第173話 不完全で不可解
その手の中にあるガラス玉を心の奥底に沈めたことで
罪悪感にも似た何かに苛まれたとしても
別にその事に関して恥じることはないのだと
何一つ割り切れてはいない顔をしながらあなたは言う
感情の振れ幅を表現することに長けた女優なら
あまりの演技の下手さ加減に頭を抱えてしまうだろう
でもその不器用な姿が何よりもいとおしくて
私はこの手であなたのことを壊してしまいたくなる
少し不格好になったロウソクの灯りが揺れる
それだけでなぜか温度を体で感じるかのような
やわらかな夜に広がる深い深い藍色が
閉じた瞼の表面をささやかに撫でていくときに
感じるのは無限に広がる無味乾燥な世界
そこにあるのは粉々に砕け散ったガラス玉の残骸と
奪われた熱を取り戻すかのように緩慢で
かつ真っ直ぐに意志を貫こうと動く瞳の色
それは不完全で不可解なあなたと私の世界
誰にも触れられずに壊れ逝くあなたと私の世界
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます