第169話 風の強い日


思えば出会いはいつも風の強い日で

キミは薄いマフラー翻しながら笑っていた


吹き付ける風に乱れた髪を手でなおして

それでもまた柔らかい毛はかき乱されて

どうにもならないと苦笑いを浮かべ

ふらつく自転車を慎重に押しながら歩く


差し出したかった右手はああなんて遠い

冷えきった指先を温めるのは淡い記憶だけで

縮められなかったその距離が哀しくて

ただ今のキミのことを見つめるしかなかった 


思えば出会いはいつも風の強い日で

キミは薄いマフラーを翻しながら笑っていた

そして少し離れた隣を歩きながら僕は

この風が止む日のことだけを考えていた



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