第171話 魔法


命が大切であると

誰かがこの世に魔法をかけた

いや、それは呪いだったのかもしれないが

どうにもこうにも人は

命を大事にすることに囚われた


何百、何千、何万年と

こうして命は大切に守られてきた

それ以上に大事なものはないという

妙な思想を刷り込まれて

その使い方を誰もが考えることもなく



この魔法になんの意味があるのか



死んでしまってもいいと思っている

この命をきちんと使い切れるのなら

別に粗末にしたいわけではない

それでも命より大事なものがあることを

今のこの体はもう知っている


逃れられない魔法はもう呪いだ

闇雲に守られるだけでは意味がない

私はこの命を使い切りたい

ボロボロに朽ち果てるまで

使って使って使い潰してしまいたい


さあ飛び出そうか

理由も理屈も分からない庇護のもとから

未知なるものは痛い、怖い、苦しい

そしてそれが自由なのだと

魔法使いみたいに笑って

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