に砕け散ったガラス玉の残骸と

奪われた熱を取り戻すかのように緩慢で

かつ真っ直ぐに意志を貫こうと動く瞳の色


それは不完全で不可解なあなたと私の世界

誰にも触れられずに壊れ逝くあなたと私の世界


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